「少なくとも 1 つ」を余事象で数える、そして包除原理へ
「少なくとも 1 つ」と書かれた問題を、そのまま数えにいくと苦しくなります。1 つの場合、2 つの場合、3 つの場合と枝が増えていく。
反対から見ると 1 通りで済みます。「1 つもない」場合を数えて、全体から引く。この引き算が余事象です。
余事象の考え方
全体の場合の数を 、条件を満たす場合の数を とします。条件を満たさない場合は 通り。
「少なくとも 1 つ」の反対は「1 つもない」で、こちらは条件が 1 本しかありません。だから数えやすい。
全体の場合の数を出す
「1 つもない」場合を数える
全体から引く
「少なくとも」という言葉を見たら、まず反対側を見る。これが習慣になると、場合分けがほとんど消えます。
例:サイコロ 3 個で少なくとも 1 個は 6
大中小のサイコロを振ります。目の出方は全部で 通り。
6 が 1 個も出ないのは、どのサイコロも 1 から 5 のいずれかになる場合です。 通り。
91 通りになります。直接数えると、6 が 1 個だけ、2 個、3 個と 3 つに分ける必要がある。
念のため直接でも確かめます。1 個だけなら 、2 個なら 、3 個なら 1 で、合計 91。一致しました。
例:コインを 5 回投げて少なくとも 1 回は表
全体は 通り。表が 1 回も出ないのは全部裏の 1 通りだけ。
通りです。余事象がたった 1 通りになるので、引き算の効きがいちばん大きい形。
例:3 個のサイコロで少なくとも 2 個が同じ目
反対は「3 個とも違う目」です。こちらなら順に選べます。
通り。全体から引いて 通り。
「少なくとも 2 つが同じ」を直接数えると、2 個だけ同じ場合と 3 個とも同じ場合に分かれます。反対側は 1 本で済む。
例:先頭が特定の人にならない並び
6 人が一列に並びます。A が先頭に来ない並び方を数える。
全体は 通り。A が先頭なのは、残り 5 人を並べる 通り。
通りです。「〜でない」も余事象で処理できます。
条件が 2 つ以上になると引きすぎる
条件が 1 つなら引き算で足ります。2 つ以上になると、そのままでは合わなくなる。
から までで、3 の倍数または 5 の倍数を数えます。3 の倍数は 33 個、5 の倍数は 20 個。
足して 53 とすると誤りです。15 の倍数である 15、30、45、60、75、90 の 6 個を、両方で数えている。
47 個が正しい。重なりを 1 回引いて戻すのが、包除原理のいちばん簡単な形です[1]。
図のとおり、重なった 6 個だけが二重に数えられます。足してから 1 回引けば帳尻が合う。
集合の記号で書くと次の形になります。 は集合 の要素の個数です。
3 つになると足し戻しが要る
条件が 3 つに増えると、引きすぎが起きます。まず 3 つ足し、2 つずつの重なりを引き、最後に 3 つ全部の重なりを足し戻す。
真ん中の 3 つを引いた時点で、3 つすべてに属する要素は 3 回足して 3 回引かれ、0 回になっています。だから 1 回足し戻す[2]。
例:2 でも 3 でも 5 でも割り切れない数
から までで、2、3、5 のどれでも割り切れない整数を数えます。
倍数の個数は 2 が 50 個、3 が 33 個、5 が 20 個。2 つずつの重なりは 6 の倍数が 16 個、10 の倍数が 10 個、15 の倍数が 6 個。3 つすべては 30 の倍数で 3 個。

式に入れます。
いずれかで割り切れる数が 74 個。全体の 100 から引いて、どれでも割り切れない数は 26 個です。
図の 7 つの区画を足しても 74 になります。区画ごとに数えるほうが、式より間違えにくいこともある。
例:3 つの部屋に空室なしで入れる
4 人を 1 号室、2 号室、3 号室に入れます。空室を作らない入れ方を数える。
制限なしなら 通り。ここから空室のある入れ方を引きます。
ある 1 部屋が空になるのは 通りで、その部屋の選び方が 3 通りなので 。2 部屋が空になる場合を引きすぎているので、 を足し戻す。
36 通りです。この形の数え上げは、全射の個数と呼ばれる量にあたります[4]。
足し戻しの は、2 部屋が空になる場合の数です。どの 2 部屋を空にするかが 3 通りで、残る 1 部屋に全員が入るので各 1 通り。
3 部屋すべてが空になることはないので、この先の項は 0 になる。
例:4 人のじゃんけんであいこ
4 人が 1 回じゃんけんをします。あいこになる場合を数える。
全体は 通り。勝負がつくのは、出た手がちょうど 2 種類のときです。
2 種類の選び方が 通り。その 2 種類を 4 人に割り当てるのは 通りですが、全員同じ手になる 2 通りは 1 種類しか出ていないので除きます。
通りが勝負のつく場合。あいこは 通りです。
余事象と包除原理の使い分け
条件が 1 つなら余事象、複数が重なるなら包除原理。境目はここです。
ただし包除原理も、突き詰めれば同じ発想の繰り返し。数えすぎたら引き、引きすぎたら足す、を最後まで続けるだけ。
条件は 1 つ。全体から「満たさない場合」を引いて終わる
条件が複数。足しすぎと引きすぎを、符号を交互に変えながら直していく
一般の形
条件が 個のときも規則は変わりません。1 つずつを足し、2 つの重なりを引き、3 つの重なりを足す、と符号が交互に入れかわります[3]。
高校で式として書くのは 3 つまでです。4 つ以上は、図か表に整理して数え上げるほうが確実になる。
例:条件を表にして数える
3 つの条件がある問題では、区画を表に並べる手もあります。
| 区画 | 内容 | 個数 |
|---|---|---|
| 3 つすべて | 30 の倍数 | 3 |
| 2 つだけ | 6、10、15 の倍数 | 23 |
| 1 つだけ | 2、3、5 のどれか 1 つ | 48 |
| どれでもない | 残り | 26 |
合計が 100 になるかを最後に確かめます。合わなければ、どこかの区画が抜けている。
引き算の順序を間違えない
余事象を使うとき、全体をどうとるかで答えが変わります。全体の定義を先に書き留めておく。
「6 個のうち少なくとも 1 個が当たり」なら、全体は 6 個の選び方すべて。当たりの個数ではありません。
4 個のサイコロを振ります。少なくとも 1 個は 1 の目が出る場合は何通りですか。
- 4 通り
- 671 通り
- 625 通り
よくある誤り
最後に合計が全体に戻るかを確かめる。この一手間で、符号のとり違えはほぼ見つかります。
参考文献
[1] が包除原理の一般形と応用、[2] と [3] が各国語での定式化、[4] は空室なしの配り方が持つ意味、[5] は和の法則の前提です。











全体は 64=1296 通り、1 が 1 個も出ないのは 54=625 通りです。引いて 671 通り。625 は余事象そのものの値なので、そこで止めると答えになりません。