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電卓がない時代の道具!常用対数表を読んで 2 の 30 乗を出す

常用対数表に載っているのは、 から までの対数だけです。それでも 桁だと分かります。

倍すると 。整数部分の が桁を、小数部分の が先頭の数字を教えます。

表が小さくて済むのは、 倍しても小数部分が変わらないからです[2]

整数部分と小数部分に分ける

小数部分はどれも で同じ。変わるのは整数部分だけです[2]

倍することは、対数では を足すこと。 だからです。

整数部分を指標、小数部分を仮数と呼びます。表が持っているのは仮数だけ。

整数部分は数えれば分かる

以上の数なら、整数部分は「けた数から を引いた数」です[2]

桁なので は整数部が 桁なので 桁で

より小さい数では負になります。小数点のあとに並ぶ の個数より だけ大きい負の数。

なら 個で、整数部分は です。

表の引き方

表は行と列でできています。行が上 2 桁、列が 3 桁目[3]

を引くなら、 の行を見て の列を読む。 です。

4 桁目は平均差の欄で足します。 なら、平均差の の欄が なので

平均差は を単位にした数です。最後の桁に足す、と決まっています。

段階見る場所
上 2 桁21 の行
3 桁目3 の列で 0.3284
4 桁目平均差4 の欄で +0.0008

例:3 桁目までを引く

を求めます。 の行、 の列で です。

同じ仮数を使いまわします。整数部分だけを桁数から決める。

例: を出す

です。

整数部分が なので、 桁になります。桁数は整数部分に を足した数[2]

小数部分の から先頭の数字も出ます。 なので、 あたり。

実際の値は です。 桁で、先頭は 、次が 。読みとった通りになりました。

逆に引く

対数の値から、もとの数を求めることもあります。逆対数の表を使う手順です[3]

なら、小数部分の を表の中から探します。 の行、 の列に見つかる。

上 2 桁が 、3 桁目が 。整数部分が なので 倍して です。

表を引く向きが逆になるだけで、仕組みは同じ。仮数が数字の並びを、指標が小数点の位置を決めます。

仮数が「どんな数字が並ぶか」を、指標が「小数点をどこに打つか」を別々に受け持っている

この分業のおかげで、表は から までの範囲だけで足りる。どんな大きさの数にも同じ表が使えます。

例:あいだの値を補う

表に載っていない値は、両隣から比例で見積もります[1]

を出します。

差は です。 から 割ぶん進んだ位置にあるので、 を足す。

になります。実際の値は で、小数第 位まで合っています。

対数の曲線は、狭い区間ではほとんど直線です。だから比例で足すだけで精度が出る。

例:掛け算を足し算にする

を表だけで計算します。

。足すと です。

整数部分が なので 桁。小数部分の を逆に引くと あたり。

答えは ほどになります。実際は で、上 4 桁が合っています。

掛け算 1 回が、表引き 2 回と足し算 1 回に置きかわりました[5]。桁が増えるほど得になります。

表が使われた時代

1614
ネイピアが対数を発表

掛け算を足し算に変える方法として公表された。天文計算の負担を減らすのが目的だった。

1617
ブリッグスが常用対数表を出す

底を 10 にそろえた表が作られ、桁の扱いが楽になった。手計算で膨大な値が求められた。

1970 年代
電卓に置きかわる

手のひらに載る計算機が広まり、表と計算尺は教室の外から姿を消した。

年以上、科学と航海の計算はこの表の上で回っていました[4]

いまも教科書の巻末に残っているのは、桁数や最高位を求める問題で実際に値が要るためです。

例:割り算を引き算にする

を表で計算します。掛け算が足し算になるなら、割り算は引き算です。

。引くと になります。

整数部分が なので 桁。仮数の を逆に引くと あたり。

答えはおよそ です。 なので、上 3 桁まで合っています。

例:累乗根を出す

を求めます。根号のままでは手が出ませんが、対数に通すと割り算になります。

です。

。整数部分が なので 桁の数です。

仮数の を逆に引くと で、ほぼ に戻ります。

累乗根が割り算 1 回で片づく。表がとくに強かったのは、この種の計算です。

例:続けて計算する

を一気に出します。対数に直すと足し算と引き算だけになる。

です。

整数部分が 桁、仮数の から 。答えは になります。

途中で数を書き戻さずに済むので、計算が長いほど有利です。掛け算と割り算が混ざっていても、符号を変えるだけで続きます。

計算尺は表を物に移したもの

対数目盛を刻んだ物差しを 2 本重ね、滑らせて長さを足す。それが計算尺です[4]

表を引く手間が、目盛りを合わせる動作に置きかわります。精度は 3 桁ほどで、表より粗い。

そのぶん速く、持ち運べました。設計や測量の現場では、表より計算尺が使われることが多かった。

読みとれる桁が少ないので、桁数だけは自分で見積もる必要があります。仮数を機械が、指標を人が受け持つ形です。

よくある誤り

表から引いた値をそのまま答えにする。整数部分を自分で足します。
1 より小さい数の整数部分を正にする。負になります。
平均差を 10 の -3 乗の位に足す。単位は 10 の -4 乗です。
逆に引くとき小数点の位置を仮数から決める。位置は整数部分が決めます。
補間で差を足す向きを間違える。値が大きい側へ足します。

仮数が数字の並び、指標が小数点の位置。この分業を押さえれば、表は迷わず引けます。

のとき、 はいくつですか。

__RESULT__

は小数点のあとに 個なので、整数部分は です。仮数は 倍しても変わらないので のまま。合わせて になります。

桁数を出す形も確かめます。

のとき、 は何桁ですか。

__RESULT__

です。整数部分が なので、桁数は 桁になります。

出典

John D. Cook. *Using a table of logarithms*.
Common Logarithm and Natural Logarithm. Math Only Math.
Logarithm Table. BYJU'S.
Logarithm. Wikipedia.
Julius O. Smith III. *Logarithms*. CCRMA, Stanford University.
表に載っているのは 1.00 から 9.99 までの対数だけです。それでも $2^{30}$ が 10 桁で先頭が 1 だと分かる。$\log_{10} 392$ も $\log_{10} 39.2$ も $\log_{10} 3.92$ も、小数部分は $0.5933$ で同じだからです。数字の並びは仮数が、小数点の位置は指標が受け持つ。行で上 2 桁、列で 3 桁目、平均差で 4 桁目を足す手順、$392 \times 5.67$ を足し算に置きかえる計算、$\sqrt[5]{200}$ を割り算 1 回で出す使い方、そして計算尺へつながる話まで。