雑学1473194 views
中学社会667787 views
いろは3000890 views
高校倫理1437242 views
中学英語810437 views
LaTeX959780 views
りんご202163 views
中学理科1628828 views
高校日本史190211 views
数学講師2872095 views

留数の計算方法と実積分への応用|1 位・n 位の極・本質的特異点・4 つの経路

留数定理は、閉曲線に沿う複素積分を、内部の特異点での留数の総和に置き換えます。

左辺の積分がどれだけ複雑でも、右辺はいくつかの留数を足すだけ。だから留数定理を使いこなす鍵は、ただ一点、特異点での留数をすばやく正確に求められるかにかかっています。ここでは留数の計算法をひととおり整理し、そのまま実積分の計算へつなげます。手を動かす例を数多く置くので、読みながら一緒に計算してみてください。留数を求める作業は、いつも同じ流れをたどります。

被積分関数の特異点をすべて見つける

各特異点が極か本質的特異点かを見分ける

極なら公式、本質的特異点ならローラン展開で留数を出す

経路の内部にある留数を足し、 を掛ける

留数とは:ローラン展開の の係数

留数のいちばん根本の定義は、ローラン展開の係数です。孤立特異点 のまわりで

とローラン展開したとき、 の係数 における留数と呼び、 と書きます。なぜこの一項だけが特別かというと、閉曲線に沿って項別に積分したとき、 のときだけ になり、ほかはすべて になるからです。留数だけが積分に生き残るのです。

この定義は、極でない特異点にもそのまま使えるのが強みです。たとえば で本質的特異点をもち、あとで出てくる極の公式は通用しません。それでも指数関数の展開に を代入すれば、

と展開でき、 の係数は 。ですから とすぐわかります。以下では、特異点が極の場合に、展開を経由せず留数を出す公式を順に見ていきます。

1 位の極(単純極)

で 1 位の極(単純極)をもつとき、留数は次の極限で求まります。

を掛けて極を打ち消し、 を代入するだけです。いちばん簡単な なら、 なので になります。

極が複数ある場合は、一つずつ処理します。 を見ましょう。 では を入れて では を入れて です。二つの留数の和が になるのは、 が無限遠で のように振る舞うことの表れで、のちの無限遠点の話につながります。

分数型の必殺公式

の形で、 かつ のとき、つまり が分母の単純な零点のとき、留数は微分ひとつで書けます。

分母をわざわざ因数分解しなくてよいので、実戦でもっとも出番の多い公式です。 なら、 ですから、 と一発です。

三角関数がからむと威力が際立ちます。 で極をもち、 だから 。どの整数点でも留数は です。同じく では、 になります。分母が高次でも使えて、 の極 )では、 より と、極そのもので簡潔に表せます。

高位の極

極が 位になると、微分が要ります。 位の極をもつとき、留数は次で与えられます。

を掛けて極を消し、 回微分してから代入します。 なら微分は 回で、さきほどの単純極の公式にちょうど戻ります。

例を見ましょう。 で 2 位の極です。 を 1 回微分すると を代入して を掛けて です。分子が定数でないと、微分がちゃんと効いてきます。 は 3 位の極で、 を 2 回微分して を掛けて 。もう一つ、(2 位)では、 を 1 回微分して です。ちなみに のように分子が定数なら、 の 2 階微分が となって とあっさり消えます。微分が結果に効くのは、分子に が残るときです。

本質的特異点はローラン展開で

極の公式が使えるのは、特異点が極のときだけです。本質的特異点では がどんな でも有限になってくれず、頼れるのはローラン展開だけになります。定義そのものに立ち返り、 の係数を読み取ります。

で考えます。 の展開に を入れると、

これに を掛けると となり、 の係数は 。したがって です。特異点が極か本質的特異点かで、使う道具ははっきり分かれます。

が正則になります。 位なら 回微分の公式で、展開せずに留数が出せます。

本質的特異点

どんな でも が発散します。公式は使えず、ローラン展開して の係数を直接読むしかありません。

見分け方は単純で、 を掛けて有限に収まる があれば極、いつまでも収まらなければ本質的特異点です。

無限遠点の留数と総和ゼロ

特異点は有限の場所だけとは限りません。無限遠点 にも留数を定義でき、 と置き換えて次で与えられます。

これがなぜ便利かというと、次の美しい事実があるからです。有限個の特異点しかもたない関数では、無限遠点も含めたすべての留数の総和が になります。

この総和ゼロを使うと、面倒な高位の極を回り道できます。 での留数を、まともに求めれば 5 位の極で 4 階微分が必要です。ところが総和ゼロなら一瞬です。 での留数は単純極で 、無限遠では のように速く減衰するので 。したがって

から と、微分をいっさいせずに求まります。念のため を展開して の係数を見ても で、ぴたりと一致します。

どの経路を選ぶか

ここから実積分へ入ります。実積分を留数で解く決め手は、積分を複素平面の閉曲線へ化けさせる経路を、うまく選ぶことです。積分の形ごとに、たどるべき定石の経路が決まっています。

三角関数型

の形です。 と置くと単位円 上の積分になり、内側の極だけを拾います。

有理関数・フーリエ型

の形です。上半平面に大きな半円を足して閉じ、半円上の積分が で消えることを使います。

実軸上に極があるとき

極を小さな半円でよけた「くぼみ経路」を使い、主値と半円の寄与を分けて評価します。

順に、具体例で計算していきます。

応用①三角関数型の積分

まず三角関数型です。 とおくと、 から まで動くとき は単位円をちょうど一周し、 と書き換わります。

HTML
CSS
JavaScript
<div class="ucirc">
<svg viewBox="0 0 320 300" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="単位円と内側・外側の極">
<rect x="0" y="0" width="320" height="300" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<line x1="42" y1="150" x2="278" y2="150" stroke="#dfe3e8" stroke-width="1"/>
<line x1="160" y1="46" x2="160" y2="254" stroke="#dfe3e8" stroke-width="1"/>
<circle cx="160" cy="150" r="80" fill="#eef4fe" fill-opacity="0.6" stroke="#5b8def" stroke-width="1.8"/>
<polygon points="152,70 161,66 161,74" fill="#5b8def"/>
<circle cx="160" cy="150" r="3" fill="#33373d"/>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="15" text-anchor="middle" stroke="#fafbfc" stroke-width="3" paint-order="stroke">
<text x="126" y="167" fill="#e5484d">×</text>
<text x="188" y="126" fill="#e5484d">×</text>
<text x="272" y="155" fill="#8b9098">×</text>
</g>
<text x="170" y="163" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11" fill="#5b6169" text-anchor="middle">0</text>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11" fill="#5b6169" text-anchor="middle">
<text x="160" y="280">単位円 |z|=1 上の積分に帰着</text>
<text x="160" y="295">内側の極(赤 ×)だけが寄与・外側(灰 ×)は無視</text>
</g>
</svg>
</div>
.ucirc { margin: 0; text-align: center; }
.ucirc svg { width: 100%; max-width: 320px; height: auto; }

でやってみます。置換すると、次のように単位円上の積分になります。

分母の零点は で、単位円の内側にあるのは だけです。単純極なので 公式を使い、 から留数を求めます。

あとは留数定理を当てるだけです。

同じ手順は一般の )にそのまま効いて、結果は になります。たとえば なら と即座に出ます。

応用②有理関数の広義積分

次に、実軸全体にわたる有理関数の積分です。上半平面に半径 の半円を足して閉曲線を作り、 とします。

HTML
CSS
JavaScript
<div class="uhalf">
<svg viewBox="0 0 340 240" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="上半平面の半円経路と上半面の極">
<rect x="0" y="0" width="340" height="240" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<line x1="25" y1="170" x2="315" y2="170" stroke="#dfe3e8" stroke-width="1"/>
<path d="M 55 170 A 115 115 0 0 1 285 170" fill="#eef4fe" fill-opacity="0.6" stroke="#5b8def" stroke-width="1.8"/>
<line x1="55" y1="170" x2="285" y2="170" stroke="#5b8def" stroke-width="1.8"/>
<polygon points="188,170 179,166 179,174" fill="#5b8def"/>
<polygon points="160,55 169,51 169,59" fill="#5b8def"/>
<text x="170" y="114" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="15" fill="#e5484d" text-anchor="middle" stroke="#fafbfc" stroke-width="3" paint-order="stroke">×</text>
<text x="182" y="114" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12" fill="#33373d" text-anchor="start" stroke="#fafbfc" stroke-width="3" paint-order="stroke">i</text>
<circle cx="170" cy="170" r="2.5" fill="#33373d"/>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11" fill="#5b6169" text-anchor="middle">
<text x="55" y="186">−R</text>
<text x="285" y="186">R</text>
<text x="305" y="164">実軸</text>
<text x="170" y="224">上半平面の半円経路・弧の積分は R → ∞ で 0(ジョルダンの補題)</text>
</g>
</svg>
</div>
.uhalf { margin: 0; text-align: center; }
.uhalf svg { width: 100%; max-width: 340px; height: auto; }

分母の次数が分子より 以上大きければ、半円上の積分は に収束し、実軸上の積分だけが残ります。 では、 が上半平面に極 をもち、 なので、次のようになります。

もう少し歯ごたえのある例をいくつか挙げます。 は、上半平面の極 の留数を足して 。分母が高次の も、分子が 次・分母が 次で次数差 を満たし、やはり になります。2 位の極が出る では、 が 2 位の極で、 で評価して留数 、積分は です。

応用③フーリエ型とジョルダンの補題

被積分に がかかると、そのままでは半円上で発散しかねません。うまい手は、 と複素指数へ持ち上げることです。 は上半平面 と減衰するので、半円上の積分がちゃんと消えます(ジョルダンの補題)。

を求めましょう。 を上半平面で積分すると、極 での留数は なので、

この実部をとって を得ます。虚部は で、被積分が奇関数になる 側ときちんと整合します。同じやり方で も、 の虚部から取り出せます。

応用④実軸上に極:くぼみ経路

最後は、極が積分路の実軸そのものに乗っている難しい場合です。代表が で、 が問題になります。 を使い、原点を半径 の小さな半円でよけた経路(くぼみ経路)で積分します。

閉曲線の内部には極がないので、経路全体の積分は 。大きい半円は で消えます。原点をよける小さな半円は、時計回りに半周するぶん、留数のちょうど半分だけ寄与し、 を与えます。残る実軸上の主値積分がこれを打ち消すので、

となります。両辺の虚部をとれば、。有名なディリクレ積分が、留数の半分ぶんの寄与としてきれいに現れます。 で穴があかず連続なので主値と通常の積分は一致し、 も同時に得られます。

理解の確認

における留数はいくつでしょうか。

  • 。分子が なので消える
  • 。2 位の極なので で評価する
  • 。3 位の極として扱う
__RESULT__

は 2 位の極なので、公式は です。 を掛けて 回微分するのがポイントで、分子が定数でないぶん、微分が結果に効いてきます。分子が定数の なら微分が で留数も になり、両者の違いがはっきりします。

留数は積分の万能ドライバー

留数の求め方はたった数種類、実積分の経路も型が決まっているのに、そこから引き出せる積分は驚くほど幅広い。 の微分公式と 、そしてローラン展開さえ押さえれば、あとは経路を選んで内部の留数を足すだけです。ここで扱った四つの型の先には、原点から切り込みを入れて を出すキーホール経路や、 の留数がどこでも になることを使って を導く級数和の技法が広がっています。積分や級数を「特異点での留数」という一点に集約して眺める。留数計算は、複素解析がもつその強力な視点を、そのまま手を動かす道具に変えたものなのです。

留数の計算方法と実積分への応用を、豊富な計算例で解説します。ローラン展開による定義、1 位の極、g(a)/h'(a) 公式、n 位の極、本質的特異点、無限遠点の留数と総和ゼロ、三角関数型・有理関数・フーリエ型・くぼみ経路の実積分。