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一様電場に入った電子の偏向を放物運動として扱う

で加速した電子を、長さ の極板のあいだに水平に打ち込みます。極板の間隔は 、掛ける電圧は 。

極板を出るまでに 曲がり、 先のスクリーンでは ずれます。

答えを出す式に、電子の質量も電荷も残りません。曲がり方を決めるのは 2 つの電圧の比と、極板の形だけです。

横は等速、縦は等加速度

極板に入った電子には、電場から一定の力が働きます[1]。向きは電場に沿っていて、進行方向とは直角。

進行方向には力がないので、横向きの速さは変わりません。縦向きだけが一定の加速度で増えていく。

斜方投射と同じ形です。水平投射した物体が描く放物線を、重力の代わりに電気の力で作っている[2]。

横向きは等速なので、極板にいる時間を出す

縦向きは等加速度なので、その時間で落ちる距離を出す

出口の縦の速さから角度を出す

極板の中にいる時間

加速電圧 で加速された電子の速さは、エネルギーの保存から出ます。

、、 を入れます[3]。

光速の 1 割ほど。極板の長さ を通り抜ける時間は です。

縦向きの加速度

極板間の電場は、電圧を間隔で割った値になります。

加速度は力を質量で割るだけ。

けた違いの値に見えますが、働いている時間が しかないので、ずれは にとどまります。

質量も電荷も消える

途中の数値を追わずに、記号のまま最後まで進めてみます。

ここに を代入します。

と がそろって消えました。残ったのは 2 つの電圧の比と、極板の長さと間隔だけ。

同じ装置に別の粒子を入れても、加速電圧が同じなら曲がり方は変わりません。

重い粒子は遅いので長く力を受け、軽い粒子は速いので短い時間しか受けない。この 2 つがちょうど打ち消し合う。

陽子を入れても、ずれの大きさは のままです。違うのは曲がる向きだけ。電荷が正なので、電子とは反対側の極板へ寄ります。

出口の角度

極板を出るときの縦の速さは です。横の速さは のままなので、角度は次の比で出ます。

数値を入れると で、。ごくわずかな傾きです。

この角度と、極板内で曲がった距離のあいだには、きれいな関係が成り立ちます。

軌道は極板の中央から出たように見える

という関係の意味を、図にすると分かります。

出口での位置と傾きから軌道を逆にたどると、極板の中央、しかも入射した高さの線上に戻る。放物線を 1 本の折れ線で置きかえられます。

例:スクリーン上の変位

極板の出口から 先にスクリーンを置きます。

出たあとは力が働かないので、直線で進みます。傾き のまま 進むと、 ずれる。

極板の中で曲がった を足して、 です。

区間ずれ動きの形
極板の中放物線
極板からスクリーン直線
合計折れ線とみなせる

スクリーンが遠いほど、直線部分が効いてきます。実際のブラウン管では、極板の中のずれは全体の数パーセントにしかなりません[2]。

重力は無視できる

電子にも重力は働きます。桁を比べてみます。

比は 倍。重力を書き足しても、有効数字のどこにも現れません。

斜方投射

一定の力は重力。粒子の質量が大きいほど落ちにくくなる

電場での偏向

一定の力は 。加速電圧が同じなら、質量にも電荷にもよらない

例:偏向電圧はどこまで上げられるか

ずれが極板の間隔の半分を超えると、電子は極板に当たって外へ出られません。

について解きます。

が上限でした。これを超えると画面に何も映りません。間隔を広げれば上限は 2 乗で上がりますが、そのぶん同じ電圧での曲がりは小さくなります。

寸法を変えるとどう効くか

を見ると、それぞれの効き方が読めます。

極板を長くする

の 2 乗で効くので、 倍にすればずれは 倍。力を受ける時間が伸びるうえ、その時間で落ちる距離が 2 乗で効くため

間隔を広げる

に反比例するので、 倍にすればずれは半分。同じ電圧でも電場が弱くなるため

加速電圧を上げる

に反比例する。速く飛ぶぶん、力を受ける時間が短くなるため

長くするのが最も効きますが、装置が伸びます。実際の設計では、極板を短く保ってスクリーンまでの距離で稼ぐ形になります。

偏向感度

スクリーン上の変位を、偏向電圧の 1 次式にまとめておきます。

に比例するので、 あたりのずれが装置の性能になります。

で 。 の画面をいっぱいに振るには、 ほどの振幅が要ります。

検算のしかた

が使えるのは、電子が極板の外へ出るまで極板にぶつからない場合です。

出したずれが を超えていたら、その電子は途中で極板に当たっています。まずここを見ます。

角度の検算も速い。 を計算し、 と別々に出した値が合うかを比べます。

極板の長さと間隔を入れかえて代入する。
加速電圧と偏向電圧をとり違える。文字が似ているので起こりやすい。
極板を出たあとも曲がり続けると考える。
スクリーンまでの距離を、極板の入口から測る。
電子の重力落下を足そうとする。

極板を出たあとに力は働きません。真空中を等速直線で飛びます。

偏向電圧を から に上げ、加速電圧を から に上げます。極板を出るまでのずれはどうなりますか。

  • 変わらない
  • 2 倍になる
  • 4 倍になる
__RESULT__

なので、 と を同じ倍率で上げるとずれは変わりません。加速電圧を上げると電子が速くなり、極板にいる時間が短くなるためです。

放物運動として組み立て、最後に記号のまま整理する。そうすると、装置の寸法と電圧の比だけが残ります。

出典

*Deflection of Electrons*. PHYS 102 Laboratory, Rice University.
Andreas Wipf. *Elektrodynamik*, Kapitel 2: Einführung in die Elektrostatik. Theoretisch-Physikalisches Institut, Universität Jena.
Electron mass. CODATA 2022, National Institute of Standards and Technology.
$2000\ \mathrm{V}$ で加速した電子を長さ $5.0\ \mathrm{cm}$ の極板に打ち込み、$50\ \mathrm{V}$ を掛けると $1.6\ \mathrm{mm}$ 曲がります。$20\ \mathrm{cm}$ 先のスクリーンでは $1.4\ \mathrm{cm}$。記号のまま整理すると $y = V\ell^2/(4dV_0)$ になり、$e$ と $m$ がそろって消える。陽子に入れかえても、曲がる向きが変わるだけで大きさは同じです。出口の傾きで軌道を逆にたどると極板の中央に戻ること、偏向電圧の上限が $160\ \mathrm{V}$ になること、重力が $10^{14}$ 倍の差で効かないことまで。