ワイエルシュトラスの因数分解定理

多項式は零点で因数分解できる。整関数にも同様の因数分解が存在するが、零点が無限個ある場合には無限積の収束を保証する工夫が必要だ。ワイエルシュトラスの因数分解定理は、この問題を解決する。

有限積から無限積へ

多項式 は零点 で因数分解される。整関数で零点が と無限に続く場合、単純に

としたくなるが、一般にはこの無限積は収束しない。

有限積

常に収束し、因数分解は一意的。

無限積

収束条件を満たすように因子を修正する必要がある。

ワイエルシュトラスの基本因子

収束を保証するため、ワイエルシュトラスは基本因子(初等因子)を導入した。

ここで は非負整数で、 である。 で 1 位の零点を持ち、

となる。この速い減衰が無限積の収束を保証する。

因数分解定理

を整関数で とし、零点を重複度込みで 0 < |z_1| \leq |z_2| \leq \cdots)とする。このとき、適当な整数列 と整関数 が存在して

と表される。特に \sum_{n=1}^{\infty} |z_n|^{-(p_n+1)} < \infty を満たすように を選べば、無限積は広義一様収束する。

の場合は )と因数分解し、 に定理を適用すればよい。

具体例: の因数分解

)で 1 位の零点を持つ。因数分解定理を適用すると

を得る。ここでは で十分で、\sum 1/n^2 < \infty から収束が保証される。両辺を で割って の極限を取ると

となり整合的だ。この因数分解から を導出することもできる。

階数と標準因数分解

零点の分布によっては、すべての を同じ値 に取れることがある。そのような最小の の階数(genus)と呼ぶ。

階数 0 の整関数

\sum 1/|z_n| < \infty を満たし、単純な因数分解が可能。

階数 1 の整関数

\sum 1/|z_n|^2 < \infty だが , など。

階数 の整関数

\sum 1/|z_n|^{p+1} < \infty だが

標準因数分解では (一定)と取り、 は高々 次の多項式となる。

アダマールの定理

位数 の整関数(増大度が 程度)については、階数は 以下となる。これをアダマールの定理と呼び、整関数の増大度と零点分布を結びつける。