y′′=n=2∑∞n(n−1)anxn−2 をそのまま y に足しても、x のべきがそろいません。
n を 2 つずらして書き直します。
y′′=n=0∑∞(n+2)(n+1)an+2xn
これで xn の係数を比べられる形になりました。べき級数解法の計算は、この付け替えができるかどうかでほぼ決まります[1]。
添字をずらす操作
一般の形で書いておきます。n=k∑∞cnxn−j で m=n−j と置く。
n=k∑∞cnxn−j=m=k−j∑∞cm+jxm
添字の下端も同じだけずれます。ここを動かし忘れると、n の小さいところで 1 項ぶんずれる。
ずらしたあとは文字を n に書き戻して構いません。和の記号の中の文字は、外に影響しないためです。
そろえた形の一覧
代入の前に、よく出る項を xn の形にそろえておきます。
| もとの形 | そろえた形 | 下端 | | y | ∑anxn | n=0 |
| y′ | ∑(n+1)an+1xn | n=0 |
| y′′ | ∑(n+2)(n+1)an+2xn | n=0 |
| xy′ | ∑nanxn | n=0 |
| x2y′′ | ∑n(n−1)anxn | n=0 |
| xy | ∑an−1xn | n=1 |
注意したいのは xy′ と x2y′′ です。x のべきと微分の階数が同じなら、添字は動きません。
x を掛けたぶんと微分で下がったぶんが、ちょうど打ち消し合うためです。オイラー型の方程式が扱いやすいのも同じ理由になります。
一方 xy は、x を掛けただけなので添字が 1 つ上がります。下端が n=1 になるので、n=0 の項を別に書き出す必要が出てくる。
下端がそろわない項があるときは、いちばん大きい下端に合わせて残りを外に出すのが定石です。
n=0 の式だけを別に書き、n≥1 で漸化式を立てる。a2=0 のような単独の条件はここから出る。
問 1:y′−2xy=0
代入して、両方の項を xn にそろえます。
n=0∑∞(n+1)an+1xn−2n=1∑∞an−1xn=0
下端が違うので、n=0 を外に出します。第 1 項の n=0 は a1 です。
a1=0,(n+1)an+1=2an−1(n≥1)
a1=0 から a3=a5=⋯=0。奇数番がすべて消えます。
偶数番を追います。n を 2k−1 とすると a2k=2k2a2k−2=ka2k−2 です。
a2=a0,a4=2a0,a6=6a0,a8=24a0
分母が k! になりました。
y=a0k=0∑∞k!x2k=a0ex2
変数分離でも解ける式なので、答え合わせができます。ydy=2xdx から y=Cex2 です。
級数から指数関数が出てくる筋道は、y′=λy を同じ手順で解いたときとまったく同じ[3]。分母に階乗が積み上がる形を見たら、指数関数を疑ってよい。
問 2:y′′+y=0
どちらの項も下端が n=0 でそろいます。外に出す項がありません。
(n+2)(n+1)an+2+an=0⟹an+2=(n+2)(n+1)−an
2 つ飛びなので、a0 と a1 が独立に鎖を作ります。
a0=1、a1=0 から出る鎖は 1, 0, −21, 0, 241 と続き、cosx になる。
a0=0、a1=1 からは sinx が出ます。分母が階乗として積み上がるところを、実際に 4 項ほど書いて確かめておくとよい。
問 3:(1−x2)y′′−xy′+4y=0
x2y′′ が出てくる型です。項ごとにそろえた形を当てはめます。
∑(n+2)(n+1)an+2xn−∑n(n−1)anxn−∑nanxn+4∑anxn=0
x2y′′ と xy′ は添字が動かないので、全部の下端が n=0 でそろいました。
an の係数をまとめます。−n(n−1)−n+4=−n2+4 です。
(n+2)(n+1)an+2=(n2−4)an
右辺を因数分解すると (n−2)(n+2) で、(n+2) が約分できます。
an+2=n+1n−2an
n=2 で分子が 0 になり、a4=0。偶数の鎖がここで止まります。
a0=1 なら a2=−2 で、y1=1−2x2。多項式になりました。
奇数の鎖は止まりません。a1=1 から a3=−21、a5=−81、a7=−161 と続きます。
片方だけが多項式で止まる。チェビシェフ方程式に共通の性質です[2]。
問 4:y′′+xy′+y=0
xy′ の添字が動かないので、そのまま足せます。
(n+2)(n+1)an+2+nan+an=0⟹an+2=(n+2)(n+1)−(n+1)an
(n+1) が約分されて、驚くほど簡単になります。
an+2=n+2−an
a0=1 から a2=−21、a4=81、a6=−481。分母が 2kk! の形です。
y1=k=0∑∞2kk!(−1)kx2k=e−x2/2
a1=1 からは x−3x3+15x5−⋯ が出ます。こちらは初等関数で書けません。
e−x2/2 と、それに誤差関数を掛けたものの組。1 本だけが初等関数になる形はよく現れます。
問 5:初期条件を先に使う
y′′−xy′−y=0,y(0)=1, y′(0)=0
y(0)=a0、y′(0)=a1 です。級数の定義から、代入する前に a0=1、a1=0 と決まります。
漸化式を作ります。符号が問 4 と逆になるだけ。
an+2=n+2an
a1=0 なので奇数側は全部 0。偶数側は a2=21、a4=81、a6=481 です。
y=k=0∑∞2kk!x2k=ex2/2
初期条件を最初に入れておくと、鎖が 1 本で済みます。あとから c1 と c2 を決める手間が要りません。
問 6:中心をずらす
x=1 のまわりで y′′−xy=0 を展開します。t=x−1 と置き換えるのが確実です。
x=t+1 なので、方程式は dt2d2y−(t+1)y=0 になります。
∑(n+2)(n+1)an+2tn−∑antn+1−∑antn=0
第 2 項だけ下端がずれます。n=0 を外に出します。
2a2−a0=0,(n+2)(n+1)an+2=an−1+an(n≥1)
a2=2a0 から始まり、a3=6a0+a1 と続く。3 項の関係になるので、鎖が 2 本に分かれません。
中心をずらすと、x をそのまま残すより式が短くなります。xn を二項展開する必要がないためです。
問 7:決定方程式だけを求める
確定特異点をもつ式では、まず指数を決めます。x2y′′+xp(x)y′+q(x)y=0 の形に直し、p0 と q0 を読む[4]。
決定方程式は r(r−1)+p0r+q0=0 です。3 つ続けて計算します。
x2y′′+xy′+(x2−4)y=0
p0=1、q0=−4 なので r2−4=0。根は ±2 で、差が 4 の整数です。
2x2y′′−xy′+(1+x)y=0
2 で割ると p0=−21、q0=21。2r2−3r+1=0 から r=1, 21 で、差は 21。
x2y′′+3xy′+(1+x)y=0
p0=3、q0=1 なので r2+2r+1=(r+1)2。r=−1 の重根です。
3 つで、整数差、非整数差、重根がひととおりそろいました。q(x) の定数項だけを読むところが要点で、x の 1 次以上は決定方程式に効きません。
検算のしかた
漸化式ができたら、n に小さい値を入れて具体的な数を並べます。a2、a3、a4 の 3 つで、たいていの符号ミスは見つかります。
次に、そこまでの多項式をもとの方程式に代入します。x0、x1、x2 の係数がそれぞれ 0 になるかを見る。
級数が既知の関数になった場合は、その関数を直接代入するのがいちばん速い。問 4 なら e−x2/2 を入れて確かめます。
下端の扱いを間違えていないかは、n=0 の式を単独で書き出すと分かります。ここから a1=0 や a2=0 のような条件が出るかどうかが分かれ目です。
y′′+x2y=0 の漸化式はどれになりますか。
- an+2=(n+2)(n+1)−an
- an+2=(n+2)(n+1)−an−2
- an+2=(n+2)(n+1)−an−1
__RESULT__
x2y は ∑anxn+2 なので、xn にそろえると ∑an−2xn になり、下端は n=2 です。x を 2 つ掛けたぶん、添字が 2 つ下がります。x2y′′ なら添字は動きませんが、x2y は微分を伴わないので動く、という違いです。n=0 と n=1 の式は別に書き出し、a2=a3=0 を得ます。
そろえた形を 6 つ覚え、下端の違う項を外に出す。べき級数解法の計算で手を動かす部分は、この 2 つに尽きます。
参考
William F. Trench. *Series Solutions Near an Ordinary Point*/07%3A_Series_Solutions_of_Linear_Second_Order_Equations/7.03%3A_Series_Solutions_Near_an_Ordinary_Point_I). Elementary Differential Equations with Boundary Value Problems. *Series Solutions and Orthogonal Polynomials*. Advanced Mathematics, University of Manchester. *Potenzreihenansatz*. Mathematik-Nachschlagewerk. Bessel Functions of the First and Second Kinds. NIST Digital Library of Mathematical Functions.
$y''$ をそのまま $y$ に足しても $x$ のべきがそろいません。$n$ を 2 つずらして $\sum(n+2)(n+1)a_{n+2}x^n$ にすれば比べられる。下端も同じだけ動かすのが要点です。$xy'$ と $x^2y''$ は添字が動かず、$xy$ は 1 つ上がる。この違いを 6 つの形にまとめてから、7 問を解きます。$y'-2xy=0$ で階乗が積み上がって $e^{x^2}$ が出る例、$(1-x^2)y''-xy'+4y=0$ で偶数側だけが $1-2x^2$ で止まる例、初期条件を代入前に使って鎖を 1 本にする例、中心を $x=1$ にずらす例、決定方程式を 3 つ続けて求める例まで。
x2y は ∑anxn+2 なので、xn にそろえると ∑an−2xn になり、下端は n=2 です。x を 2 つ掛けたぶん、添字が 2 つ下がります。x2y′′ なら添字は動きませんが、x2y は微分を伴わないので動く、という違いです。n=0 と n=1 の式は別に書き出し、a2=a3=0 を得ます。