シュワルツ・クリストッフェル変換
シュワルツ・クリストッフェル変換は、上半平面(または単位円板)を多角形領域に等角写像する具体的な公式を与える。流体力学や電磁気学など、物理学への応用で重要な役割を果たす。
基本の着想
リーマンの写像定理は単連結領域から単位円板への等角写像の存在を保証するが、具体的な公式は一般には与えない。しかし、像が多角形のときには積分表示が可能になる。
多角形の頂点で角度が急変することが鍵だ。等角写像のもとで「角が曲がる」ことを、被積分関数の特異性として表現するのがシュワルツ・クリストッフェルの方法である。
公式の形
上半平面 から 角形への等角写像は
の形で与えられる。ここで
実軸上の点で、多角形の頂点に対応する
番目の頂点における多角形の内角
スケーリングと平行移動を決める複素定数
内角の和が なので が成り立つ。
導出の概略
( は多角形)が等角写像のとき、 は 内で零点を持たない。実軸上の点 で は多角形の頂点に写るから、 の偏角がジャンプする。
頂点での内角が ならば、 のジャンプは となる。これを実現するのが因子 で、 が を通過するとき偏角が 変化する。
具体例:長方形
長方形への写像を考えよう。4 頂点で内角はすべて なので 。対称性から頂点は , , , (0 < k < 1)に取れる。
これは楕円積分の形をしており、 を変えると長方形の縦横比が変わる。 で正方形、 で細長い長方形に近づく。
積分は初等関数で表せることが多い
楕円積分や超楕円積分が現れ、一般には初等的でない
無限遠点の扱い
頂点の一つを無限遠点 に対応させる場合、その因子は省略される。たとえば帯状領域(2 つの平行直線に挟まれた領域)は「2 頂点が無限遠」の多角形と見なせ、対応する写像は の形になる。
数値計算
実用上、シュワルツ・クリストッフェル変換を適用するには以下を決める必要がある。
は多角形の形状から一意に定まるが、その決定自体が非線形方程式を解く問題となる。数値計算用のソフトウェア(SC Toolbox など)が開発されている。
応用
流体力学では、翼周りの流れや角のある境界での流れを解析する際に用いられる。静電気学では、平行平板コンデンサの縁効果を計算するのに活躍する。多角形境界という実用的な形状を扱えることが、シュワルツ・クリストッフェル変換の強みだ。