Z[−6] で (2)、(3)、(5)、(7) を素イデアルの積に分けてください。
最小多項式は T2+6 です。−6≡2(mod4) なので整数環は Z[−6] で、指数が 1。どの素数でもデデキントの定理が使えます[1]。
F2 上では T2+6≡T2 なので 2 乗の形。(2)=(2,−6)2 です。
F3 上でも T2+6≡T2 なので (3)=(3,−6)2。
F5 上では T2+6≡T2+1 で、22=4≡−1 より根は 2 と 3。(5)=(5,−6−2)(5,−6+2) と 2 つに分かれます。
F7 上では T2+6≡T2−1=(T−1)(T+1)。(7)=(7,−6−1)(7,−6+1) です。
検算に判別式を使います。dK=−24=−23⋅3 なので分岐するのは 2 と 3 だけ[3]。上の答えで 2 乗が出たのがちょうどこの 2 つです。
7 には別の書き方もあります。N(1+−6)=1+6=7 なので (7)=(1+−6)(1−−6)。この 2 つの素イデアルは単項です。
(11) と (13) で分かれ目を見る
同じ環で (11) と (13) を分けてください。
F11 上で T2+6 の根を探します。−6≡5(mod11) で、11 を法とする平方数は 1,3,4,5,9。5 が入っているので根があります。
42=16≡5 なので根は 4 と 7。(11) は 2 つの素イデアルに分かれます。
F13 上では −6≡7。13 を法とする平方数は 1,3,4,9,10,12 で、7 が入りません。T2+6 は既約なので (13) は素イデアルのままです。
剰余体は F169 になり、f=2、g=1。ef の和は 2 で次数と合います。
Q(5) の 2 で引っかかる
Q(5) で (2) を分けてください。
T2−5 を F2 上で見ると T2−1=(T−1)2 です。分岐しているように読めます。
ところが 5≡1(mod4) なので整数環は Z[5] ではなく Z[21+5]。指数が 2 で、p=2 はその指数を割ります[1]。
デデキントの定理には p∤[OK:Z[α]] という条件が付いています[1]。2 はこの条件を外れるので、T2−5 から読んだ答えは信用できません。
正しい最小多項式は ω=21+5 の T2−T−1 です。F2 上で T2+T+1 になり、T=0,1 のどちらも根にならないので既約[1]。
答えは「(2) は素イデアルのまま」。判別式が 5 で 2 を含まないことからも、2 が分岐しないと分かります。
奇素数なら Z[d] の指数は 1 か 2 なので、T2−d で計算してよい[1]。
条件を確かめる必要があるのは p=2 のときだけ。d≡1(mod4) ならそこを別扱いにする。
3 次体で (5) を分ける
K=Q(32) で (5) を分けてください。
T3−2 の判別式は −4⋅03−27⋅(−2)2=−108 です。これが OK の判別式そのものなので指数は 1、どの素数でも定理が使えます。
F5 上で T3−2 の根を探します。03=0、13=1、23=3、33=2、43=4。T=3 が根です。
割り算すると T3−2=(T−3)(T2+3T+4) になります。2 次の因子の判別式は 9−16=−7≡3(mod5) で、5 を法とする平方数 0,1,4 に入りません。既約です。
だから (5)=pq で、p のノルムが 5、q のノルムが 25。∑eifi=1⋅1+1⋅2=3 で、[K:Q]=3 と合います[2]。
同じ体で (31) を分ける
F31 上で T3−2 の根を探します。43=64=2⋅31+2 なので 4 が根です。
31≡1(mod3) なので F31 には 1 の原始 3 乗根があります。53=125=4⋅31+1 なので 5 がそれ。
残りの根は 4⋅5=20 と 4⋅25=100≡7 です。実際 73=343=11⋅31+2、203=8000=258⋅31+2。
3 つの 1 次式に分かれるので (31)=p1p2p3、完全分解です。ef の和は 1+1+1=3。
円分体では位数を数える
K=Q(ζ7) で (2) と (3) を分けてください。
円分体では多項式を割る必要がありません。q を 7 で割った余りの位数だけで決まります[4]。qf≡1(mod7) となる最小の f をとり、g=φ(7)/f です[4]。
2 の位数を数えます。21=2、22=4、23=8≡1。f=3 なので g=6/3=2。(2) は 2 つの素イデアルに分かれ、それぞれのノルムが 23=8 です。
3 の位数は 3,2,6,4,5,1 と並んで f=6。g=1 なので (3) は素イデアルのままです。3 が 7 を法とする原始根だから、と言いかえられます。
| q | 7 を法とする位数 f | (q) の分解 | | 2 | 3 | 2 個、ノルムは各 8 |
| 3 | 6 | 1 個、ノルムは 729 |
| 11 | 3 | 2 個、ノルムは各 1331 |
| 13 | 2 | 3 個、ノルムは各 169 |
| 29 | 1 | 6 個に完全分解 |
29≡1(mod7) なので位数が 1、つまり完全分解します[4]。q≡1(modn) が完全分解の条件です。
検算はいつも同じ式
どの問題でも最後に ∑eifi=n を確かめます[2]。
| Z[−6] の (2) | e=2、f=1、g=1 で 2 |
| Z[−6] の (13) | e=1、f=2、g=1 で 2 |
| Q(32) の (5) | 1⋅1+1⋅2 で 3 |
| Q(ζ7) の (2) | 1⋅3+1⋅3 で 6 |
和が次数と合わなければ、どこかで因子を落としています。Fp 上の因数分解が完全でなかった場合に起きやすい。
Q(32) で (7) はどう分かれますか。
- 3 つの素イデアルに完全分解する
- ノルム 7 と 49 の 2 つに分かれる
- 素イデアルのまま分かれない
__RESULT__
F7 で立方数を並べると 0,1,1,6,1,6,6 となり、{0,1,6} の 3 個しかありません。2 が入らないので T3−2 に根がなく、3 次で根がなければ既約です。f=3、g=1 で、eifi の和は 3 になります。
多項式を Fp 上で割る、指数の条件を確かめる、∑eifi=n で検算する。この 3 手で、二次体も 3 次体も円分体も同じ手順に乗ります。
参考文献
$\mathbb{Z}[\sqrt{-6}]$ で $T^2+6$ を $\mathbb{F}_p$ 上に落とすと、$2$ と $3$ で $2$ 乗、$5$ と $7$ と $11$ で $2$ つに分かれ、$13$ では既約のままです。$\mathbb{Q}(\sqrt{5})$ の $2$ は指数が $2$ を割るので $T^2-5$ を使うと誤り、$T^2-T-1$ が正しく $(2)$ は素のまま。$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$ では $T^3-2$ の根が $5$ で $1$ つ、$7$ で $0$ 個、$31$ で $3$ つ。円分体 $\mathbb{Q}(\zeta_7)$ は $q$ の位数を数えるだけで済みます。検算はいつも $\sum e_i f_i = n$。解答は各問のすぐ後に置いています。
F7 で立方数を並べると 0,1,1,6,1,6,6 となり、{0,1,6} の 3 個しかありません。2 が入らないので T3−2 に根がなく、3 次で根がなければ既約です。f=3、g=1 で、eifi の和は 3 になります。