α=3+2−6 のノルム、トレース、最小多項式を求めてください。
α を掛ける写像を行列にします。基底は {1,−6}。
α⋅1=3+2−6 なので 1 列目は (3,2)。α⋅−6=3−6+2⋅(−6)=−12+3−6 なので 2 列目は (−12,3)。
[μα]=(32−123)
対角の和が 6、行列式が 9+24=33。トレースが 6、ノルムが 33 です[1]。
最小多項式は特性多項式から読めます。X2−Tr(α)X+N(α)=X2−6X+33。α∈/Q なので、これがそのまま最小多項式です[1]。
検算します。共役 αˉ=3−2−6 との和が 6、積が 9−4⋅(−6)=33。行列から出した値と一致します。
列の作り方を言葉にすると
手順は 1 つだけです。基底の各元に α を掛け、結果を基底で書き直して係数を縦に並べる[2]。
行と列をとり違えると転置行列になります。行列式は変わりませんが、トレースも変わらないので実害は出ません。それでも手順を固定しておくほうが安全です。
3 次体で同じことをする
K=Q(32) で α=1+θ(θ=32)のノルムとトレースを求めてください。
基底は {1,θ,θ2} です。θ3=2 を使って書き直します。
α⋅1=1+θ、α⋅θ=θ+θ2、α⋅θ2=θ2+θ3=2+θ2。
[μα]=110011201
対角の和は 3。行列式は 1⋅(1−0)−0⋅(1−0)+2⋅(1−0)=3 です。
答えは Tr(α)=3、N(α)=3。
別の道でも確かめられます。θ=α−1 に θ3=2 を入れると (α−1)3=2、展開して α3−3α2+3α−3=0。X2 の係数が −3 なのでトレースが 3、定数項が −3 なので N=(−1)3⋅(−3)=3 です[1]。
| Tr は Xn−1 の係数の符号を変えたもの | −cn−1 |
| N は定数項に符号を掛けたもの | (−1)nc0 |
| どちらも基底のとり方によらない | 相似変換で不変だから |
単数かどうかを行列式で見る
Z[7] で 8+37 が単数かを判定してください。
7⋅37=21 が右上に来ます。
[μα]=(83218)
行列式は 64−63=1。Z で 1 は可逆なので、8+37 は単数です[2]。
判定はいつもこの形です。b が B で可逆であることと、N(b) が A で可逆であることが同値になる[2]。A=Z なら N=±1 が条件です。
逆元も行列から出ます。行列式が 1 なので、逆行列は余因子だけで書けます。
[μα]−1=(8−3−218)
1 列目が (8,−3) なので、逆元は 8−37 です。
次数が下がると特性多項式が重なる
K=Q(2,3) で NK/Q(2) を求めてください。
−2 と答えたくなります。2 の最小多項式が X2−2 で、定数項が −2 だからです。
ところが [K:Q]=4 で、2 が生成するのは次数 2 の部分体だけ。特性多項式は最小多項式の 24=2 乗になります[1]。
χ(X)=(X2−2)2=X4−4X2+4
定数項が 4 で次数が偶数なので N=4。トレースは X3 の係数が 0 なので 0 です。
一般には NL/K(α)=(−1)nc0n/d、TrL/K(α)=−dncd−1 になります[1]。n が全体の次数、d が α の次数です。
共役の和と積で書くときも、各共役をn/d 回ずつ数える必要があります[1]。
2 の共役は ±2 の 2 つだが、4 次体では 2 回ずつ現れて合計 4 個になる。
トレース形式から判別式を出す
Z[32] の判別式を求めてください。
(x,y)↦Tr(xy) を基底 {1,θ,θ2} で行列にします[2][3]。成分は Tr(θi+j) です。
Tr(1)=3、Tr(θ)=0、Tr(θ2)=0、Tr(θ3)=Tr(2)=6、Tr(θ4)=Tr(2θ)=0。
(Tr(θi+j))=300006060
行列式は 3⋅(0−36)=−108。T3−2 の判別式 −4⋅03−27⋅(−2)2=−108 と一致します。
−108=−22⋅27 なので、Q(32) で分岐するのは 2 と 3 だけです[3]。
K=Q(32) で α=5 のノルムはいくつですか。
__RESULT__
有理数 c を掛ける写像の行列は cIn です。行列式は cn、対角の和は nc になります。n=3 なので N(5)=125、Tr(5)=15 です。5 という答えは 1 次体のつもりで計算したものになります。
基底の像を書き直して列に並べる。この 1 手で、ノルムもトレースも最小多項式も単数の判定も、行列の計算に落ちます。
出典
$3 + 2\sqrt{-6}$ を掛ける写像を基底 $\{1, \sqrt{-6}\}$ で行列にすると、対角の和が $6$、行列式が $33$ と出ます。$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$ で $1 + \theta$ なら $3$ 次の行列になり、トレースもノルムも $3$。$8 + 3\sqrt{7}$ は行列式が $1$ なので単数で、逆行列の 1 列目から $8 - 3\sqrt{7}$ が読めます。$\mathbb{Q}(\sqrt{2},\sqrt{3})$ で $N(\sqrt{2})$ が $-2$ でなく $4$ になるわけ、トレース形式の行列式から判別式 $-108$ を出すところまで。解答は各問のすぐ後に置いています。
有理数 c を掛ける写像の行列は cIn です。行列式は cn、対角の和は nc になります。n=3 なので N(5)=125、Tr(5)=15 です。5 という答えは 1 次体のつもりで計算したものになります。