偏角の原理とルーシェの定理

偏角の原理は、関数の零点と極の個数を積分で数える方法です。ルーシェの定理は、この原理を応用して零点の個数を調べます。

偏角の原理

が閉曲線 の内部で、零点と極を除いて正則であるとき

ここで は内部の零点の個数(重複度込み)、 は極の個数(位数込み)です。

なぜこの式が成り立つのか

)のとき

で 1 位の極を持ち、留数は です。

零点では 、極では なので、留数の総和が になります。

偏角の変化量との関係

積分 の変化量です。

なので、閉曲線を一周すると は元に戻り、 の変化量だけが残ります。

右辺は「 に沿って の偏角がどれだけ変化するか」を で割ったものです。これが「偏角の原理」という名前の由来です。

ルーシェの定理

が閉曲線 とその内部で正則で、 上で

が成り立つなら、 の内部に同じ個数の零点を持ちます。

直感的には、 に「近い」ので、零点の個数も同じになるということです。

ルーシェの定理の応用

が単位円板 内に持つ零点の個数を求めます。

とおきます。 上で

これでは条件を満たしません。そこで としてみます。

上で かつ です。 の最小値は のとき 0 ですが、 では で、多くの点で です。

実際、 かつ となる範囲は のほとんどを覆います。より詳しい評価で、ルーシェの定理から の零点の個数がわかります。

偏角の原理

零点と極の個数の差を、対数微分の積分で表す。

ルーシェの定理

零点の個数が等しいことを、関数の大小関係から導く。多項式の零点の分布を調べるのに便利。

代数学の基本定理の別証明

次多項式 を考えます。

十分大きな 上では が成り立ちます(低次の項は より小さいため)。

ルーシェの定理から、 内に同じ個数の零点を持ちます。 の零点は原点だけで、重複度 です。したがって 個の零点を持ちます。