交流の力率と消費電力:有効電力と皮相電力
の交流に が流れています。掛け算すれば ですが、実際に消費されているのは です。
差の は、どこかで失われているわけではありません。行って戻ってきているだけです[1]。
交流では、電圧と電流の山がずれます。そのずれの分だけ、掛け算の値が目減りする。
平均の電力
交流の消費電力は、実効値の積に を掛けた値になります[1]。
は電圧と電流の位相のずれで、 を力率といいます。
抵抗だけの回路ではずれが なので 。掛け算がそのまま消費電力になります。
コイルとコンデンサーは熱を出さない
純粋なコイルでは電流が電圧より 遅れ、純粋なコンデンサーでは 進みます。
どちらも なので、平均の電力は です[1]。
半周期のあいだにエネルギーを受けとり、次の半周期でそっくり返す。差し引きで何も消費していません。
受けとったエネルギーは熱になって出ていく。返ってこない
磁場や電場としていったん蓄え、次の半周期で回路へ返す
例:抵抗とコイルの直列
と、リアクタンス のコイルを直列にし、 を掛けます。
合成のインピーダンスは、直角三角形の斜辺として出ます。
電流は 。力率はインピーダンスの比で決まります。
力率は インピーダンスの三角形の底辺と斜辺の比 です。
底辺が 、高さが 、斜辺が 。位相のずれを測らなくても、抵抗とリアクタンスから読める。
抵抗で消える電力と一致する
別の道からも確かめられます。熱になるのは抵抗だけなので、そこでの消費を出します[3]。
同じ値でした。 と は、いつも一致します。
コイルのほうも計算してみます。 ですが、これは熱になりません。行き来しているだけの量です。
| 呼び名 | 式 | 今回の値 |
|---|---|---|
| 見かけの電力 | ||
| 実際に消費する電力 | ||
| 行き来するだけの量 |
見かけの電力は で、 と の直角三角形の斜辺になっています。。
力率が低いと送る側が損をする
消費側が しか使わなくても、線には が流れます。
力率が なら、同じ を で送れる。線の損失は電流の 2 乗で効くので、差が大きくなります[2]。
送電線の抵抗を とします。
倍の損失です。使う側は同じ電力しか受けとっていないのに、途中で捨てる量が増えている。
力率を上げる
コイル性の負荷にコンデンサーを組み合わせると、位相のずれを打ち消せます。
直列の場合、 にすればリアクタンスが消えて 。力率は になります。
工場のモーターはコイル性なので、コンデンサーを並列に足して力率を改善する形がよく使われます。
例:力率が 0 に近い場合
、 とします。 で、力率は 。
を掛ければ電流は 流れますが、消費電力は しかありません。
見かけ上は の負荷に見えて、実際に使っているのは 。線には がそのまま流れ続けます。
送る側から見れば、ほとんど何も届けていないのに線を占有されている状態です。
検算のしかた
が から のあいだに入るかを見ます。外れたら と をとり違えています。
2 通りの式で計算して一致するかも確かめます。 と です。
インピーダンスの三角形も確かめられる。 が成り立っていれば、途中の計算が合っています。
とリアクタンス のコイルを直列にし、 の交流を掛けます。消費電力はどれですか。
熱にするのは抵抗だけ。この 1 点を押さえれば、 が何を削っているかが見えてきます。
















Z=602+802=100 Ω、I=2.0 A、cosϕ=0.60 です。P=200×2.0×0.60=240 W で、I2R=4×60=240 W とも一致します。400 W は力率を掛け忘れた値になります。