リーマンの写像定理
リーマンの写像定理は、複素解析における最も重要かつ美しい定理の一つだ。単連結な領域が位相的にはすべて同じ(単位円板と同相)であることを、正則写像の存在という形で主張する。
定理の主張
を の単連結な真の領域()とする。このとき、 から単位円板 \mathbb{D} = \{z : |z| < 1\} への全単射正則関数(等角写像)が存在する。
穴のない領域。任意の閉曲線が点に連続変形できる。
全体ではない。 は除外される。
なぜ が除外されるかというと、リウヴィルの定理により から への有界正則関数は定数しかないからだ。
証明の構成
リーマンの写像定理の証明は、以下のステップで構成される。
まず 内の点 を固定し、次の関数族を考える。
この族が空でないことを示す。 なので、 に含まれない点 が存在する。 の分枝を取れば、これは 上で単射正則となり、適当にスケーリングして に写像できる。
次に を達成する関数の存在を示す。 は有界関数の族なのでモンテルの定理より正規族であり、上限を達成する列の収束部分列が取れる。
最後に、この極限関数 が全射であることを示す。もし が像に入らなければ、適当な変換で をより大きくできることが示され、最大性に矛盾する。
一意性
リーマンの写像定理で得られる等角写像は一意ではない。しかし、次の正規化条件を課すと一意になる。
境界上の 3 点の像を指定すると一意に定まる。
かつ という条件で一意に定まる。
後者は証明でも使われる自然な正規化で、「リーマン写像」と言えば通常この正規化を指す。
等角写像の具体例
いくつかの単連結領域に対して、単位円板への等角写像は明示的に求められる。
上半平面 から へはケイリー変換
が等角写像を与える。帯状領域 \{z : 0 < \mathrm{Im}\, z < \pi\} は、まず で上半平面に移し、次にケイリー変換を適用すればよい。
しかし、一般の領域では明示的な公式を求めることは難しく、数値的に計算することが多い。
境界対応
リーマンの写像定理は内部の等角同値を保証するが、境界の対応については別途議論が必要だ。カラテオドリの定理によれば、 の境界がジョルダン曲線(単純閉曲線)ならば、等角写像は閉包上に連続に拡張でき、境界から境界への同相写像を誘導する。
境界が滑らかな場合はさらに強く、境界上でも正則性(微分可能性)が保たれる。一方、境界に角や尖点があると、その近くで写像の振る舞いは特異的になる。