加速電圧と電子ボルト|1 ボルトで電子は秒速 590 km になる
で加速しただけの電子が、秒速 で飛びます。 なら [1]。
電圧を 倍にしても、速さは 倍にしかなりません。エネルギーが速さの 2 乗に効くためです。
この関係を電子ボルトという単位で書くと、換算がほとんど要らなくなります。
電圧はエネルギーの受け渡し
電位差 のあいだを電荷 が動くと、 だけのエネルギーをやりとりします[1]。
静止から始めて、途中で何も失わないなら、それがそのまま運動エネルギーになる。
経路の形は関係ありません。まっすぐ加速しても曲がりくねっても、両端の電位差だけで決まります。
電位差からエネルギーを出す
エネルギーを運動エネルギーとみなす
速さについて解く
電子ボルトという単位
電気素量 の粒子が の電位差を通ると、 のエネルギーを得ます。この値を 1 電子ボルトと呼びます。
年の単位の改定で電気素量が定義値になったので、この換算はぴったりの値です[2]。測定で決まる量ではなくなりました。
便利なのは、加速電圧の数値をそのままエネルギーとして読める点。 で加速した電子は を持ちます。
| 電子の静止エネルギー | |
| 室温の熱運動 |
例:100 V で加速する
数値を入れます。、 です。
音速の 1 万 7 千倍ほど。ブラウン管でも電子顕微鏡でも、この程度の電圧から話が始まります。
エネルギーのほうは 、つまり です。
例:電圧を 4 倍にする
なので、 倍の電圧は 倍の速さです。
で 、 で 。倍率だけを見れば計算は要りません。
逆に、速さを 倍にしたいなら電圧は 倍。装置の設計では、この効率の悪さがそのまま壁になります。
という関係は、粒子の種類によりません。
比例定数のほうに が入る。同じ電圧なら、比電荷の平方根で速さが決まる。
粒子を変えるとどうなるか
同じ で加速したときの速さを並べます。
| 粒子 | 比電荷の比 | 速さ |
|---|---|---|
| 電子 | ||
| 陽子 | ||
| アルファ粒子 |
電子と陽子の速さの比は 倍。エネルギーはどちらも で同じなのに、速さは 40 倍以上ちがいます。
アルファ粒子は電荷が 倍あるので、 で を得ます。それでも質量が 倍あるため、陽子より遅くなる。
熱運動と比べる
室温の粒子が持つエネルギーは ほどです。
加速電圧をわずか 掛けるだけで、その 倍を超える。電子銃で を使えば、熱運動は完全に無視できます。
はじめの速さを とみなしてよいのは、この差があるからです。フィラメントから出たときの速さは、加速後の速さの 1\ \mathrm{%} にも届きません。
相対論はいつ効くか
電子の静止エネルギーは 、つまり です[3]。
加速で与えるエネルギーがこれに近づくと、古典的な式が合わなくなります。目安は静止エネルギーとの比。
得るエネルギーは静止エネルギーの 0.4\ \mathrm{%}。古典の式とのずれは 0.3\ \mathrm{%} ほど
得るエネルギーは 4\ \mathrm{%}。ずれが 3\ \mathrm{%} まで広がり、無視できなくなる
高校で扱う数千ボルトの範囲なら、 のままで問題ありません。医療用の X 線管が使う 万ボルトの領域になると、話が変わります。
速さを並べて見る
加速電圧を変えたときの電子の速さを、 を単位にして並べます。
棒の高さが電圧に比例していません。 は の 倍ですが、速さは 倍。平方根が効いています。
例:光速の 1 割にする電圧
を出すのに必要な電圧を、逆に解きます。
わずか です。家庭のコンセントの 倍ほどの電圧で、電子は光速の 1 割まで届きます。
軽さがそのまま効いている。同じ速さを陽子で出すには、 倍の電圧が要ります。
例:向きが逆なら減速する
電位差の向きを逆にすると、同じ式が減速の式になります。
の電子が の坂を登れば、ちょうど速さが になる。それ以上の電圧なら、途中で引き返します。
この を阻止電圧といいます。電子の運動エネルギーを電圧の値で読む方法になっている。
飛んでくる電子のエネルギーを測りたいとき、電圧を上げながら電流が になる点を探せば、そこが答えです。
例:加速してから減速する
で加速し、そのあと 分の逆向きの電位差を通る場合を考えます。
正味の電位差は なので、最終的なエネルギーは 。途中の経路や順番は答えに影響しません。
静電気力が保存力なので、通った道ではなく両端の電位差だけで決まります。途中で何度上り下りしても同じ[1]。
換算は最後の 1 回に回す
計算を楽にするコツは、 への換算をできるだけ遅らせることです。
エネルギーの足し引きは、すべて のまま進める。速さが要る段になって初めて を掛けます。
から を引くとき、指数を扱う必要はありません。 とそのまま書けます。
エネルギーを桁で並べる
電子ボルトの便利さは、けたの離れた話を 1 本の軸に載せられる点にあります。

いちばん下の と、いちばん上の のあいだは けた。 で書くと から まで並ぶので、指数を追うだけで疲れます。
例:はじめから動いている場合
静止から始まらない場合は、運動エネルギーの差で書きます。
初速 の電子を で加速してみます。初速のぶんのエネルギーは ほど。
合計は になります。速さに直すと で、静止から始めた場合の より 6\ \mathrm{%} 大きい。
要点はエネルギーで足すことです。速さのまま足すと となって、まったく合いません。
検算のしかた
出した速さを光速と比べます。 を超えていたら、どこかで単位を落としています。
エネルギーの側からも確かめられる。加速電圧の数値がそのまま電子ボルトの値になるので、 を で割って、元の電圧に戻るかを見ます。
や の接頭語も見落としやすい。 は で、 万倍の差が とのあいだにあります。
陽子と電子を同じ で加速します。正しいものはどれですか。
- 運動エネルギーも速さも陽子のほうが大きい
- 運動エネルギーは同じで、速さは電子のほうが大きい
- 運動エネルギーは電子のほうが大きく、速さは同じ
電圧の数値をエネルギーとして読み、速さが要るときだけ平方根に落とす。この順で進めると、単位の換算が最後の 1 回で済みます。















電荷の大きさが等しいので、得るエネルギーはどちらも 500 eV です。v=2qV/m の分母に質量が入るため、軽い電子のほうが速くなります。比は 1836=42.8 倍です。