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ベクトルの大きさの 2 乗を内積に直して展開すると計算はぐっと楽になる

のとき、 です。

大きさのまま足し算はできませんが、2 乗すると内積の計算になります。 と、文字式の とまったく同じ形で展開できる。

大きさが出てきたら 2 乗する。ベクトルの計算はここから始まります[2]

大きさの 2 乗は自分との内積

ベクトルの大きさは、自分自身との内積の平方根です[1,2]

内積の定義 からも確かめられます。 なので になる。

この 1 行があるので、大きさの 2 乗は内積の言葉に翻訳できます。逆に内積の計算結果は大きさに戻せる。

展開の規則

内積には、文字式の掛け算と同じ規則が成り立ちます[1,3]

交換の規則は です。
分配の規則は です。
実数倍は です。

3 つがそろっているので、 と同じ手順で展開できます。

ただし内積の答えは実数であって、ベクトルではありません。 を内積することはできない。

例:大きさの 2 乗を展開する

を展開します。まず内積に直す。

と同じ形です。真ん中の項が内積になっているところだけが違う。

例:引き算のとき

も同じ手順で展開できます[2]

真ん中の符号が変わるだけ。 なら で、 です。

例:数を入れて確かめる

を求めます。

。大きさは 以上なので です。

2 乗した値が答えではありません。最後に平方根をとるところまでが 1 つの手順になる。

例:大きさから内積を出す

のとき、 を求めます。

展開の式に入れると 。移項して です。

になります。与えられた大きさが 3 つあれば、内積は逆算で出せる。

例:なす角を求める

いまの のなす角 を出します。定義から

なので です。

の組なら になります。

例:積の形を展開する

を展開します。分配の規則を 4 回使う。

は同じものなので、 とまとめられます。

を入れると です。

例:係数が付いた大きさ

を展開します。係数は 2 乗されて外に出る。

真ん中の項は で、符号は負。 となり、 です。

を 2 倍し忘れて とする誤りが多いところ。 の展開と同じだと思えば間違えにくくなります。

中線定理が出てくる

を足すと、内積の項が消えます[4]

平行四辺形の法則と呼ばれる等式です。2 本の対角線の 2 乗の和が、4 辺の 2 乗の和に等しいことを表しています。

で、右辺は 。さきほどの数でも合っています。

例:中線定理として読む

三角形 で辺 の中点を とします。 とおくと

です。足すと内積が消えます。

図形の定理が、内積の項が打ち消し合うという計算 1 つで出てきました。

例:垂直条件を大きさで書く

が成り立つのは、どんなときでしょうか。

両辺を 2 乗して展開すると です。

なので 。つまり が垂直なときに限られます。

平行四辺形の 2 本の対角線が等しいのは長方形のとき、という事実に対応する。

例:菱形の対角線は直交する

のとき、 を計算します。

展開すると で、これは 。2 本の対角線の内積が になります。

4 辺の長さが等しい平行四辺形が菱形なので、菱形の対角線は直交する。展開 1 回で証明が終わります。

例:3 つのベクトルが出てくるとき

も同じ規則で展開できます。

の展開と同じ形。組み合わせの数だけ内積の項が出てきます。

という条件が付くと左辺が になり、3 つの内積の和が決まる。この形は正三角形や重心の問題でよく出ます。

大きさと内積の行き来

大きさが与えられたとき

2 乗して展開し、内積を未知数として解く

内積が与えられたとき

展開の式に代入し、最後に平方根をとって大きさに戻す

どちらの向きにも進めるので、問題文で与えられている量と問われている量をつないで、経路を先に決めます。

のとき、 はいくつですか。

__RESULT__

に代入すると です。移項して なので になります。真ん中の項の符号をとり違えると が出ます。

よくある誤り

大きさのまま足したり引いたりする。 とは違います。
2 乗した値をそのまま答えにする。最後に平方根をとります。
の係数を 2 乗し忘れる。 です。
真ん中の項の を落とす。 は交換の規則から出ています。
引き算のときに符号を落とす。真ん中だけが負になります。
をベクトルだと思う。内積の答えは実数です。
を同じものとする。実数倍する相手が違います。

大きさが出たら 2 乗する。この 1 手で、ベクトルの計算は文字式の展開に変わります。

参考文献

[1] が内積の交換・分配・実数倍の規則、[2] が大きさと内積の関係および の展開、[3] が双線形性の整理、[4] が平行四辺形の法則です。

Dot product - Wikipedia(英語)
Skalarprodukt - Wikipedia(ドイツ語)
Produit scalaire - Wikipédia(フランス語)
Parallelogram law - Wikipedia(英語)
$|\vec{a}|=3$、$|\vec{b}|=4$、$\vec{a}\cdot\vec{b}=6$ なら $|\vec{a}+\vec{b}|=\sqrt{37}$ です。大きさのままでは足せませんが、2 乗すれば $9+2\times 6+16$ と、文字式の $(a+b)^2$ と同じ形で展開できる。$\vec{a}\cdot\vec{a}=|\vec{a}|^2$ という 1 行が、大きさと内積をつないでいます。$|2\vec{a}-3\vec{b}|^2$ の係数の扱い、大きさ 3 つからなす角を逆算する手順、$|\vec{a}+\vec{b}|^2+|\vec{a}-\vec{b}|^2$ で内積が消えて中線定理が出るところまで。菱形の対角線が直交する理由も、展開 1 回で片づきます。計算例は 10 通り。