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コイルのある直流回路をスイッチ直後と定常状態で見る

の電池に の抵抗と のコイルを直列につなぎます。スイッチを入れた瞬間の電流は 、じゅうぶん時間がたつと になります。

コイルは電流の変化を嫌います。急に流そうとすると、それを打ち消す向きの起電力を出す[1]。

落ち着いてしまえば変化がないので、起電力も消えます。そのときのコイルは、ただの導線と区別が付きません。

電流の変化に逆らう

コイルに生じる起電力は、電流の変化率に比例します[1]。

は自己インダクタンスで、単位はヘンリー。マイナスは、変化を打ち消す向きを表しています。

電流が増えようとすれば減らす向きに、減ろうとすれば増やす向きに働く。

スイッチを入れた瞬間

電流を から増やそうとする変化がいちばん急。コイルは断線と同じ振る舞いをする

じゅうぶん時間がたったあと

電流が一定で変化がない。コイルは抵抗のない導線と同じになる

コンデンサーとはちょうど逆

同じ直流回路でも、コンデンサーとコイルは逆の振る舞いをします。

素子入れた瞬間時間がたったあと
コンデンサー導線とみなす切れた線とみなす
コイル切れた線とみなす導線とみなす

どちらも、極端な 2 つの時刻では抵抗だけの回路に化けます。途中の様子を追わずに済むので、問題の多くはこの 2 点だけを聞いてきます。

入れた瞬間はコイルを切って回路を解く

じゅうぶん時間がたったあとはコイルを導線に置きかえる

必要なら時定数で途中の様子を見る

時定数

電流が最終値へ近づく速さは、時定数で決まります[2]。

が大きいほど、 が小さいほど、落ち着くのに時間がかかります。

で最終値の 63\ \mathrm{%}、 で 95\ \mathrm{%} に届きます。

例:6 V と 3 Ω と 0.30 H

時定数を出します。

最終的な電流は 。 で 、 で です。

入れた瞬間の変化率も出せます。電流が なので抵抗の電圧降下も 、電池の がすべてコイルに掛かる。

この勢いのまま増え続ければ、 で に届く計算です。実際は途中で鈍るので、そこまで速くはなりません。時定数の意味がここに現れています。

はじめの傾きのまま伸ばした直線が最終値と交わる点、それが 時定数 です。

の傾きで まで上がるのに要る時間が になる。

蓄えられるエネルギー

定常状態のコイルには、磁場のエネルギーが蓄えられています。

コンデンサーの と同じ形です。電圧の代わりに電流が入る。

このエネルギーは、スイッチを切った瞬間に行き場を失います。急に電流を止められないので、コイルは高い電圧を出して流れ続けようとする。

例:定常状態の回路を解く

の電池に を直列につなぎ、その先に とコイルを並列に置きます。コイルの抵抗は無視できるとします。

じゅうぶん時間がたったあとは、コイルを導線に置きかえます。 が短絡された形になる。

電流はすべてコイル側を通り、 には流れません。

スイッチを入れた瞬間はどうか。コイルを切って考えるので、 と の直列です。

同じ回路で、 から へ増えていきます。

例:スイッチを切る

定常状態から、電池を回路から外して抵抗だけの輪にします。電流は から へ落ちていく。

減り方も指数関数で、時定数は同じ です。

で 、 で まで下がります。

このあいだに抵抗で出る熱の総量は、コイルに蓄えられていた とちょうど同じ。電池は切り離されているので、ほかに供給元がありません。

例:ソレノイドのインダクタンス

の値は、コイルの形から決まります。長さ 、断面積 、巻数 のソレノイドなら次の形です。

巻数の 2 乗で効きます。磁場を作る側で に比例し、その磁束を受けとる側でもう一度 が掛かるためです。

、、 で計算します。

。 を作るには鉄心を入れるか、巻数をさらに増やします。

例:時定数を変える

同じ回路で抵抗だけを から へ増やします。

時定数は で 分の 1。落ち着くのは速くなります。

最終的な電流は で 分の 1。速く立ち上がる代わりに、値そのものは小さくなる。

抵抗を大きくする

時定数は短く、最終電流は小さくなる。両方が同じ倍率で動く

インダクタンスを大きくする

時定数だけが長くなる。最終電流は変わらない

電池の電圧を上げる

時定数は変わらず、最終電流だけが比例して増える

検算のしかた

2 つの極端な時刻で、置きかえが正しいかを見ます。コイルは瞬間に断線、定常で導線。逆にすると答えが入れかわります。

時定数の単位も確かめます。 が になるはずです。

エネルギーの桁も見ておきます。 で、 と の 2 乗を掛ければ になります。

入れた瞬間にコイルを導線とみなす。断線です。
定常状態でコイルに電圧が掛かると考える。 です。
時定数を とする。 です。
コイルのエネルギーを とする。電流の 2 乗です。
定常状態の電流を、コイルのインダクタンスで決まると考える。抵抗だけで決まります。

の電池に と のコイルを直列につなぎます。時定数と最終的な電流はどれですか。

  • と
  • と
  • と
__RESULT__

、最終電流は です。 は と を掛けた値になります。

瞬間は切る、定常はつなぐ。この 2 つの置きかえだけで、コイルのある回路はふつうの抵抗回路に落ちます。

参考

Faraday's Law. University Physics Volume 2, OpenStax.
RL Circuits. University Physics Volume 2, OpenStax.
Étienne Thibierge. *Champ magnétique, théorème d'Ampère*. Cours 17, PT, Lycée Blaise Pascal.
$6.0\ \mathrm{V}$ に $3.0\ \Omega$ と $0.30\ \mathrm{H}$ を直列につなぐと、入れた瞬間の電流は $0$、最後は $2.0\ \mathrm{A}$。コイルは電流の変化を嫌うので、瞬間は切れた線、定常では抵抗のない導線に置きかえられます。コンデンサーとちょうど逆の振る舞いです。時定数 $L/R$ は $0.10\ \mathrm{s}$ で、はじめの傾き $\varepsilon/L$ のまま伸ばした直線が最終値と交わる時刻にあたる。蓄えられる $\frac{1}{2}LI^2$ が切ったあとの発熱と一致することや、ソレノイドの $L$ が巻数の 2 乗で効くことまで。