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レール上の導体棒と斜面:磁場から受ける力のつり合い

の水平な磁場の中に、長さ 、質量 の導体棒を水平に置きます。 を流すと、棒は重力とちょうど釣り合って浮きます[1]。

同じ棒をなめらかな斜面のレールに載せ、磁場を鉛直向きに変えると、必要な電流は角度で決まります。

力の式は 1 本だけです。あとは、その力をどの向きの成分に分けるかという話になります。

力の大きさと向き

磁場 の中で、長さ の導体に電流 が流れているときの力は次の形です[1]。

は電流の向きと磁場の向きがなす角。直角なら で最大、平行なら になります。

向きは電流にも磁場にも垂直です。左手の 3 本指でも、右手をひねる形でも決められます[2]。

電流と磁場の角度から力の大きさを出す

力の向きを、電流と磁場の両方に垂直な向きに決める

その向きを、つり合いを立てたい軸の成分に分ける

例:重力とつり合わせる

水平な磁場の中に、磁場と直角に導体棒を置きます。力は鉛直向きになります。

質量 の棒に働く重力は 。これと等しくなる電流を出します。

にも届きません。磁場が の桁あれば、電流はわずかで足ります。

磁場を 分の 1 の にすると、必要な電流は 倍の 。積 が同じ値になるように動きます。

例:水平レールと摩擦

水平な 2 本のレールに導体棒を載せます。レールの間隔は 、棒の質量は 。

磁場は鉛直上向きに 。電流が水平に流れるので、力は水平になります。

静止摩擦係数を とすると、最大の静止摩擦力は次のとおり。

これを超えたときに棒が動き出します。

垂直抗力は磁場の力に影響されません。力が水平なので、押しつける成分がないためです。

例:斜面のレール

に傾いたなめらかなレールに、質量 の棒を載せます。レールの間隔は 。

磁場を鉛直上向きに かけます。電流は水平なので、力は水平向きに 。

斜面に沿った向きで釣り合いを立てます。重力の斜面成分は 、磁場の力の斜面成分は 。

が出てくる形になりました。糸で吊るした物体のつり合いと同じ形です。

磁場の向きで式が変わる

同じ斜面でも、磁場を斜面に垂直にかけると話が変わります。

そのときの力は斜面に沿った向きになるので、成分に分ける必要がありません。

磁場が鉛直

力は水平。斜面方向の成分は 倍になり、 の式が出る

磁場が斜面に垂直

力は斜面に沿う。分解が要らず、 の式で済む

では と で近い値です。 にすると と で、倍ほど開きます。

磁場の向きを読み違えると、 と をとり違える ことになります。

角度が小さいうちは差が出ないので気づきにくい。 を超えたあたりから答えが大きくずれる。

例:磁場が斜めにかかる場合

電流と磁場が直角でないときは、 が効いてきます[1]。

の磁場が、電流に対して の角度でかかっている場合を考えます。

力が半分になるので、同じ効果を出すには電流を 2 倍にします。磁場と電流が平行になると力は です。

検算のしかた

力の向きを、電流と磁場の両方に垂直にとれているかを見ます。どちらかと平行になっていたら、当て方が違います。

の が、電流と磁場のなす角かどうかも確かめます。斜面の傾きと混ざりやすい場所です。

単位でも確かめられる。 が になるはずです。

の に斜面の傾きを入れる。電流と磁場のなす角です。
磁場が鉛直のときに、力を斜面方向とみなす。水平です。
摩擦のある水平レールで、磁場の力が垂直抗力を変えると考える。
斜面で を使う場面と を使う場面を混ぜる。
電流と磁場が平行なときにも とする。 です。

の水平な磁場の中に、長さ 、質量 の導体棒を磁場と直角に置きます。浮かせるのに要る電流はどれですか。

__RESULT__

で、 です。 は質量を のまま扱った場合、 は を掛け違えた場合の値になります。

力の式は 1 本、あとは分解する軸を選ぶだけ。配置が変わっても、この 2 段の手順は同じです。

参考

Magnetic Force on a Current-Carrying Conductor. University Physics Volume 2, OpenStax.
Étienne Thibierge. *Champ magnétique, théorème d'Ampère*. Cours 17, PT, Lycée Blaise Pascal.
*Versuch E9: Biot-Savart-Gesetz und Ampèresches Gesetz*. Physikalisches Grundpraktikum, Universität Greifswald.
$0.50\ \mathrm{T}$ の水平な磁場に長さ $0.50\ \mathrm{m}$、質量 $10\ \mathrm{g}$ の導体棒を置くと、$0.39\ \mathrm{A}$ で浮きます。使う式は $F = IBL\sin\theta$ の 1 本だけで、あとはどの軸の成分に分けるかという話。水平レールに摩擦があれば $\mu mg$ を超えた電流で動き出し、$30^\circ$ の斜面では磁場の向きしだいで $\tan$ と $\sin$ が分かれます。鉛直磁場なら $2.8\ \mathrm{A}$、斜面に垂直な磁場なら $2.5\ \mathrm{A}$。角度が小さいうちは差が出ないので気づきにくく、$60^\circ$ では倍近くまで開くことも見ます。