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固有値を出せば軌道の形まで決まる|連立微分方程式の計算演習

行列式を展開しなくても、 次の特性方程式はすぐ書ける。トレースと行列式を読むだけでよい。

判別式 の符号が、そのまま解の姿を決める。正なら実根 2 つ、 なら重根、負なら複素根である。

固有値を出す前に符号だけ見ておくと、そのあとの計算で何が起きるかが読める。

手順

トレースと行列式を読む

特性方程式を書いて固有値を出す

固有ベクトルを求める

型を判定して軌道を描く

次以上では を展開することになるが、 次のうちは上の近道が使える。

問 1:異なる 2 実根

、 である。特性方程式は 。

判別式は で正。実根が 2 つ出る。 と である。

の固有ベクトルを求める。 を作る。

上の行から 。下の行は上の 倍なので、新しい情報を持たない。 である。

2 行が比例していなければ、固有値の計算が間違っている。ここは毎回の検算になる[1]。

では の上の行が なので 。

かつ 、判別式も正。原点は不安定な結節点である。

問 2:初期条件から定数を決める

同じ で とする。 を入れると指数関数が になる。

、 である。下から 、代入して 、。

が大きくなると の項が支配する。軌道は の向きへ寄っていく。

固有値の大きいほうの固有ベクトルが、遠方での向きを決める。この見方は、係数を計算しなくても使える。

問 3:純虚数の固有値

、 である。特性方程式は で、。

かつ なので中心である。閉じた軌道になる[2]。

の固有ベクトルを求める。 の上の行は 。

、 ととれる。複素数の解を作って展開する。

第 2 成分を計算する。 である。

実部と虚部を分ける。どちらも単独で実数の解になる[3]。

の側を使っても同じ 2 本が出る。共役なので、実部と虚部が符号を除いて一致するためである。

問 4:減衰する渦

、。判別式は で負なので複素根である。

実部が負なので安定な渦状点。 の固有ベクトルを求める。

の下の行は 。 である。

第 1 成分は なので、実部が 、虚部が になる。

が振幅を、 が回転の速さを決める。1 周する時間は である。

問 5:重根で固有ベクトルが 1 本

、。判別式は で、 の重根である。

を作る。

零行列ではない。したがって固有ベクトルは 1 本しかない。 から である。

2 本目は を解く。右辺が でないところが違う[4]。

を満たせばよいので、 ととれる。

の選び方には自由がある。 でも でもよい。差は の定数倍で、第 1 項に吸収される。

問 6:重根で固有ベクトルが 2 本

の重根である。ところが は零行列。どのベクトルも固有ベクトルになる。

一般化固有ベクトルは要らない。解はきわめて単純である。

どの向きに出発しても、その向きの直線上を進む。星のように放射する形で、退化結節点とは別ものである。

重根を見たら、まず が零行列かどうかを見る。ここを飛ばして一般化固有ベクトルを探しにいくと、 が解けずに詰まる。

が零行列でない

固有ベクトルは 1 本。一般化固有ベクトルを 1 つ足し、 の項が現れる

が零行列

固有ベクトルが平面全体。 の項は現れず、放射状の軌道になる

問 7:固有値に が混じる

、。行列式が なので、固有値の 1 つが である。。

の固有ベクトルは の解。 から である。

では から 。

第 1 項に が入らない。時間が経っても動かない点が、原点だけでなく直線全体になる[4]。

は分類表のどの行にも当てはまらない。トレースと行列式の平面では、横軸の上にあたる特別な位置である。

型だけを言い当てる

固有ベクトルまで求めなくても、 と だけで型は決まる。4 つ続けて判定する。

判別式型
安定な結節点
鞍点
安定な渦状点
中心

行列式が負なら、判別式を計算するまでもなく鞍点である。 が必ず正になるためで、これは覚えておくと速い[2]。

検算のしかた

固有値を出したら、和がトレース、積が行列式になるかを見る。問 1 なら 、 で合う。

固有ベクトルは を実際に計算し、 と成分ごとに比べる。 の 2 行が比例していれば、そこまでは正しい。

複素固有値のときは、実部と虚部に分けた 2 本のうち片方を代入する。両方を確かめる必要はない。

重根では、 が に一致するかを見る。 になってしまったら、 が固有ベクトルそのものを選んでいる。

、 の系で、原点はどの型になりますか。

  • 不安定な結節点
  • 不安定な渦状点
  • 鞍点
__RESULT__

なので鞍点ではありません。判別式は で負なので、固有値は複素数になります。 から実部が正で、まわりながら遠ざかる渦状点です。実部は 、虚部は なので、固有値は と書けます。

トレースと行列式を読み、判別式の符号で場合を選ぶ。ここまでが済めば、あとは 3 通りのどれかを機械的に当てはめるだけである。

参考文献

*Repeated and Zero Eigenvalues*. Ordinary Differential Equations, Union College.
*Classification des systèmes linéaires homogènes en dimension deux*. Unisciel, Université en ligne.
Jiří Lebl. *Eigenvalue Method*. Notes on Diffy Qs.
*Phase Portraits of Sinks*. Linear Algebra and Differential Equations, The Ohio State University.
2 次なら行列式を展開しなくても、特性方程式は $\lambda^2 - \tau\lambda + \Delta = 0$ と書けます。判別式 $\tau^2 - 4\Delta$ の符号が解の姿を先に教えてくれる。7 問を通して、異なる 2 実根、初期条件から $c_1$ と $c_2$ を決める手順、純虚数の固有値で閉じた軌道が出る場合、複素固有値を実部と虚部に分ける計算、重根で $(A-\lambda I)\mathbf{v}_2 = \mathbf{v}_1$ を解く場合、$A - \lambda I$ が零行列で一般化固有ベクトルが要らない場合、固有値に $0$ が混じって平衡点が直線になる場合を扱います。$\tau$ と $\Delta$ だけで型を言い当てる練習も付けました。