多角形の内部へ写す積分公式(シュワルツ・クリストッフェル変換)はどう作るか
上半平面を多角形の内部へ写す等角写像には、閉じた式があります。
は実軸上の点で、それぞれが多角形の頂点に対応します。 はその頂点の内角。
リーマンの写像定理は写像の存在を言うだけで、式を与えませんでした。多角形に限れば、こうして書き下せます[1,4]。
積分の中身は、べき関数を並べただけ。各因子が 1 つの頂点で角を折る働きをします。
各因子が角を作る
因子を 1 つだけにして、 とします。積分すると、べき関数になる。
は、原点での角を 倍にします。上半平面の開き が、開き の扇形へ縮む。
つまり因子 1 つで、実軸の折れ曲がりが 1 か所できる。因子を並べれば、折れ曲がりが の位置に並びます。
内角の合計
有界な 角形の内角は、合計が です。これを指数の言葉に直します。
外角の合計が である、という事実の言い換え。指数の和が になるので、 が大きいところで被積分関数が の程度に落ちます。
だから無限遠までの積分が収束し、多角形が有界に収まる。この和の条件は、閉じた多角形になるための条件です[1]。
頂点を無限遠に置く
実軸上の点は 個ですが、 も境界の点として使えます。 ととると、その因子が定数に吸収されて消える。
因子が 1 つ減るので計算が楽になります。実軸上の点を 3 つまで自由に選べる自由度があるので、そのうち 1 つを に使う流儀がふつうです。
多角形の頂点そのものが無限遠にある場合もあります。半無限の帯や、開いた角の領域がその例。
例:半無限の帯
で という半無限の帯を考えます。頂点は 2 つで、内角はどちらも 。
もう 1 つの頂点は無限遠にあり、内角は です。指数の和の条件は で満たされます。
を有限の 2 頂点に対応させると、被積分関数が次の形になります。
積分すると逆双曲余弦です[7]。 が、上半平面を半無限の帯へ写します。
逆に見れば で、帯を上半平面へ広げる写像。指数関数で帯を半平面へ写す話と同じ系統です[2,3]。
例:長方形と楕円積分
長方形は 4 頂点で、内角がすべて です。指数はどれも 。
対応する実軸上の点を と にとると、被積分関数がそろった形になります[1]。
これは第 1 種の楕円積分です。 を動かすと、長方形の縦横比が変わる。
初等関数では書けません。長方形という単純な形が、すでに楕円積分を必要とします。
例:三角形
内角が 、、 の三角形へ写す場合を書きます。頂点のうち 1 つを無限遠に置く。
不完全ベータ関数や超幾何関数で表せます。正三角形なら 。
直角二等辺三角形なら 、 です。角度をそろえるだけで指数が決まる。
パラメータ問題
公式には、実軸上の点 という自由度が残っています。角度を決めても、辺の長さが決まらない。
3 点までは自由に選べます。メビウス変換で上半平面を自分自身へ写して動かせるため。残りの 個は、辺の長さの条件から決まります。
この連立方程式は非線形で、一般には解析的に解けません。ふつうは数値的に求めます。
点が近づくと辺が短くなる、という単調な関係でもない。混み合った点の配置では、数値的にも不安定になります。
1 点動かすと、すべての辺の長さが同時に変わります。独立に調整できないところが、この問題の厄介なゆえん。
円板からの形
出発点を単位円板にとった形もあります。上半平面版とメビウス変換で結ばれています。
は単位円周上の点で、前頂点と呼ばれます。対称性の高い多角形では、こちらのほうが扱いやすい。
正 角形なら、前頂点を円周上に等間隔に置けます。積が の形にまとまり、式が短くなる。
外側へ写す形
多角形の外部へ写す公式もあります。指数の符号が変わり、無限遠に対応する点で 2 位の極が付く。
翼のまわりの流れのように、障害物の外側を扱う問題で使われます。内部と外部で、同じ枠組みが働く。
数値計算
実際の計算では、専用のアルゴリズムが使われます。積分そのものは特異点の近くで発散気味なので、変数変換で扱いやすくする。
パラメータ問題は、非線形方程式の求解として解きます。点が混み合うと収束が悪くなるので、その対策も必要になる。
多角形の格子生成や、電磁場の解析で実際に使われている手法です。理論の式が、そのまま計算の土台になっています。
使いどころ
段差のある流路の流れ、角のある導体まわりの電場、細い隙間を通る場。どれも多角形の領域です。
まず領域を上半平面へ戻し、そこで簡単な調和関数を書き、写像で持ち帰る[6]。角のある領域を直接扱うより見通しがよくなります[5]。
角のところで場が強くなる、という現象も式から読めます。内角が より大きい張り出した角では、導関数が発散する。
よくある誤り
リーマンの写像定理は、写像があるとだけ言いました。多角形という条件を足すと、積分の形まで書き下せます。存在の定理と具体的な公式の、ちょうど間にある結果です。










