1 辺が 1 の正六角形 ABCDEF で、AB⋅AC=23 です。
∣AB∣=1、∣AC∣=3、なす角は 30∘。定義に入れると 1×3×23=23 になります。
正六角形は 6 つの正三角形に分かれるので、辺と対角線の長さも、頂点どうしのなす角も、すべて 30 度きざみで決まる[1]。この規則を先に押さえると、内積はどれも暗算で出せます。
長さと角を先に決める
1 辺 1 の正六角形では、中心から各頂点までの距離も 1 です[1]。中心と 1 辺でできる三角形が正三角形になるため。
対角線は 2 種類あります。1 つ飛ばしの AC が 3、向かい合う AD が 2。
頂点 A から見ると、B、C、D、E、F の方向は 30 度ずつ開いていきます。∠BAC=30∘、∠BAD=60∘、∠BAE=90∘、∠BAF=120∘。
長さと角のこの表さえ作れば、あとは定義に入れるだけ。
| AB の長さ | 1 |
| AC の長さ | 3 |
| AD の長さ | 2 |
| 角 BAC | 30∘ |
| 角 BAD | 60∘ |
| 角 BAE | 90∘ |
| 角 BAF | 120∘ |
例:AB と AC の内積
∣AB∣=1、∣AC∣=3、なす角 30∘ です。
AB⋅AC=1×3×cos30∘=3×23=23
長さと角が分かっていれば、掛け算 2 回で終わります。
例:AB と AD の内積
∣AD∣=2、なす角は 60∘。1×2×21=1 です。
AD は最も長い対角線ですが、角も開くので内積はかえって小さくなる。長さだけでは大小が決まりません。
例:AB と AE の内積
なす角が 90∘ なので、cos90∘=0。内積は 0 です。
AB と AE は垂直になります。正六角形の中に直角が隠れている。
例:AB と AF の内積
∣AF∣=1、なす角 120∘ で cos120∘=−21。
1×1×(−21)=−21 です。角が鈍角になると内積は負になる。
例:始点がそろっていないとき
AB⋅BC を求めます。始点が A と B で違いますが、内積は向きと長さだけで決まる。
BC を A に平行移動すると、AB から 60∘ 開いた向きになります。正六角形の外角が 60∘ だからです。
1×1×21=21 になります。始点をそろえてから角を測る、という手順を挟みます。
例:向かい合う辺どうし
AB と DE は、向きがちょうど逆です。正六角形の向かい合う辺は平行で、向きが反対になる。
DE=−AB なので、内積は −∣AB∣2=−1 です。
AB と CD なら、なす角は 120∘ で −21 になります。
2 つの辺を基準にして表す
AB=p、AF=q とおくと、A から出る他のベクトルはすべて p と q で書けます。
∣p∣=∣q∣=1 で、なす角は 120∘。よって p⋅q=−21 です。
AD が 2(p+q) と書けるのは、p+q が中心へ向かうベクトルだからです。
例:基準ベクトルで内積を計算する
AB⋅AC を p と q で計算します。AC=2p+q でした。
p⋅(2p+q)=2∣p∣2+p⋅q=2−21=23
角を測って出した 23 と一致します。長さと角から直接出す方法と、基準ベクトルに分解する方法の 2 通りが使える。
図が複雑になるほど、分解して展開するほうが確実になります。
正方形のとき
1 辺 1 の正方形 ABCD では、対角線が 2 で、なす角は 45 度きざみです。
AB⋅AC=1×2×21=1。AB⋅AD=0 で垂直です。
例:正方形の対角線どうしの内積
AC と BD の内積を求めます。AB=p、AD=q とおく。
AC=p+q、BD=q−p です。展開すると ∣q∣2−∣p∣2 になります[3]。
∣p∣=∣q∣=1 なので 0 になります。正方形の対角線が直交することが、内積 1 つで示せる。
例:正三角形のとき
1 辺 1 の正三角形 ABC では、∠BAC=60∘ です。
AB⋅AC=1×1×21=21 になります。
正六角形の p⋅q=−21 と符号が逆なのは、正六角形の内角が 120∘ で鈍角だからです。
2 通りの求め方
長さと角から出す
図から長さと角を読んで定義に入れる。頂点から出るベクトルどうしなら速い
基準ベクトルに分解する
p と q で表してから展開する。始点がばらばらでも確実に進む
始点がそろっていて角がすぐ読めるなら前者、そうでなければ後者。図の複雑さで選びます。
1 辺が 1 の正六角形 ABCDEF で、AC⋅AE はいくつですか。
__RESULT__
∣AC∣=∣AE∣=3 で、∠CAE=60∘ です。3×3×21=23 になります。∠CAE を 90∘ と見ると 0、cos を忘れると 3 が出ます。
よくある誤り
正六角形の 1 辺と中心までの距離を別の値だと思う。どちらも等しくなります。
AC の長さを 2 とする。3 です。2 は AD の長さになります。
始点がずれたまま角を測る。平行移動してからそろえます。
鈍角のとき符号を落とす。cos120∘ は負です。
内角の 120∘ と中心から見た 60∘ を混ぜる。別の角です。
正方形の対角線の長さを 2 とする。1 辺 1 なら 2 です。
基準ベクトルの内積を 0 と思い込む。正六角形では −21 になります。
長さと角の表を先に作る。図形が決まった時点で、内積の値はもう決まっています。
参考文献
[1] が正六角形の内角と対角線の長さ、[2] が内積の定義となす角の関係、[3] が展開の規則です。
Dot product - Wikipedia(英語) Skalarprodukt - Wikipedia(ドイツ語)
1 辺 $1$ の正六角形 $ABCDEF$ で $\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}=\dfrac{3}{2}$ です。$1$ 辺と外接円の半径が等しく、6 つの正三角形に分かれるので、対角線は $\sqrt{3}$ と $2$ の 2 種類しかありません。頂点 $A$ から見た向きは $30$ 度ずつ開き、$\angle BAE$ はちょうど直角。長さと角の表を先に作れば、内積はどれも掛け算 2 回で出ます。始点がそろわない $\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{BC}$ は平行移動してから、図が込み入ったら $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AF}$ を基準に分解して展開。正方形と正三角形の場合、対角線どうしが直交する理由まで扱いました。
∣AC∣=∣AE∣=3 で、∠CAE=60∘ です。3×3×21=23 になります。∠CAE を 90∘ と見ると 0、cos を忘れると 3 が出ます。