10 A を流した直線の導線から 10 cm 離れた点の磁場は 2.0×10−5 T です。
同じ電流を半径 10 cm の輪にすると、中心の磁場は 6.3×10−5 T。ちょうど π 倍になります。
1 m あたり 1000 回巻いたソレノイドなら 1.3×10−2 T。輪 1 個の 200 倍です。
覚える式は 3 つ
高校で使う磁場の式は、形の違う 3 つだけです。
B直線=2πrμ0I,B円形=2Rμ0I,Bソレノイド=μ0nI
μ0 は真空の透磁率で、4π×10−7 T⋅m/A[1]。2π で割る場面が多いので、2πμ0=2×10−7 を覚えておくと計算が速くなります。
距離の効き方が違う
直線電流の式には r が入っているので、離れれば弱まります。2 倍離れれば半分。
円形電流の式の R は、測る位置ではなく輪の大きさです。中心の値しか与えません。
ソレノイドの式には距離がまったく入りません。内部ならどこでも同じ値になる[3]。
例:直線電流
I=10 A、r=0.10 m とします[1]。
B=2π×0.104π×10−7×10=2×10−7×0.1010=2.0×10−5 T
π が約分で消えるので、2×10−7 に電流を掛けて距離で割るだけ。
1 m 離れれば 2.0×10−6 T、1 cm まで近づけば 2.0×10−4 T です。
例:円形電流の中心
半径 R=0.10 m の輪に 10 A を流します[2]。
B=2×0.104π×10−7×10=6.3×10−5 T
直線のときの π 倍でした。式を比べると、分母の 2πr が 2R に変わっているだけと分かります。
輪の全体から寄与が集まるので、同じ距離の直線 1 本より強くなる。ただし π 倍にとどまります。
N 回巻いたコイルなら、そのまま N 倍です。
B=2Rμ0NI
例:ソレノイド
1 m あたり n=1000 回、電流 10 A とします[3]。
B=4π×10−7×1000×10=1.3×10−2 T
輪 1 個の 200 倍になりました。長さ 1 m に 1000 回巻けば、それだけの輪が重なるためです。
ソレノイドの n は、巻数そのものではなく 1 m あたりの巻数 です。
全体で 500 回でも、長さが 0.25 m なら n=2000。長さを見落とすと桁が変わる。
重ね合わせで足す
電流が複数あるときは、それぞれが作る磁場をベクトルとして足します[4]。
電場のときと同じ考え方です。違うのは向きの決め方で、磁場は電流を右手でにぎった指の向きになります[5]。
例:平行な 2 本の中点
0.20 m 離れた 2 本の導線に、それぞれ 10 A を流します。中点は両方から 0.10 m です。
同じ向きに流した場合、中点では 2 つの磁場が正反対を向きます。大きさが等しいので合成は 0。
逆向きに流すと、中点で同じ向きにそろいます。
B=2×2.0×10−5=4.0×10−5 T
電流の向きを 1 つ変えただけで、0 が最大値に変わりました。
例:直交する 2 本
同じ平面上で直角に交わる 2 本の導線を考えます。交点から等距離の点では、2 つの磁場が直角に交わる。
どちらも 2.0×10−5 T なら、合成は 2 倍です。
B=2×2.0×10−5=2.8×10−5 T
平行のときのように打ち消し合ったり 2 倍になったりはしません。角度に応じた合成になります。
| 配置 | 中点や交点での合成 | | 平行で同じ向き | 0 |
| 平行で逆向き | 4.0×10−5 T |
| 直交 | 2.8×10−5 T |
検算のしかた
μ0 の 4π と分母の 2π が約分できているかを見ます。直線の式では π が残りません。
桁の見当も立ちます。10 A 程度の電流を 10 cm 離れて測れば 10−5 T の桁。ソレノイドの中でようやく 10−2 T に届きます。
ソレノイドでは、巻数を長さで割ったかを確かめます。n の単位は m−1 です。
円形電流の式の R を、測る点までの距離だと考える。輪の半径です。
ソレノイドの n に、全体の巻数をそのまま入れる。
直線の式で 2π を 2 と書く。π 倍ずれます。
μ0 を 4×10−7 とする。4π×10−7 です。
複数の電流があるとき、大きさだけを足して向きを見ない。
1 m あたり 2000 回巻いたソレノイドに 5.0 A を流します。内部の磁場はどれですか。
- 1.3×10−2 T
- 1.3×10−5 T
- 2.5×10−3 T
__RESULT__
B=μ0nI=4π×10−7×2000×5.0=1.3×10−2 T です。μ0 の π を落とすと 2.5×10−3 になり、4 倍近くずれます。
配置を見て式を選び、文字が距離か大きさかを確かめる。この 2 段で、磁場の計算はほとんど片づきます。
参考
Magnetic Field of a Current Loop. University Physics Volume 2, OpenStax. Richard Fitzpatrick. *Magnetic Field of a Solenoid*. Electromagnetism and Optics, The University of Texas at Austin. Étienne Thibierge. *Champ magnétique, théorème d'Ampère*. Cours 17, PT, Lycée Blaise Pascal. *Versuch E9: Biot-Savart-Gesetz und Ampèresches Gesetz*. Physikalisches Grundpraktikum, Universität Greifswald.
$10\ \mathrm{A}$ の直線電流から $10\ \mathrm{cm}$ で $2.0 \times 10^{-5}\ \mathrm{T}$、同じ電流を半径 $10\ \mathrm{cm}$ の輪にすると $\pi$ 倍の $6.3 \times 10^{-5}\ \mathrm{T}$、$1\ \mathrm{m}$ に $1000$ 回巻けば $1.3 \times 10^{-2}\ \mathrm{T}$。式の中の文字が測る距離なのか輪の大きさなのかを見分けるだけで、当てる式が決まります。$\mu_0 / 2\pi = 2 \times 10^{-7}$ を覚えておくと $\pi$ が消えて計算が速い。ソレノイドの $n$ が 1 m あたりの巻数であること、平行な 2 本の中点で向き 1 つの違いが $0$ と最大値を分けることまで。
B=μ0nI=4π×10−7×2000×5.0=1.3×10−2 T です。μ0 の π を落とすと 2.5×10−3 になり、4 倍近くずれます。