X ′′ + λ X = 0 は、λ がどんな値でも解ける。ところが X ( 0 ) = X ( π ) = 0 を付けた瞬間、λ は 1 , 4 , 9 , … しか許されなくなる。
方程式ではなく境界条件が、値を飛び飛びに選んでいる。選ばれた値が固有値、対応する解が固有関数である[1 ] 。
どの境界条件を付けるかで、選ばれる値も関数も変わる。同じ方程式を 5 通りの条件で解いてみる。
場合分けの型
λ の符号ごとに、一般解の姿が違う。まずこれを並べておく。
λ 一般解 確かめること λ < 0 (λ = − μ 2 )A cosh μx + B sinh μx 自明解しか残らないか λ = 0 A + B x 定数の解が生き残るか λ > 0 (λ = μ 2 )A cos μx + B sin μx μ にどんな条件が付くか
3 つとも確かめる必要がある。λ > 0 だけを調べて答えにするのは、よくある減点箇所である[2 ] 。
問 1:両端で値が 0
X ′′ + λ X = 0 , X ( 0 ) = X ( L ) = 0
λ < 0 から見る。X ( 0 ) = A = 0 なので X = B sinh μx である。
X ( L ) = B sinh μL = 0 で、μ > 0 なら sinh μL = 0 。したがって B = 0 で自明解しか残らない。
λ = 0 なら X = A + B x 。A = 0 と B L = 0 から、やはり B = 0 である。
λ > 0 では X ( 0 ) = A = 0 から X = B sin μx 。
B sin μL = 0 ⟹ μL = nπ
λ n = ( L nπ ) 2 , X n = sin L nπ x ( n = 1 , 2 , 3 , … )
n = 0 は X ≡ 0 になるので数えない。n と − n は同じ関数の定数倍なので、正の側だけでよい。
右端の値が 0 を横切る瞬間だけ、条件を満たす解が現れる。飛び飛びになる理由が絵で見える。
問 2:両端で微分が 0
X ′ ( 0 ) = X ′ ( L ) = 0
λ < 0 では X ′ = μ ( A sinh μx + B cosh μx ) 。X ′ ( 0 ) = μ B = 0 から B = 0 。
X ′ ( L ) = μ A sinh μL = 0 で A = 0 。ここまでは問 1 と同じ結果である。
λ = 0 で違いが出る。X = A + B x 、X ′ = B なので、B = 0 だけが要求される。
A には何の条件も付かない。λ 0 = 0 、X 0 = 1 が固有値と固有関数になる。
λ > 0 では X ′ ( 0 ) = μ B = 0 から B = 0 、X ′ ( L ) = − μ A sin μL = 0 から sin μL = 0 。
λ n = ( L nπ ) 2 , X n = cos L nπ x ( n = 0 , 1 , 2 , … )
n = 0 から始まるところが問 1 との違いである。cos 0 = 1 で、λ = 0 の解と一致する。
定数の解を落とすと、断熱した棒の平均温度が消えてしまう。λ = 0 を必ず確かめる理由がここにある。
問 3:片方が値、片方が微分
X ( 0 ) = 0 , X ′ ( L ) = 0
λ ≤ 0 が潰れるのは問 1 と同じ手順なので、λ > 0 を見る。
X ( 0 ) = 0 から A = 0 、X = B sin μx である。微分して X ′ = μ B cos μx 。
cos μL = 0 ⟹ μL = 2 ( 2 n − 1 ) π
λ n = ( 2 L ( 2 n − 1 ) π ) 2 , X n = sin 2 L ( 2 n − 1 ) π x
半端な波長が並ぶ。いちばん低いモードは L が 4 分の 1 波長にあたる。
片方を固定し、もう片方を自由にした棒や、片持ちの構造で現れる形である。
問 4:周期の条件
区間を [ − L , L ] にとり、両端で値と微分の両方をつなぐ。
X ( − L ) = X ( L ) , X ′ ( − L ) = X ′ ( L )
λ = 0 では X = A + B x 。A − B L = A + B L から B = 0 で、X 0 = 1 が残る。
λ > 0 を見る。cos は偶関数、sin は奇関数なので、値の条件は次のようになる。
A cos μL − B sin μL = A cos μL + B sin μL ⟹ B sin μL = 0
微分の条件からは A sin μL = 0 が出る。A と B の両方を 0 にしたくないので、sin μL = 0 を選ぶ。
λ n = ( L nπ ) 2 , X n = cos L nπ x , X ~ n = sin L nπ x
固有値 1 つに固有関数が 2 本ある。問 1 から問 3 では起きなかったことである[3 ] 。
端どうしをつなぐ条件は、区間の左右を分けて書けない。この形を非分離型と呼び、重複が現れるのはこの型に限られる。
問 5:右端でばねにつなぐ
X ( 0 ) = 0 , X ′ ( 1 ) + h X ( 1 ) = 0 ( h > 0 )
熱が端から逃げる量が温度に比例する、という条件にあたる。ロビン条件と呼ばれる。
X ( 0 ) = 0 から X = B sin μx 。右端の条件に入れる。
μ B cos μ + h B sin μ = 0 ⟹ tan μ = − h μ
μ の 2 次方程式ではなく、超越方程式になった。閉じた形では解けない[1 ] 。
それでも根が無限にあることは、グラフを描けば分かる。tan μ の各枝と直線 − h μ が 1 回ずつ交わる。
h を大きくすると直線が寝て、交点は nπ に近づく。右端の条件が「値が 0 」に近づくためである。
h を小さくすると直線が立ち、交点は ( n − 2 1 ) π へ寄る。こちらは問 3 の答えと一致する。
ロビン条件は、ディリクレと混合のあいだを連続につないでいる。
問 6:区間の左端が 0 でない
X ′′ + λ X = 0 , X ( 1 ) = X ( 3 ) = 0
s = x − 1 と置き換えると、区間が [ 0 , 2 ] になる。問 1 の答えに L = 2 を入れればよい。
λ n = ( 2 nπ ) 2 , X n = sin 2 nπ ( x − 1 )
置き換えずに A cos μx + B sin μx のまま進めると、A と B の連立が面倒になる。区間の左端を 0 に寄せてから解くのが速い。
問 7:オイラー型の固有値問題
x 2 X ′′ + x X ′ + λ X = 0 , X ( 1 ) = X ( e ) = 0
次数がそろっているので X = x m を入れる。m ( m − 1 ) + m + λ = m 2 + λ = 0 である。
λ > 0 なら m = ± i λ 。複素の指数なので、三角関数の中身が ln x になる。
X = c 1 cos ( λ ln x ) + c 2 sin ( λ ln x )
X ( 1 ) = 0 では ln 1 = 0 なので c 1 = 0 。X ( e ) = 0 では ln e = 1 なので sin λ = 0 。
λ n = n 2 π 2 , X n = sin ( nπ ln x )
直交性の重みが 1 ではない点に注意したい。方程式を d x d ( x d x d X ) + x λ X = 0 と書き直すと、重みが x 1 だと分かる[4 ] 。
∫ 1 e sin ( mπ ln x ) sin ( nπ ln x ) x d x = 0 ( m = n )
t = ln x と置けば d t = x d x で、問 1 の直交性そのものに戻る。
重み x 1 は置き換え t = ln x のヤコビアン である。
座標を替えたときに出る係数なので、置き換えの前後で内積が保たれる。
零点の数で見当を付ける
固有関数 X n は、区間の内側にちょうど n − 1 個の零点をもつ[2 ] 。
問 1 の sin L nπ x で確かめる。n = 1 なら内側に零点はなく、n = 3 なら 2 個ある。
答えを出したあと、グラフを思い浮かべて零点を数えれば、番号のずれに気づける。問 3 の sin 2 L ( 2 n − 1 ) π x でも同じ規則が成り立つ。
検算のしかた
まず λ < 0 と λ = 0 を確かめたかを見る。ノイマン条件や周期条件では λ = 0 が生きるので、飛ばすと 1 本落とす。
次に固有関数を境界条件に入れ直す。sin 2 L ( 2 n − 1 ) π x を微分し、x = L で cos 2 ( 2 n − 1 ) π = 0 になるかを見る。
固有値が n とともに増え、n → ∞ で無限へ発散しているかも確かめる。減っていたら、μ と λ の関係をとり違えている[3 ] 。
最後に直交性を 1 組だけ計算する。m = 1 、n = 2 で 0 になれば、たいてい全体が正しい。
X ′′ + λ X = 0 を X ′ ( 0 ) = 0 、X ( L ) = 0 で解いたとき、いちばん小さい固有値はどれですか。
__RESULT__
X ′ ( 0 ) = 0 から X = A cos μx となり、X ( L ) = A cos μL = 0 より μL = 2 ( 2 n − 1 ) π です。n = 1 が最小で μ = 2 L π 。λ = 0 は X = A + B x に条件を当てると B = 0 、A = 0 となって自明解しか残らないので、固有値になりません。左右が入れかわっても、半端な波長が並ぶ点は同じです。
λ の符号で 3 通りに分け、境界条件を当て、μ に付く条件を読む。固有値問題の計算は、この 1 本道である。
参考文献
Jiří Lebl. *Sturm-Liouville Problems* . Notes on Diffy Qs.
Russell Herman. *Properties of Sturm-Liouville Eigenvalue Problems* /04%3A_Sturm-Liouville_Boundary_Value_Problems/4.02%3A_Properties_of_Sturm-Liouville_Eigenvalue_Problems). Introduction to Partial Differential Equations.
Leon van Dommelen. *A Summary of Separation of Variables* . Partial Differential Equations, Florida State University.
$X'' + \lambda X = 0$ は $\lambda$ が何でも解けますが、$X(0)=X(\pi)=0$ を付けた瞬間に $\lambda = 1, 4, 9, \ldots$ しか残りません。選んでいるのは方程式ではなく境界条件です。$\lambda<0$、$\lambda=0$、$\lambda>0$ の 3 通りを毎回つぶすところから始め、7 問を解きます。両端で値が $0$、両端で微分が $0$ で定数の解が生き残る場合、半端な波長が並ぶ混合条件、固有値 1 つに固有関数が 2 本つく周期条件、$\tan\mu = -\mu/h$ という超越方程式になるロビン条件、区間をずらす場合、重みが $1/x$ になるオイラー型まで。
X′(0)=0 から X=Acosμx となり、X(L)=AcosμL=0 より μL=2(2n−1)π です。n=1 が最小で μ=2Lπ。λ=0 は X=A+Bx に条件を当てると B=0、A=0 となって自明解しか残らないので、固有値になりません。左右が入れかわっても、半端な波長が並ぶ点は同じです。