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English

50 キロボルトで 12 メガ電子ボルトまで届く(サイクロトロンの周回数)

の交流電圧で、陽子を まで加速できます。 倍のエネルギーを、同じ隙間を何度も通らせて稼ぎます。

の磁場と半径 の装置なら、 周でそこに届く。かかる時間は です。

同じ周波数のまま押し続けられるのは、磁場の中の円運動の周期が速さによらないためです[1]

隙間でだけ加速する

サイクロトロンは、半円形の 2 つの電極を向かい合わせた装置です。装置全体が一様な磁場の中に置かれています。

電極の内側には電場がありません。粒子はそこで円運動をするだけ。

加速が起きるのは、2 つの電極のあいだの隙間だけです。そこを通るたびに電位差を渡り、 のエネルギーを受けとる[2]

隙間で だけ加速する

電極の中で半円を描いて戻ってくる

電圧の向きが反転したところで、また隙間を通る

周期が変わらないから合わせられる

加速のたびに粒子は速くなり、描く円は大きくなります。それでも半周にかかる時間は変わりません[1]

速さが式に入っていないので、何周目でも同じ。だから電圧の向きを一定の周期で反転させておけば、いつでも加速の向きに間に合います。

この周波数を共鳴周波数といいます。

例:陽子の共鳴周波数

、陽子の質量 で計算します。

。短波ラジオと同じ帯域です。この周波数の交流を電極に掛けておけば、加速が続きます。

電子で同じことをすると、質量が 分の 1 なので周波数は 。電子用のサイクロトロンが作りにくいのは、この高さのためです。

最大エネルギーは半径で決まる

粒子をとり出すのは、円が装置のふちに届いたときです。そのときの半径 が上限になります。

半径の式を速さについて解きます。

これを運動エネルギーの式に入れます[2]

加速電圧が式に入っていません。上限を決めるのは磁場の強さと装置の大きさだけです。

加速電圧を上げても、最終的なエネルギーは変わりません

1 周で受けとる量が増えるので、同じエネルギーに達するまでの回数が減るだけ。かかる時間は短くなる。

例:12 MeV まで加速する

とします。

電子ボルトに直します。 で割ると 、つまり [3]

そのときの速さは で、光速の 16\ \mathrm{%} です。

何周すればよいか

1 周のあいだに隙間を 2 回通るので、受けとるエネルギーは 。加速電圧が なら 周で です。

周。1 周にかかる時間は共鳴周波数の逆数の なので、全体では次のとおり。

に届きます。加速電圧を に上げれば 周、 で済む。

加速電圧1 周あたり必要な周回数かかる時間

半径の伸び方は平方根

エネルギーは 1 周ごとに一定量ずつ増えます。半径のほうはそうなりません。

から、 です。 回目の半円の半径は に比例する。

はじめのうちは円が急に広がり、外側へ行くほど間隔が詰まります。渦巻きの間隔が外側で狭く見えるのは、この形のためです。

エネルギー

1 周ごとに ずつ、一定の割合で増える

半径

回数の平方根でしか伸びない。外側ほど 1 周あたりの広がりが小さい

例:アルファ粒子を加速する

電荷が 、質量が陽子の 倍のアルファ粒子を同じ装置に入れます。

共鳴周波数は に比例するので、 倍の

最大エネルギーは に比例します。

陽子と同じでした。 まで加速できます。ただし核子 4 個で分け合うので、核子あたりでは にとどまる。

電荷の 2 乗が効く一方で質量も増えるため、比電荷が の粒子では両者が打ち消し合います。

半径の伸び方を図で見る

周の時点で、半径はもう最大の半分に達しています。 だからです。

エネルギーのほうは で、まだ 4 分の 1。外側へ行くほど、1 周あたりの広がりが小さくなります。

装置を大きくするか磁場を強くするか

にも にも比例します。どちらを 2 倍にしても、エネルギーは 4 倍。

違いは共鳴周波数のほうに出ます。 を 2 倍にしても周波数は変わりませんが、 を 2 倍にすると周波数も 2 倍になる。

電源側の負担を考えると、大きく作るほうが楽です。ただし磁石の重さと費用が効いてくるので、実際には両方の兼ね合いで決まります。

相対論が壁になる

速さが光速に近づくと、質量が増えたように振る舞います。周期の式の が変わるので、共鳴が崩れる。

陽子のサイクロトロンでは、 ほどが上限とされています[2]。それ以上を狙うなら、周波数を下げていく仕組みが要ります。

は静止エネルギー 1.3\ \mathrm{%} ほど。まだ古典的な扱いで足ります。

検算のしかた

共鳴周波数の式に速さや半径が入っていないかを見ます。入っていれば式が違います。

最大エネルギーの式に加速電圧が入っていないかも確かめます。入るのは の 4 つだけです。

の換算も忘れやすい。 で割ると 、さらに で割ると になります。

加速電圧を上げれば最終エネルギーが上がると考える。
最大エネルギーの式で、半径を 1 乗のまま扱う。2 乗です。
1 周で 1 回だけ加速されると考える。隙間を 2 回通ります。
共鳴周波数を、周回数が増えるにつれて変えるものだと考える。
半径がエネルギーに比例して伸びると考える。平方根です。

磁場を に強めると、サイクロトロンからとり出せる最大エネルギーはどうなりますか。

  • 4 倍になる
  • 2 倍になる
  • 変わらない
__RESULT__

の 2 乗に比例するので、 倍です。共鳴周波数も 倍になるため、電極に掛ける交流の周波数を上げる必要があります。

周期が速さによらない、という 1 点だけで装置が成り立っています。あとは磁場と半径が上限を決め、電圧は到達までの時間を決めるだけです。

参考

Motion of a Charged Particle in a Magnetic Field. University Physics Volume 2, OpenStax.
Applications of Magnetic Forces and Fields. University Physics Volume 2, OpenStax.
Electron volt. CODATA 2022, National Institute of Standards and Technology.
$1.0\ \mathrm{T}$、半径 $0.50\ \mathrm{m}$ の装置で陽子を $12\ \mathrm{MeV}$ まで加速できます。$50\ \mathrm{kV}$ の電圧でも $120$ 周させれば届き、かかる時間は $7.9\ \mu\mathrm{s}$。同じ周波数のまま押し続けられるのは、円運動の周期が速さによらないためです。共鳴周波数は $qB/(2\pi m)$ で陽子なら $15\ \mathrm{MHz}$。最大エネルギー $q^2B^2R^2/(2m)$ には加速電圧が入らず、電圧は到達までの時間だけを決めます。半径が周回数の平方根でしか伸びないこと、アルファ粒子でも $12\ \mathrm{MeV}$ になることまで。