レール上の導体棒と誘導電流(速さに比例する制動力)
の磁場に置いた 幅のレールで、導体棒を の力で押し続けます。速さは で頭打ちになります。
いくら押しても、それ以上は速くなりません。速くなるほど電流が増え、押し戻す力が強くなるためです。
棒は自分でブレーキを作っています。しかもその強さが、自分の速さにちょうど比例している。
動く棒に生まれる起電力
磁場の中を横切る導体棒には、速さに比例した起電力が生まれます[1]。
はレールの間隔、 は棒の速さ。回路の抵抗を とすれば、流れる電流も出ます。
電流が受ける力
その電流は磁場の中にあるので、力を受けます[2]。
向きは運動を妨げる側です[3]。速さ に比例するので、速くなるほど強くなります。
速さから起電力を出す
起電力を抵抗で割って電流を出す
電流から力を出し、運動方程式に入れる
運動方程式
外から一定の力 で押す場合、棒の運動方程式は次の形です。
右辺の第 2 項が速さとともに育ち、いずれ と等しくなる。そこで加速度が になります。
例:一定の力で押す
、、、 とします。
そのときの起電力は 、電流は 。
磁場から受ける力は で、押す力とちょうど等しくなりました。
エネルギーはすべて熱になる
終端速度に達したあとは、運動エネルギーが増えません。外力がした仕事は、どこへ行くのか。
抵抗で消える電力を出します[1]。
外力の仕事率も出します。
一致しました。押した仕事がそのまま抵抗の熱に変わっています。
終端速度に達したあとは、押した仕事が 1 秒あたり全部熱になる 状態です。
加速していないので運動エネルギーは増えない。入ったぶんがそのまま出ていく。
例:鉛直レールを落ちる
レールを鉛直に立て、質量 の棒を静かに放します。押す力の代わりに重力が働く形です。
ほどで一定になります。自由落下なら 秒で届く速さですが、ここから先は増えません。
抵抗を大きくすると終端速度も大きくなる。 が分子にあるためです。回路を切れば電流が流れず、ふつうの自由落下に戻ります。
例:初速を与えて放す
外力なしで、 の初速を与えて手を放します。ブレーキだけが働くので減速する。
速さに比例して減るので、指数関数で落ちていきます。時定数は次のとおり。
で速さが 37\ \mathrm{%} まで落ちます。完全に止まるまでには時間がかかりますが、実質的には ほどで止まる。
止まるまでに進む距離
減速のあいだに進む距離は、積分しなくても出せます。運動量の変化と力積を結びつけます。
速さが から まで落ちるので、次のようになります。
進んで止まります。このあいだに出た熱は、はじめの運動エネルギーと同じ 。
| 状況 | つり合う条件 | 終端速度 |
|---|---|---|
| 一定の力で押す | ||
| 鉛直に落ちる | ||
| 外力なし | つり合わない | へ近づく |
例:レールに傾きをつける
に傾けたレールに、質量 の棒を置きます。磁場はレール面に垂直とします。
斜面方向に働くのは重力の成分 。これがブレーキと釣り合う点が終端速度です。
鉛直に落とした場合のちょうど半分になりました。 がそのまま効いています。
傾きを浅くするほど終端速度は下がる。水平にすれば で、動き出しません。
例:抵抗を変えて比べる
同じ配置で抵抗だけを から へ増やします。
終端速度は に比例するので 倍の 。抵抗を上げるとブレーキが弱くなります。
電流は で、 が 倍、 も 倍なので同じ値のまま。終端では電流が になり、抵抗が入りません。
終端速度は上がる。電流と発熱の総量は変わらない
終端速度は下がる。 の 2 乗で効くので、変化が急になる
例:磁石の落下との対比
銅パイプの中を磁石が落ちるときも、同じ形の式が働いています。
パイプに生まれる渦の電流が磁石を押し戻し、速さに比例するブレーキになる。終端速度で落ち着く点まで同じです。
違うのは電流の通り道です。レールでは回路が 1 本の輪、パイプでは金属の中に無数の輪ができる。抵抗の値を書き下せないだけで、仕組みは変わりません。
検算のしかた
終端速度を式に戻して、2 つの力が等しくなるかを見ます。ならなければ、どこかで や の乗数を落としています。
の 2 乗にも気をつけます。起電力で 1 回、力で 1 回、合わせて 2 乗になる形です。
エネルギーの確認も早い。終端速度では と が一致するはずです。
、、 のレールで、導体棒を で押します。終端速度はどれですか。
速さから起電力、起電力から電流、電流から力。この 3 段をたどれば、あとはふつうの運動方程式になります。
















B2L2=0.16×0.25=0.040 なので、v=0.0400.80×0.20=4.0 m/s です。10 m/s は BL を 1 乗のまま扱った場合の値になります。