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ベクトルの影の長さが内積の正体|高校数学の正射影ベクトル

の向きに を落とすと、影は になります。

を で割った値が、 の何倍かを表す。この影を正射影ベクトルといいます[1]。

内積は、この影の長さに を掛けた値です。 で影の長さが なので、掛け戻すと になる。内積の図形的な意味がここにあります。

影の長さは内積を割ったもの

と のなす角を とします。 を の向きへ落とした影の長さは です。

内積の定義 を見ると、この影の長さが右辺に入っています。

これを符号付きの長さと呼びます。 が鈍角なら が負になり、影は と逆を向く。

内積は「 と影の長さの積」。この読み方ができると、内積が図の中で見えるようになります[3]。

正射影ベクトルの式

影の長さに、 の向きの単位ベクトル を掛けるとベクトルになります[1,2]。

分母が ではなく になるところが要点。単位ベクトルを 2 回使うので、 で 2 回割ることになります。

の定数倍なので、向きは と同じか正反対。係数 の符号がそれを決めます。

例:成分で計算する

、 とします。、 です。

正射影ベクトルは 。

影の長さは になります。 で割る点と、ベクトルでは で割る点を分けて覚えます。

例:垂直な成分をとり出す

から正射影ベクトルを引くと、 に垂直な成分が残ります。

です。

との内積を計算すると 。たしかに垂直になっている。

長さは です。 で、三平方の定理も成り立ちます。

例:なす角が鈍角のとき

、 とします。 です。

正射影ベクトルは 。係数が負なので、影は と逆向きになります。

影の長さを問われたら と絶対値をとる。符号付きの値のままか、長さとしての値かを、問題文で確かめます。

例:単位ベクトルを使う書き方

の単位ベクトルは です。

。これが影の長さになります。

正射影ベクトルは 。さきほどと同じ結果です。

先に単位ベクトルを作っておくと、同じ向きへ何度も落とす問題で計算が短くなる。

例:垂線の足を求める

、 を通る直線に、点 から垂線を下ろします。

、 です。内積は 、。

正射影ベクトルは 。これを に足すと垂線の足になります。

検算に と の内積をとると で、垂直になっています。

三角形の辺を射影する

三角形の 1 辺は、残りの 2 辺をその辺へ落とした影の和になります[4]。

射影定理と呼ばれる関係です。頂点から向かい合う辺へ垂線を下ろすと、辺が 2 つに分かれる。その 2 つがそれぞれの影にあたります。

例:射影定理を数で確かめる

、、 の三角形を考えます。余弦定理から 。

同じく です。

。たしかに に一致します。

例:内積を影として読む

で、 の影の長さが だとします。内積は です。

もなす角も分かりませんが、影の長さだけで内積が決まる。逆に内積と が分かれば影の長さが出ます。

物理で仕事を と書くのも同じ理由です。動いた向きに沿う力の成分だけが効く、という意味になる。

影を測るか、成分で計算するか

図から影を読む

なす角が分かっているときに速い。 を掛けるだけ

成分で計算する

座標が与えられているときに確実。内積を で割る

角度が与えられていれば前者、座標が与えられていれば後者。どちらも同じ値にたどり着きます。

の向きへ を落とした正射影ベクトルはどれですか。

__RESULT__

、 なので係数は です。正射影ベクトルは になります。落とす先ではなく の大きさの 2 乗 で割ると 、 で 1 回だけ割ると が出ます。後者は影の長さのほう。

よくある誤り

分母を にする。ベクトルを出すときは で割ります。
の側で割る。落とす先である の大きさで割ります。
影の長さと正射影ベクトルを混ぜる。前者は実数、後者はベクトルです。
鈍角のときに符号を落とす。影が逆向きになるので係数は負です。
長さを聞かれているのに符号付きの値を答える。絶対値をとります。
垂線の足を出すのに に足し忘れる。正射影ベクトルは からの変位です。
単位ベクトルを作らずに をそのまま影の長さとする。 で割ります。

内積を「大きさ × 影の長さ」と読み替える。この 1 つの見方が、垂線の足にも射影定理にもつながっています。

参考文献

[1] が正射影ベクトルと符号付きの長さの式、[2] が単位ベクトルを使う書き方、[3] が内積の図形的な意味、[4] が射影定理です。

Vector projection - Wikipedia(英語)
Projection orthogonale - Wikipédia(フランス語)
Dot product - Wikipedia(英語)
Law of cosines - Wikipedia(英語)
$\vec{a}=(3,\ 4)$ の向きに $\vec{b}=(5,\ 2)$ を落とすと、影は $\dfrac{23}{25}\vec{a}$ になります。内積 $23$ を $|\vec{a}|^2=25$ で割った値が、$\vec{a}$ の何倍かを表す。分母が $|\vec{a}|$ ではなく $|\vec{a}|^2$ になるのは、単位ベクトルを 2 回使うためです。影の長さのほうは $\dfrac{23}{5}$ で、これに $|\vec{a}|$ を掛け戻すと内積に戻る。鈍角なら係数が負になり、影は逆を向きます。$\vec{b}$ から影を引いて垂直な成分をとり出す計算、垂線の足 $H$ の求め方、三角形の射影定理まで、計算例を 8 つ並べました。