多項定理と展開式の係数〜二項定理を 3 つ以上に広げる
の係数が になるのは、 個の括弧から を選ぶ括弧を 個選ぶからでした。
括弧の中身が 3 つ以上になっても、発想は変わりません。どの括弧からどの文字をとり出すか、その選び方を数えるだけ。
展開の正体は選び方
を展開します。これは の掛け算。
分配法則を最後まで使うと、3 つの括弧からそれぞれ 1 文字ずつ選んだ積が、選び方の数だけ並びます。
たとえば という項は、1 番目から 、2 番目から 、3 番目から を選んだ場合。ほかにも選ぶ順を変えた並びがあります。
図の 6 通りは、選ぶ順が違うだけで積はどれも です。同じ項が 6 回できるので、係数が 6 になる。
一般項の形
を 個、 を 個、 を 個の括弧から選ぶとします。 が成り立つ。
このときできる項は で、その選び方の数が係数になります。 個の括弧に 、、 の札を配る配り方なので、同じものを含む順列と同じ数。
これが多項定理です[1]。項の数が 4 つ以上でも、分母に階乗が並ぶだけで形は変わらない。
二項定理は特別な場合
文字が 2 つのときを見ます。 なので 。
二項係数そのものになりました。多項定理は二項定理を文字の数だけ広げたものです[2]。
括弧の中身は 2 つ。どの括弧から 2 つ目を選ぶかだけを決める
括弧の中身は 3 つ以上。どの括弧からどの文字を選ぶかを、種類ごとに割り振る
例:(a + b + c) の 3 乗
指数の組 で、和が 3 になるものをすべて書き出します。
10 項になりました[2]。係数は 、、 の 3 種類だけ。

同じ文字が何個そろっているかで、係数が決まります。全部違えば 、2 つ同じなら 3、全部同じなら 1。
例:特定の項の係数だけを出す
を展開したときの の係数を求めます。全部を展開する必要はない。
指数は で条件を満たします。公式にそのまま入れる。
係数は 60 です。ほしい項の指数を分母に並べるだけで出る。
例:係数の付いた項がある場合
の の係数を求めます。ここは 2 段構えになる。
まず、どの括弧から何を選ぶかの通り数を出します。 通り。
次に、選んだ中身そのものの積を掛けます。 から 1 個、 から 1 個なので 。
係数は 72 です。選び方の数と、係数の積を分けて考えると混乱しません。
係数付きの項では、選び方の数だけで止めないことが大事です。 を 1 個選べば、数の 2 も一緒に付いてくる。
一般に の の係数は、多項係数に を掛けた値になる。
例:同じ文字が複数の項に入る場合
の の係数を求めます。 が 2 か所に出てくるので、指数から逆算する。
を 個、 を 個、 を 個選ぶとします。個数の条件は 、次数の条件は 。
満たす組は 2 つです。 と 。
足して 30 が答えになります。次数の条件を式にしてから、当てはまる組を探す。
小さい場合で確かめます。 で、 の係数は 2。公式では だけが残り 。合いました。
項の個数
を展開すると、項はいくつできるか。指数の組 の個数を数えればよい。
を満たす 0 以上の整数の組を数えます。 個の印と 2 本の仕切りを並べる問題と同じ[5]。
なら で、さきほど書き出した 10 項と合います。
| 式 | 項の個数 | 計算 |
|---|---|---|
| 3 乗 | 10 | 5 から 2 個 |
| 4 乗 | 15 | 6 から 2 個 |
| 5 乗 | 21 | 7 から 2 個 |
文字が 種類なら 個です[1]。
例:文字が 4 つの場合
の の係数を求めます。指数の和は で条件を満たす。
60 です。文字が増えても、分母に階乗を 1 つ足すだけ。
項の個数のほうは 個になります。3 文字の 21 個から大きく増える。
例:係数の総和
を展開したとき、係数を全部足すといくつになるか。
すべての文字に 1 を代入すれば、各項が係数そのものになります。左辺は 。
係数の和は 81 です。展開せずに出せる。
同じ手で、一部の符号を変えた和も出ます。、、 とすれば 。
例:3 種類のくじを引く
多項定理の係数は、そのまま数え上げの答えにもなります。
6 回くじを引き、毎回 A、B、C のどれかが出るとします。A が 3 回、B が 2 回、C が 1 回出る出方は何通りか。
これは の の係数と同じ問題です。 通り。
展開の係数と、並べ方の総数が一致する。同じものを含む順列の公式が、そのまま顔を出しています。
例:確率につなぐ
サイコロを 5 回振ります。1 の目が 2 回、2 の目が 2 回、3 の目が 1 回出る確率を求める。
どの回にどの目が出るかの並びは 通り。それぞれの並びが起こる確率は です。
多項係数は、こうして確率の分子にそのまま入ります。同じ係数が、展開と数え上げと確率の 3 か所に現れる。
例:定数項を求める
の定数項を求めます。 の指数が 0 になる組を探す。
を 個、 を 個、 を 個選ぶとすると、 と 。
なので、組は 、、 の 3 つです。
定数項は 19 になります。負の指数が混ざっても、条件を式にすれば同じ手順で進む。
を展開したときの の係数はいくつですか。
- 10
- 30
- 60
パスカルの三角形との関係
二項係数を三角形に並べると、上の 2 数の和が下の数になりました。多項係数でも同じ構造が現れます。
文字が 3 つの場合は、平面ではなく立体に積む形になる。パスカルのピラミッドと呼ばれます。
高校で使う機会はありません。ただ、二項係数の並びが特別なものではなく、文字の数に応じて次元が上がるだけだと分かると見通しがよくなる。
よくある誤り
多項定理は、公式を覚える単元というより、選び方に読み替える練習の場です。読み替えができれば、分母は自然に決まります。
参考文献
[1] が多項定理と項の個数、[2] が展開の実例、[3] と [4] が同じものを含む順列との対応、[5] が仕切りを使う数え方です。










2!2!1!5!=4120=30 です。60 は 2!5! と、片方の階乗だけで割った値になります。分母には指数のすべてを並べます。