対角線を越えない道だけを数えると……カタラン数が現れる
の格子を最短で進む道は 70 本。そのうち対角線を越えないものは 14 本だけです。
この 14 という数には名前が付いています。カタラン数といい、括弧の対応や多角形の分割など、まったく別の見た目の問題にも同じ数が現れる[1]。
条件を式にする
出発点を原点、目的地を とします。右へ 1 進むと が 1 増え、上へ 1 進むと が 1 増える。
「対角線を越えない」とは、途中のどの点でも が成り立つということ。上に進みすぎてはいけない、という条件です。
言いかえると、どの時点でも上に進んだ回数が右に進んだ回数を超えない。
悪い道を数えて引く
条件を満たす道を正面から数えるのは大変です。そこで、条件を破る道のほうを数えます。
破る道は、どこかで の線に届いています。はじめて届いた点に注目する。
その点から先の道を、 の線について折り返します。右と上を入れかえる操作にあたる。

折り返した道は、 ではなく に着きます。逆に への道はすべて の線に届くので、折り返せば悪い道に戻る。
悪い道と への道が 1 対 1 に対応しました。この対応を反射法といいます[1]。
引き算で式にする
への道は 本。悪い道は への道と同じ数なので 本です。
なら 。整理すると次の形にもなります[2]。
で、同じ値です。
| n | 2n から n 個 | カタラン数 |
|---|---|---|
| 2 | 6 | 2 |
| 3 | 20 | 5 |
| 4 | 70 | 14 |
| 5 | 252 | 42 |
| 6 | 924 | 132 |
小さい場合で確かめる
で書き出します。 の格子で全体は 6 本。
対角線を越えないのは、右右上上と右上右上の 2 本。式でも で合いました。
なら 5 本。 です。書き出せる大きさで一度確かめておくと、式を信用できます。
全体の経路数を組合せで出す
悪い道を折り返して、ずれた行き先への経路数に置きかえる
引き算する
例:括弧の対応
組の括弧を、開きと閉じが正しく対応するように並べる並べ方も 通りです[2]。
3 組なら 、、、、 の 5 通り。
開き括弧を右へ進む、閉じ括弧を上へ進むと読み替えると、格子の道になります。どの時点でも閉じの数が開きの数を超えない、という条件が にあたる。
例:おつりの問題
500 円の切符を売る窓口に、500 円玉だけを持つ人が 4 人、1000 円札だけを持つ人が 4 人、合わせて 8 人が並びます。
おつり用の 500 円玉は最初 0 枚。1000 円札の人には 500 円玉を 1 枚返すので、その時点で手元に 500 円玉がなければ困ります。
どの時点でも 500 円玉の人の数が 1000 円札の人の数以上、という条件です。並び方は 14 通り。
格子の道とまったく同じ条件になっています。
どの点でも 。上へ進みすぎない
どの時点でも 500 円玉の人が 1000 円札の人以上。手元が足りなくならない
例:多角形を三角形に分ける
凸多角形を、交わらない対角線で三角形に分ける分け方の総数も、カタラン数になります[2]。
五角形なら 5 通り、六角形なら 14 通り。 角形の分け方が 通りです。
五角形は手で描けます。5 つの頂点それぞれから 2 本の対角線を引く形で、ちょうど 5 通りに分かれる。
例:投票の問題
候補 A が 5 票、候補 B が 4 票を得たとします。開票の途中で A の得票が B を下回らない開き方は何通りか。
これも同じ形の問題です。A を右、B を上と読めば、どの時点でも という条件になる。
通りです。この形は投票の問題として古くから知られています[1]。
「下回らない」と「常に上回る」は別の条件です。前者は等号を許し、後者は許さない。
等号を許さない形にすると数が変わる。問題文の「以上」と「より多い」を読み分ける必要がある。
例:対角線に触れてもよいかどうか
なら対角線の上を通ってよく、答えは です。
を最初から最後まで求めると、出発点と目的地が対角線上にあるので、そもそも成り立ちません。
条件が付くのは途中の点だけ、という読み方をします。出発点と目的地は数えない。
高校での扱い
カタラン数という名前は、教科書には出てきません。ただ、反射法で悪い道を数える手順は入試で問われます。
覚えるべきは名前ではなく、次の 2 点です。悪い道を折り返すと行き先が 1 つずれること。そして、ずれた先への道と 1 対 1 に対応すること。
この 2 点さえ出せれば、 がいくつでも答えが書けます。
の格子を最短で進む道のうち、対角線 を越えないものは何本ですか。
- 20 本
- 5 本
- 15 本
よくある誤り
悪い道を折り返して、行き先のずれた経路に置きかえる。この 1 手で、難しく見えた条件が引き算に変わります。
参考文献
[1] が反射法と投票の問題、[2] が公式と括弧や多角形の分割との対応、[3] が格子の上の経路、[4] と [5] が組合せと順列の公式です。










全体は 6C3=20 本、悪い道は 6C4=15 本なので、差の 5 本です。20 は条件を付けない全体になります。