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2 乗してから平均するか平均してから 2 乗するか、確率変数の変換と期待値

さいころの目を 2 乗してから平均すると 15.167 になります。先に平均をとってから 2 乗すると 12.25。

順番を入れかえただけで、答えが変わりました。1 次式ならこの入れかえができるのに、2 乗ではできません。

変換のかたちごとに、計算の手順を通していきます。

手順は 3 つ

変換後の期待値は、定義どおりに計算できます[3]。

やることは 3 段階です。

もとの値に を当てて、変換後の値を並べる

それぞれに、もとの確率をそのまま割りあてる

値と確率を掛けて全部足す

確率は動かしません。 の確率が なら、 の確率も です。値だけが移ります。

同じ の値が複数出るときは、そこで確率を足しあわせます。

例 1:1 次式

さいころ 1 個で を考えます。 の期待値は 3.5、分散は です。

定義どおりに並べると、 は 1、4、7、10、13、16 を等確率でとります。

公式を使えば で、同じ値です。分散は 。

1 次式なら、並べ直さなくても公式で済みます。

例 2:2 乗

とすると、値は 1、4、9、16、25、36 です。

なので、一致しません。差の 2.9167 は分散そのものです。

という関係が、そのまま数字で出ました[2]。

例 3:逆数

では、値が 1、0.5、0.3333、0.25、0.2、0.1667 になります。

一方 です。こちらも一致しません。

は下に凸なので、 が成り立ちます[1]。実際 0.4083 のほうが大きい。

入れかえてよいのは1 次式のときだけです。 が曲がっていれば、必ずどちらかの向きにずれます。

上に凸なら小さく、下に凸なら大きく出る。ずれの向きは曲がりの向きで決まります。

大きい目のほうが強く引きのばされます。 と の間隔は でしたが、 と では に広がっている。

右側が重くなるので、平均も右へ動きます。これが 15.17 と 12.25 の差の正体です。

例 4:さいころ 2 個の和

の分布を書き出します。値は 2 から 12 まで。

場合の数確率
2 と 12各 1各
3 と 11各 2各
4 と 10各 3各
5 と 9各 4各
6 と 8各 5各
76

期待値は対称性から 7 です。公式でも 。

分散は、偏差の 2 乗に場合の数を掛けて足すと 210 になり、。公式では で一致します。

標準偏差は 2.415 です。1 個のときの 1.708 の 倍になっています。

例 5:コインを 3 回投げる

表の回数を とします。 をそれぞれ確率 でとる。

分散は で出します。 なので、。

表が出たら 2 円もらい、出なければ 1 円払う賭けを考えます。もうけは 。

、。期待値が正なので、この賭けは有利です。

例 6:連続の場合

が から の一様分布のとき、 の期待値を出します。和が積分に変わるだけです[3]。

なので 。差の が の分散です。

一様分布の分散が になることは、この計算から確かめられます。

例 7:期待値が存在しない場合

計算しても値が定まらない例もあります。表が出るまでコインを投げ、 回目で初めて表が出たら 円もらう賭けです。

回目に初めて表が出る確率は なので、賞金と確率を掛けるとどの項も になります。

和が発散するので、期待値は存在しません。参加料をいくらに設定しても、期待値の上では割に合う計算になる。

実際には、10 回続けて裏が出る確率が しかありません。ほとんどの回は小さい賞金で終わり、まれな大当たりが期待値を押し上げています。

期待値は平均であって、起こりやすい値ではない。この 2 つを分けて考える必要があります。

変換後の分布を書き出す場合

値が重なる変換では、確率を足しあわせます。 をさいころに当ててみます。

と ではどちらも 、 と では 、 と では 。

の値もとの目確率
0.253 と 4
2.252 と 5
6.251 と 6

です。これは そのもので、定義に戻っただけの計算になっています。

、 のとき、 はいくつですか。

  • 21
  • 16
  • 9
__RESULT__

を移項すると です。16 は そのもの、9 は差ではなく引き算の向きをまちがえた値になります。

1 次式なら公式で飛ばし、それ以外は値を並べて定義に戻る。この使い分けだけで、変換の計算はだいたい片づきます。

参考文献

Mathematical expectation. Encyclopedia of Mathematics.
Dispersion. Encyclopedia of Mathematics.
Expectation Value. MathWorld.
さいころの目を 2 乗してから平均すると 15.167、平均を 2 乗すると 12.25。差の 2.9167 はちょうど分散です。$Y = 3X - 2$ なら並べ直さず公式で済みますが、$Y = X^2$ や $Y = 1/X$ では値を並べて定義に戻る必要があります。$E[1/X] = 49/120 = 0.4083$ に対して $1/E[X] = 0.2857$。$g$ が曲がっていれば必ずどちらかへずれ、向きは凸性で決まります。2 個の和の分布を書き出して分散 5.8333 を確かめ、コイン 3 回の賭け、$0$ から $1$ の一様分布での積分、賞金 $2^k$ で期待値が発散する賭けまで、7 通りの例で手順を通します。