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チェバの定理はなぜ積が 1 になるのか|高校数学 A の図形の性質

三角形の内部に点 P をとり、各頂点と P を結んで対辺まで延ばします。3 辺が切られてできる 6 つの断片から、比を 3 つ拾って掛けると必ず になります。

P をどこへ動かしても のまま。ひとつずつの比は大きく変わるのに、積だけが動きません。

理由は面積の比を 3 回書き並べるだけで見えます。

主張の形

三角形 ABC の内部に点 P をとります。直線 AP、BP、CP が対辺 BC、CA、AB と交わる点を D、E、F とすると、次が成り立ちます[1]

分子と分母の文字を追うと、 と一周しています。始点に戻る並びです。

この巡回の向きさえ守れば、どの頂点から書き始めても同じ式になる。式を覚えるより、一周する順を覚えるほうが早い。

面積で示す

を面積の比に置きかえます。三角形 ABD と三角形 ACD は高さが共通なので、面積の比が底辺の比です。

三角形 PBD と三角形 PCD も同じ理由で に等しい。等しい 2 つの比は、分子どうし分母どうしを引いても値が変わりません。

残る 2 つも同じ手順で書けます。

3 つを掛けると、6 つの三角形が分子と分母に 1 回ずつ現れます。すべて約分されて が残る。

例:3 本の中線

D、E、F を各辺の中点にとります。 なので、積も

条件を満たすので、3 本の中線は 1 点で交わります。この点が重心です[3]

中線が 1 点に集まることは、比の言葉に直せば当たり前の等式になる。図をにらむ必要がありません。

例:3 本の内角の二等分線

角の二等分線は対辺を隣り合う 2 辺の比に切ります。 です。

3 つを掛けると、 がそれぞれ分子と分母に 1 回ずつ現れます。積は

だから 3 本の内角の二等分線は 1 点で交わります。その点が内心です[2]

中線のとき

比がすべて 。掛けるまでもなく になる

二等分線のとき

比は でないが、辺の名前が打ち消し合って になる

逆も成り立つ

積が なら 3 本は 1 点で交わります[2]。証明は背理法に近い形で進みます。

2 本の交点を Q とし、A と Q を結んで BC まで延ばした点を とします。順の定理を使うと についての積が

仮定からも積が なので、 が出ます。同じ比で内分する点は 1 つしかないので

だから AD は Q を通り、3 本が 1 点で交わります。逆を使うと、共点であることを長さの計算だけで示せる。

例:交わらない場合を見分ける

とします。積は です。

にならないので、3 本は 1 点で交わりません。図を描かずに結論が出る。

逆に にとりかえれば積が になり、3 本は 1 点で交わります。

例:辺の比から交点を作る

が与えられたとき、 をいくつにすれば 3 本が集まるか。

積を にすればよいので、 から

にとれば、3 本のチェビアンは 1 点で交わります。

三角形 ABC で です。AD、BE、CF が 1 点で交わるとき、 はいくつですか。

__RESULT__

積が になればよいので 。左の 2 つを掛けると なので です。 は逆数をとり忘れた値になります。

補足

チェバの名は、1678 年にミラノで出た著作に由来します[1]。定理そのものはそれ以前から知られていました。

同じ関係は頂点の数が奇数の多角形にも広がります。内部の点から各頂点へ引いた直線について、似た形の積の等式が成り立つ。

高校では三角形だけを扱いますが、比の巡回という骨組みは変わりません。

参考文献

Ceva theorem. Encyclopedia of Mathematics.
Theorems of Ceva and Menelaus/04:_Elementary_Euclidean_Geometry/4.03:_Theorems_of_Ceva_and_Menelaus). Modern Geometry, D. Bishop, LibreTexts.
Median (of a triangle)). Encyclopedia of Mathematics.
三角形の内部の点から 3 本を引くと、辺が切られてできる 6 つの断片から拾った比の積が $1$ になります。証明は面積で進む。$\frac{BD}{DC}$ は $\frac{\triangle ABP}{\triangle ACP}$ に置きかわり、3 つを掛けると同じ面積が分子と分母に 1 回ずつ出て消えます。中線なら比がすべて $1$、内角の二等分線なら辺の名前が打ち消し合って $1$。逆を使えば、共点であることを長さの計算だけで示せる。積が $1$ にならない配置では、3 本が集まらないと言い切れます。