同じ電力を送るのになぜ電圧を上げるのか?損失が電流の 2 乗で効くから
同じ を送るのに、 で送ると が送電線で熱になります。 なら で済む[1]。
電圧を 倍にしただけで、損失が 分の 1 になりました。 の 2 乗です。
送電線の抵抗は同じまま。変わったのは、そこを流れる電流だけです。
送る電力と流れる電流
送りたい電力は、電圧と電流の積で決まります[2]。
同じ電力を送るなら、電圧を上げるほど電流は減ります。反比例の関係です。
を で送るなら 、 なら 。
損失は電流の 2 乗
送電線で熱になる電力は、線の抵抗と電流だけで決まります[2]。
送る電圧はここに出てきません。効くのは電流のほうです。
2 つの式をつなぎます。
電圧の 2 乗に反比例する形になりました。 倍にすれば 分の 1、 倍なら 分の 1 です。
送る電力を電圧で割って電流を出す
その電流の 2 乗に線の抵抗を掛ける
送る電力と比べて損失の割合を出す
例:100 kW を送る
線の抵抗を とし、電圧を変えて比べます。
で送るなら電流は 。
送りたい とまったく同じ値です。全部が途中で熱になり、何も届きません。
に上げると電流は 、損失は 。送る電力の 1\ \mathrm{%} に収まります。
| 送電の電圧 | 電流 | 損失 | 損失の割合 |
|---|---|---|---|
けたが 1 つ上がるたびに、損失が 2 けた下がります。この効き方が、高圧送電を選ばせています。
損失の式に 送る電力の 2 乗 も入っている点を見落とさないようにします。
。同じ電圧でも、送る量が 2 倍になれば損失は 4 倍になる。
変圧器で上げ下げする
高い電圧のまま家庭へ引き込むわけにはいきません。途中で下げます。
変圧器は、巻数の比で電圧を変えます[1]。
電圧を上げれば電流が下がり、電力は保たれる。損失のない理想の変圧器なら です。
発電所で上げ、消費地の近くで段階的に下げる。この上げ下げができるのは交流だからで、直流では簡単にいきません。
例:電圧降下も減る
損失だけでなく、届く電圧も問題になります。線の抵抗による電圧降下です。
を 、 で送る場合、電流は 。
に対して なので、1\ \mathrm{%} の低下で済みます。
で送ると 。送り出した電圧と同じだけ下がるので、先には何も届きません。
家庭の電圧が低い理由
送電の効率だけを見れば、電圧は高いほうがよいことになります。それでも家庭では が使われています。
高い電圧ほど絶縁が難しく、感電の危険も大きくなるためです。送る距離が短ければ、電流が大きくても損失は小さく収まります。
線の抵抗が大きい。電圧を上げて電流を減らす
線の抵抗が小さい。安全のために電圧を下げる
例:線を太くする
損失を減らす道はもう 1 つあります。線の抵抗そのものを下げることです。
抵抗は断面積に反比例するので、直径を 倍にすれば断面積が 2 倍、抵抗は半分。損失も半分になります。
を で送る例なら、 を に下げて損失が から へ。
ただし銅やアルミの量が 2 倍になり、鉄塔にかかる重さも増えます。
例:損失を半分にする 2 つの手
同じ効果を電圧で出すなら、 倍に上げるだけで足ります。 を にする。
線はそのままなので、材料は増えません。変圧器の絶縁を強くする必要はありますが、線を全長にわたって太くするより安く済みます。
の 2 乗で効く。線の材料は増えないが、絶縁と安全の設計が要る
断面積に反比例するだけ。確実に効くが、材料と重さがそのまま増える
長い距離ほど、線を太くする費用が積み上がります。距離が伸びるほど電圧を上げる側が有利になる。
例:段階的に下げる
発電所で上げた電圧を、消費地へ近づくにつれて何段階かで下げていきます。
長い区間ほど高い電圧、短い区間ほど低い電圧。それぞれの区間で が小さく収まるように選ばれます。
各段の変圧器にも損失がありますが、送電線で捨てるぶんに比べれば小さい。段数を増やしてでも電圧を合わせるほうが得になります。
検算のしかた
損失の割合が 100\ \mathrm{%} を超えていないかを見ます。超えたなら、その条件では送れません。
電圧を 倍にしたとき、損失が 分の 1 になっているかも確かめます。なっていなければ、電流の 2 乗を落としています。
損失と電圧降下の両方を出すのも手です。 と は同じ値になります。
を抵抗 の線で送ります。電圧を から に上げると、損失はどうなりますか。
- から へ
- から へ
- から へ
送る電力を電圧で割って電流にする。そこから 2 乗するので、電圧の効きめが 2 乗になって返ってきます。
















5.0 kV なら電流は 10 A で、損失は 102×8.0=800 W。電圧を 10 倍にすると電流は 1.0 A になり、損失は 100 分の 1 の 8.0 W です。