接弦定理 - 接線と弦のはさむ角がそのまま円周角に重なる
接点 A で円に触れる直線と、A から引いた弦 AB がはさむ角。この角は、弦 AB を反対側から見込む円周角と等しくなります。
接線は円と 1 点しか共有しないのに、円周上の角と同じ値になる。円周角の定理が接線まで届いた形です。
ユークリッドの述べ方から見ていきます。
主張の形
第 3 巻の 32 番目はこう述べます。直線が円に接し、接点から円を横切る弦が引かれるとき、弦が接線と作る角は、反対側の弓形の中の角に等しい[1]。
弓形とは、弦と弧で囲まれた部分のこと。弦 AB は円を 2 つの弓形に分けます。
接線と弦がはさむ角は 2 つあり、それぞれ反対側の弓形の角と等しくなる。鋭角のほうは大きい弓形、鈍角のほうは小さい弓形に対応します。
直径を引いて示す
接点 A を通る直径 AD を引きます。接線と半径は直交するので です。ここで T は接線上の点。
は半円を見込む円周角なので [2]。三角形 ABD の内角の和から が出ます。
求めたい角 は 。だから になります。
は弦 AB を反対側から見込む円周角なので、同じ弓形の中のどの角とも等しい[3]。これで主張が出ました[1]。
円周角が接線に近づく見方
弦 AB を固定し、円周角を見込む点を A に近づけていきます。角度は変わらないまま、視線の 1 本が接線に近づく。
P が A に重なった瞬間、線分 PA は接線になります。角度は変わっていないので、接線と弦のなす角が円周角に等しい。
厳密な証明ではありませんが、なぜ接線が円周角と同じ値をとるのかが直感で分かる見方です。
例:角度を求める
円に接する直線 TA があり、接点 A から弦 AB を引きます。 とします。
弦 AB を反対側から見込む円周角 は 。接線側の弓形にある点 Q から見た角は です。
同じ図で 、つまり反対向きの角は 。こちらは接線側の弓形の角と等しくなります。
2 つの角がどちらの弓形に対応するかを、図で毎回確かめます。
反対側にある大きい弓形の中の角と等しい
接線側にある小さい弓形の中の角と等しい
逆も成り立つ
接線かどうかが分かっていない直線について、弦とはさむ角が反対側の円周角に等しければ、その直線は接線です。
示し方は背理法。もし接線でなければ、その直線は円を 2 点で切ります。切った点をとって順の定理を当てると、角が食い違う。
この逆は、接線であることを角度だけで示したいときに使います。長さを測る必要がありません。
例:三角形と接線
三角形 ABC の外接円に、点 A で接する直線を引きます。この接線と辺 AB がはさむ角は に等しい。
同じ接線と辺 AC がはさむ角は です。接線が 2 つの角を頂点 A に運んでくる形になります。
このとき接線は辺 BC と平行になるとは限りません。平行になるのは のときだけです。
まとめ
接弦定理を単独の公式として覚えると、使う場面を思い出しにくくなります。円周角の定理の延長として置くと定着します。
接弦定理は、円周角の定理を接線まで延ばしたものと見られます。
弦の両端が近づいて重なった極限が接線。角の値は最後まで変わりません。
角が等しくなる相手を図で確かめる手順は、どちらの定理でも同じです。次の問いで確かめます。
円に点 A で接する直線があり、接点から弦 AB を引きます。弦を反対側から見込む円周角が のとき、接線と弦のなす鈍角のほうはいくつですか。
つまずきやすいところ
接線を弦の極限と見る。この一言で、円周角の定理と接弦定理が 1 つにまとまります。











鋭角のほうが 47∘ なので、鈍角のほうは 180∘−47∘=133∘ です。接線は直線なので、2 つの角は補い合います。94∘ は円周角を 2 倍した中心角にあたります。