Z7 の中に 2 の平方根はあるでしょうか。あるなら 74 を法とする値まで求めてください。
f(X)=X2−2 とし、まず F7 で根を探します。32=9≡2(mod7) なので a=3 が根。
f′(3)=6 で、6≡0(mod7)。ヘンゼルの補題の条件がそろいました[1]。α≡3(mod7) を満たす α∈Z7 で α2=2 となるものが、ただ 1 つ存在します[1]。
桁を 1 つずつ伸ばす
x1=3 から始め、xk+1=xk+7kt とおいて t を決めます。
x2=3+7t のとき (3+7t)2−2=7+42t+49t2。72 を法として 7+42t≡0、両辺を 7 で割って 1+6t≡0(mod7)。
6t≡−1≡6 なので t≡1。x2=10 です。検算すると 102−2=98=2⋅49 で、49 で割り切れます。
x3=10+49t では (10+49t)2−2=98+980t+⋯。49 で割って 2+20t≡0(mod7)、つまり 6t≡5。6 の逆元は 6 なので t≡30≡2、x3=108。
1082−2=11662=34⋅343 なので、343 を法として合っています。
x4=108+343t では 34+216t≡0(mod7)。34≡6、216≡6 なので 6+6t≡0、t≡6。x4=108+2058=2166 です。
| k | xk | 7 進の新しい桁 | | 1 | 3 | 3 |
| 2 | 10 | 1 |
| 3 | 108 | 2 |
| 4 | 2166 | 6 |
答えは α=3+1⋅7+2⋅72+6⋅73+⋯。桁が 1 つずつ確定していきます。
どの素数なら 2 が入るか
Qp に 2 の平方根が入る奇素数をすべて挙げてください。
出発点になる根が Fp に要ります。f′(a)=2a は a=0 なら 0 でないので、根さえあれば必ず持ち上がる。
つまり条件は「2 が p を法とする平方剰余」だけです。補充法則から p≡±1(mod8) になります。
| 入る | 7,17,23,31,41,47,… |
| 入らない | 3,5,11,13,19,29,37,… |
−1 の平方根なら条件が変わります。p≡1(mod4) のときだけ入るので、5,13,17,29,37,41,53 と並ぶ。
p=5 で追ってみます。22=4≡−1 なので a=2 から始め、7、57、182、2057 と伸びます。5 進展開は 2+1⋅5+2⋅25+1⋅125+⋯ です。
条件が破れる 2 通り
2 が Q3 に入らないことを示してください。
3 を法とする平方数は 0 と 1 だけ。2 が入らないので x2≡2(mod3) に解がありません。持ち上げる出発点そのものがない。
p=2 では別の壊れ方をします。f′(X)=2X が F2 上で恒等的に 0 なので、f′(a)≡0 という条件を誰も満たしません。
実際 2∈/Q2 です。v2(2)=1 が奇数なので、v2(α2)=2v2(α) が 1 になりようがない。
根がない場合
Fp に解がなく、出発点が作れない。2 と p=3
微分が消える場合
根はあるが f′(a)≡0 で、次の桁が決まらない。p=2 の平方根
p=2 でも、条件を強めたヘンゼルの補題なら扱えます[1]。∣f(a)∣p<∣f′(a)∣p2 という形にすると、微分が消えかけていても持ち上がる場合がある。
有理数を p 進で書く
31 の 7 進展開を求めてください。
3 の逆元は F7 で 5 です。3⋅5=15=2⋅7+1 だから。だから最初の桁は 5。
次を出します。31=5+7y とおくと 1=15+21y、つまり 21y=−14、y=−32。この y の最初の桁は −2⋅5=−10≡4(mod7)。
同じ計算がくり返され、y の残りもまた −32 になります。桁は 4 が並び続ける。
31=5+4⋅7+4⋅72+4⋅73+⋯
検算します。5+4⋅7+4⋅49+4⋅343=1601 で、3⋅1601=4803=2⋅2401+1。74 を法として 1 になります。
Z7 の中では 31 が整数です。分母が 7 と互いに素なら ∣1/3∣7=1 となり、Zp に入ります[3]。
分母が 7 を含むと外へ出ます。71 は ∣1/7∣7=7 なので Q7 の元ではあっても Z7 には入りません。
Zp の可逆元は∣x∣p=1 の元です[3]。
つまり p で割り切れない元がすべて可逆。31 が整数に見えるのはこのため。
Q の完備化はこれで全部
Q 上の自明でない絶対値は、通常の絶対値のべきか p 進絶対値のべきに限られます[2]。オストロフスキーが 1916 年に示しました[2]。
だから完備化は R か Qp しかありません[2]。素数ごとに 1 つずつ、それに実数を足した並びで尽きます。
2 は R に入り、Q7 にも入り、Q3 には入らない。どの完備化で解けるかが素数ごとに変わるところが、局所的に調べるという発想の出発点になります。
Q13 の中に −1 の平方根はありますか。
- ない。−1 は平方数ではないから
- ある。13≡1(mod4) だから
- ある。ただしヘンゼルの補題では作れない
__RESULT__
13≡1(mod4) なので −1 は 13 を法とする平方剰余です。52=25≡−1(mod13) で、f′(5)=10≡0(mod13)。ヘンゼルの補題の条件を満たすので、α2=−1 となる α∈Z13 が存在します。
Fp で根を探す、微分が消えないかを見る、桁を 1 つずつ決める。この 3 手で、p 進の世界に住む数を具体的に書き下せます。
参考
$3^2 \equiv 2 \pmod 7$ で $f'(3) = 6 \neq 0$ なので、$\mathbb{Z}_7$ に $\sqrt{2}$ が住みます。$x_{k+1} = x_k + 7^k t$ の $t$ を毎回 $1$ 次合同式で解くと $3, 10, 108, 2166$ と伸び、$7$ 進展開は $3 + 1 \cdot 7 + 2 \cdot 7^2 + 6 \cdot 7^3 + \cdots$。入る素数は $p \equiv \pm 1 \pmod 8$、$\sqrt{-1}$ なら $p \equiv 1 \pmod 4$ です。$p = 3$ は根がなく、$p = 2$ は $f'$ が消えるという別々の壊れ方をする。$\frac{1}{3} = 5 + 4 \cdot 7 + 4 \cdot 7^2 + \cdots$ という有理数の展開まで。
13≡1(mod4) なので −1 は 13 を法とする平方剰余です。52=25≡−1(mod13) で、f′(5)=10≡0(mod13)。ヘンゼルの補題の条件を満たすので、α2=−1 となる α∈Z13 が存在します。