nCr の等式は同じものを 2 通りに数えた結果
を、階乗の式に直して確かめることはできます。ただ、もっと速い示し方がある。
個から 個を選ぶことと、残す 個を決めることは同じ作業です。同じものを 2 通りに数えれば、それだけで等式になる。
証明の型はひとつ
組合せの等式は、たいてい次の形で示せます。
ある集合の要素の個数を、2 通りの数え方で計算する。どちらも同じ集合を数えているので、2 つの式は等しい。
式変形は要りません。何を数えているかを言葉で言い切れば終わります。
数える対象の集合を決める
1 つ目の数え方で式を作る
2 つ目の数え方で式を作り、等号で結ぶ
対称性の等式
人から 人の委員を選びます。選び方は 通り。
同じことを、残る 人を決める作業と見ることもできます。こちらは 通り。
選ぶ側と残す側は 1 対 1 に対応するので、両者は等しい[1]。
パスカルの規則
人から 人を選ぶ選び方を、特定の 1 人 A を含むかどうかで分けます。
A を含むなら、残り 人を A 以外の 人から選ぶ。 通り。
A を含まないなら、 人すべてを A 以外の 人から選ぶ。 通り。
この 2 つで全体を過不足なく覆っています[1]。
パスカルの三角形で、上の 2 つの数を足すと下の数になる規則が、この等式にあたります。
行の和
個の要素をもつ集合の部分集合を数えます。要素ごとに入れるか入れないかを決めるので 個[3]。
同じものを、要素の個数で分類しても数えられます。 個の部分集合が 個あるので、 を 0 から まで足す。
なら です[1]。
委員長を選ぶ等式
人から 人の委員を選び、そのうち 1 人を委員長にします。この組の総数を 2 通りに数える。
先に委員を選んでから委員長を決めるなら、 通り。
先に委員長を決めてから残りの委員を選ぶなら、 通り。
、 で確かめます。左辺は 、右辺は [1]。
集団を先に固めて、その中から 1 人を立てる
代表を先に立てて、残りを埋める
斜めに足す等式
パスカルの三角形を斜めにたどって足すと、1 つ下の数になります。
から までの数から 3 個を選ぶ選び方を、いちばん大きい数で分類します。
いちばん大きい数が なら、残り 2 個は から までから選ぶ。 通りです。
は 3 から 6 まで動くので、足すと次のようになる。
左辺は 、右辺も 20 です[1]。

2 つの集団から選ぶ等式
男子 5 人と女子 4 人の合わせて 9 人から、3 人を選びます。 通り。
同じものを、男子が何人入るかで分類します。男子 人と女子 人を選ぶので 通り。
を 0 から 3 まで動かして足します。
で一致しました。ヴァンデルモンドの等式と呼ばれる形です[1]。
二乗の和
男子 4 人と女子 4 人から 4 人を選びます。 通り。
男子が 人なら女子は 人。 通りです。
ここで という対称性を使うと、各項が二乗になります。
。対称性の等式を 1 回はさむだけで、二乗の和が出ます。
| 等式 | 数える対象 | 分類のしかた |
|---|---|---|
| 対称性 | 人の選び方 | 選ぶ側か残す側か |
| パスカル | 人の選び方 | 特定の 1 人を含むか |
| 行の和 | 部分集合 | 大きさで分ける |
| 委員長 | 委員と委員長の組 | どちらを先に決めるか |
| 斜めの和 | 3 個の選び方 | いちばん大きい数で分ける |
| 2 集団 | 3 人の選び方 | 男子が何人入るか |
どの証明も、数える対象をはっきりさせるところから始まります。ここが曖昧だと 2 通りの数え方が結び付かない。
「5 人から 3 人を選ぶ選び方の全体」のように、集合を言葉で言い切ってから数え始める。
式変形との比べ方
階乗の式に直して計算しても、同じ等式は出ます。ただし手間が増え、意味が見えなくなる。
パスカルの規則を式変形で示すなら、通分して整理する数行が要ります。数え方の言いかえなら 2 文で済む。
答案でどちらを書くかは自由です。ただ、思い出せなくなったときに復元できるのは、数え方のほうになります。
例:等式を自分で作る
数え方を 2 通り思いつけば、新しい等式が作れます。
人から偶数人を選ぶ選び方と、奇数人を選ぶ選び方を比べます。 なら、この 2 つは等しくなる。
特定の 1 人 A に注目します。A 以外の 人の選び方を先に決め、そのあと、選んだ人数が偶数になるように A を入れるかどうかを決める。
A 以外の選び方それぞれについて、偶数になる選び方と奇数になる選び方が 1 つずつ対応します。だから同数で、どちらも 通り。
を数え方で説明するとき、何で場合分けしますか。
- 選ぶ人数を 2 人と 3 人に分ける
- 特定の 1 人を含むか含まないかで分ける
- 男子と女子に分ける
よくある誤り
同じものを 2 通りに数える。この 1 手だけで、教科書に並ぶ等式のほとんどが示せます。
参考文献
[1] が二項係数の主な等式、[2] が組合せの定義、[3] が部分集合の個数、[4] と [5] が各国語での整理です。












7 人から 3 人を選ぶとき、特定の 1 人 A を含めば残り 2 人を 6 人から、含まなければ 3 人を 6 人から選びます。15+20=35 で、7C3 と一致します。