等角写像の基本と応用

正則関数による写像は、角度を保存するという特別な性質を持っています。これを等角写像といいます。

等角写像とは

2 つの曲線が点 で交わるとき、その交角を考えます。正則関数 で写像すると、像の 2 曲線は点 で交わります。

のとき、この交角は保存されます。つまり、もとの交角と像の交角が等しくなります。これが「等角」の意味です。

逆に の点では、角度が保存されない可能性があります。

なぜ角度が保存されるのか

のとき、 の近くで

と線形近似できます。 を極形式で と書くと、この写像は

  • 倍の拡大
  • だけの回転

の合成です。拡大と回転はどちらも角度を保存するので、等角になります。

基本的な等角写像

写像効果注意点
平行移動全平面で等角
原点中心の回転全平面で等角
原点中心の拡大全平面で等角
角度が 2 倍になる では等角でない

指数関数の等角写像

は帯状領域を特別な形に写します。

という水平な帯は、上半平面 に写されます。

なので、どの点でも等角です。格子状の直線は、同心円と放射状の直線に写されます。

応用:物理学

等角写像は流体力学や電磁気学で重要です。

複雑な形状の領域での問題を、円や半平面など単純な領域の問題に変換できます。等角写像で変換しても、ラプラス方程式の解であることは保たれるからです。

たとえば、翼のまわりの流れを解析するとき、翼の形を円に写す等角写像を使うことがあります。

等角写像の特徴

角度と、無限小での形状を保存する。ただし長さは保存されない。

リーマンの写像定理

任意の単連結領域(穴のない領域)は、等角写像で単位円板に写せる。

リーマンの写像定理

複素解析の深い定理として、リーマンの写像定理があります。

複素平面全体を除く任意の単連結領域は、単位円板 に等角的に写せます。

つまり、どんな複雑な形の穴なし領域でも、適切な等角写像で円板に変換できるということです。ただし、具体的な写像を求めるのは一般には難しい問題です。