静電気の位置エネルギー(電荷の対ごとに足し上げる)
一辺 の正三角形の頂点に を 3 個そろえるには、 の仕事が要ります。
1 個目は 、2 個目は 、3 個目は 。運ぶ順に増えていって、合計が になります。
同じ値が、対を数えるだけでも出ます。3 個の電荷が作る対は 3 つ。1 対あたり です。
2 個のときの位置エネルギー
無限に離れた 2 個の電荷を、距離 まで近づけるのに要る仕事が位置エネルギーです[1]。
電場や力の式と違い、絶対値が付きません。符号をそのまま代入します。
同符号なら正で、近づけるのに外から仕事が要る。異符号なら負で、放っておいても勝手に近づきます。
分母が の 1 乗になっている点も違います。力の式は でした。
。向きを持ち、大きさに絶対値が付く
。向きを持たず、符号がそのまま意味を持つ
対の数だけ足す
電荷が 3 個以上あるときは、作れる対をすべて数えて足します[1,2]。
と書いてあるのは、同じ対を 2 回数えないためです。 と の対と、 と の対は同じもの。
対の数は組み合わせで決まります。
| 電荷の個数 | 対の数 | 式 |
|---|---|---|
個数が増えると、対の数はその 2 乗に近い速さで増える。 個なら 対です。
例:正三角形の 3 頂点
一辺 、電荷はすべて とします。
1 対あたりの値を出します。
3 対とも同じ距離なので、 倍して 。
順に運んでくる
対を数える方法と、1 個ずつ運ぶ方法は同じ答えを出します[2]。
1 個目を運ぶとき、まわりには何もありません。仕事は 。
2 個目を運ぶとき、相手は 1 個。 が要ります。
3 個目を運ぶとき、相手は 2 個。 です。
足すと 。 個目を運ぶときの相手は 個なので、合計は という数え方になります。
線が 1 本増えるたびに、その本数ぶんの仕事が積み上がります。線の数がそのまま対の数です。
例:正方形の 4 隅
一辺 の正方形に を 4 個。対は 6 つですが、距離が 2 種類あります。
辺でつながる対が 4 つで、距離は 。対角線でつながる対が 2 つで、距離は 。
対角線の対は距離が 倍なので、寄与は 倍。数えるだけでなく、距離で仕分ける手間が入ります。
正方形では、対の距離が 2 種類しかない ところが計算を軽くしています。
一般の四角形なら 6 つの対がすべて違う距離になる。対称な図形ほど、まとめて処理できる対が増える。
例:符号が混ざると負になる
同じ正方形で、対角どうしを同符号にします。左上と右下が 、右上と左下が 。
辺でつながる 4 対はすべて異符号なので、負の寄与。対角線の 2 対は同符号で、正の寄与です。
負になりました。この配置を作るのに仕事は要らず、逆に だけエネルギーが出てきます。
ばらばらにするには、外から を与えなければならない。負の位置エネルギーは、束縛されている状態を表します。
例:1 個を無限遠へ運ぶ
正三角形の配置に戻り、頂点の 1 つを無限に遠くへ持っていきます。
その電荷が関わっていた 2 つの対が消えます。残るのは 1 対だけ。
位置エネルギーが減るので、外から仕事を加える必要はありません。逆に が運動エネルギーとして出てきます。
同符号どうしは離れたがる。手を放せば、そのエネルギーぶんだけ加速して飛んでいきます。

例:重心に 1 個足す
正三角形の重心に をもう 1 個運びます。
重心から頂点までは 。新しくできる対は 3 つで、どれも同じ距離です。
全体では になりました。中心は 3 つの電荷すべてに近いので、1 個ぶんとしては最も高くつく場所です。
電位で書き直す
対を数える代わりに、各電荷の場所の電位を使う書き方もあります[2]。
は、 自身を除いた残りの電荷が の位置に作る電位です。前に が付くのは、この足し方だと各対を 2 回数えてしまうため。
正三角形で試します。1 つの頂点には、残り 2 個からの電位が届いています。
で、3 頂点ぶんは 。半分にして です。
対を数える方法と一致しました。電荷の数が多いときは、こちらのほうが手数が少なくなります。
例:1 個だけ動かす仕事
正方形の 4 隅に を置いた状態から、1 個を正方形の中心へ動かします。
動かす電荷が関わる対だけを見ればよく、残り 3 個どうしの対は変わりません。
動かす前は、辺でつながる 2 対が ずつ、対角線の 1 対が 。合わせて です。
動かしたあとは、中心から 3 頂点までがどれも 。
差は 。中心へ押し込むには、これだけの仕事が要ります。
同符号の中へ割り込む形なので、エネルギーは上がる。動かさない 3 個の対を計算に入れずに済むところが、この解き方の利点です。
経路は関係ない
運ぶ道すじをどう選んでも、必要な仕事は変わりません[3]。
まっすぐ運んでも、大回りしても、いったん遠ざけてから戻しても同じ。静電気力が保存力だからです。
だから「1 個ずつ順に運ぶ」という都合のよい道順で計算してよく、答えは対を数えた値と一致します。
検算のしかた
符号の見当をまず立てます。同符号ばかりなら正、異符号ばかりなら負。混ざっている場合は、距離の近い対がどちらかで決まります。
対の数え落としもよく起きます。 個なら 個あるはずなので、足した項の数を数えて確かめる。
けたの確認も要ります。 どうしの積は 。 の と合わせて の位から始まります。
一辺 の正三角形の頂点に、 を 2 個と を 1 個置きます。全体の位置エネルギーはどれですか。
対を数え、距離で仕分け、符号をそのまま掛ける。この 3 手で、電荷が何個並んでも位置エネルギーが出ます。















3 つの対のうち、同符号は 1 対で +0.12 J、異符号は 2 対で −0.24 J です。足して −0.12 J になります。距離はすべて同じなので、符号の数え方だけで決まります。