群準同型とは?核と像・第一同型定理・自己同型群を計算例で理解する
指数関数は を満たす。足し算を掛け算に翻訳する装置である。
この一行が、群論でいう準同型のすべてを言い当てている。演算を演算へ移す写像だけを相手にすれば、群と群を比べられるのだ。
準同型を調べると、つぶれた部分(核)と映った先(像)が現れる。両者を結びつけるのが同型定理であり、群論の計算はほとんどここに集約される。
群準同型の定義
群 から群 への写像 が、任意の について
を満たすとき、 を群準同型という。左辺は の演算、右辺は の演算である点に注意したい。
単位元や逆元を保つことは条件に書かれていない。書く必要がないからだ。次にそれを見る。
単位元と逆元は自動的に保たれる
が成り立つ。両辺に を掛ければ を得る。
逆元も同様だ。 なので、 は の逆元である。
3 番目は で帰納法、 で逆元の性質を使えば出る。積を保つという 1 行から、群構造の全体が引き継がれるわけだ。
準同型でない写像
条件は思うより厳しい。加法群 上の は準同型ではない。 に対し、 となってずれる。
2 乗写像 も、一般には準同型ではない。 と が一致するのは のときだけだ。
で確かめよう。、 とすると となる。
すると である。一方で だから となり、両者は一致しない。
逆元写像 も同じ理由で失格になる。 であって、 ではない。可換群でのみ準同型になる。
トレースは準同型ではない
行列式は乗法について を満たす。だがトレースはそうならない。
は と一般に異なる。
次の単位行列 で試せば十分だ。 に対し、 となる。
ただしトレースは加法については を満たす。どの演算に関する準同型かを、つねに意識する必要がある。
例:指数関数
、 とする。 より準同型である。
これは全単射でもある。逆写像は対数 で、こちらも準同型だ。
したがって 。見た目のまるで違う 2 つの群が、群としては同じものだった。
例:絶対値
、 は より準同型である。
任意の正の実数はそれ自身の絶対値なので、全射だ。単射ではない。 だからである。
つぶれているのは絶対値 の複素数、すなわち単位円 にほかならない。
例:行列式
は より準同型になる。
全射である。対角成分が の行列を取れば行列式は になる。
つぶれるのは の行列、つまり である。
例:置換の符号
は、置換を偶置換なら 、奇置換なら に送る。互換の個数の偶奇が積で足し合わされるので準同型だ。
なら全射になる。 が に移るからである。
つぶれるのは偶置換の全体、すなわち交代群 だ。
例:剰余写像
、 を考える。 なので準同型である。
全射なのは明らかだろう。つぶれるのは で割り切れる整数、つまり である。
もっとも素朴な準同型でありながら、同型定理の主役になる写像だ。
例: 倍写像
、()は加法を保つので準同型である。
単射だが全射ではない。像は に留まる。
つぶれる元はない。それでも像は真の部分群である。、すなわち無限群は自分自身の真の部分群と同型になりうるのだ。
例: 乗写像
、 は より準同型である。
全射だ。任意の複素数は 乗根をもつからである。
つぶれるのは を満たす 、つまり の 乗根の全体 である。有限個の元がつぶれて、 対 の写像になっている。
例:座標射影
、 は加法群の準同型である。
全射で、つぶれるのは の点、すなわち 軸だ。
平面を横につぶして直線にする操作、と言い換えてもよい。つぶした方向がそのまま核になる。
巡回群からの準同型は行き先 1 つで決まる
が巡回群なら、準同型 は をどこに送るかだけで決まる。 が強制されるからだ。
とはいえ、行き先は自由には選べない。 の位数が なら なので、 が必要になる。
つまり の位数が を割ること。これが唯一の条件であり、逆にこの条件を満たせば準同型が定まる。
例: から への準同型を数える
と置く。条件は である。
は と同値で、 となる。
したがって の 2 通り。準同型はちょうど 2 個ある。
が自明な準同型、 が で、像は である。
例: から へは何個あるか
同じ計算を一般化する。条件は である。
これを満たす の個数は に等しい。準同型の個数は最大公約数で与えられるのだ。
さきほどの 、 なら で、たしかに 2 個だった。 から へは 、つまり自明なものしかない。
例: からの準同型
から への準同型は 2 個ある。自明なものと、符号写像 である。
から へはどうか。像が位数 3 なら核は位数 2 の正規部分群になるが、 の正規部分群は 、、 の 3 つしかない。
位数 2 のものは存在しない。よって自明な準同型だけである。準同型を数える問題は、正規部分群を数える問題に化ける。
核と像
準同型 に対し、次の 2 つの集合を定める。
前者を核、後者を像という。核は の側、像は の側に住んでいる。
の部分集合で、正規部分群になる。写像でつぶれる部分の大きさを測る。
の部分集合で、部分群になる。ただし正規とは限らない。
核が正規になるのに像がそうならないのは、核が の内部の対称性を受け継ぐのに対し、像は の中の一部分でしかないからだ。
核は正規部分群
まず部分群であることを見る。 なら となり、 である。
正規性を示す。、 に対し
が成り立つ。よって となり、 である。
共役で動かしても核から出られない。この事実が、あとで商群を作るときの土台になる。
像は部分群
に対し、 はふたたび像の元である。
単位元 も含む。判定条件を満たすので、像は の部分群だ。
正規になるとは限らない。、 の像は で、これは の正規部分群ではない。
単射は核だけで判定できる
が単射であることと、 は同値である。
単射なら から が出る。核は自明だ。
逆に核が自明とする。 なら なので 、すなわち である。
単射性という「すべての点での条件」が、単位元 1 点の逆像を見るだけで済む。準同型の硬さがよく出ている。
核と像の大きさ
有限群では、つぶれた分だけ像が小さくなる。
で確かめよう。、核は で位数 12、像は位数 2。たしかに である。
この等式は、次に見る第一同型定理の数え上げ版にあたる。
正規部分群はすべて核である
核は正規部分群だった。逆も成り立つ。
とすると、商群 が作れる。標準射影 、 は準同型で、その核はちょうど である。
が単位元 になるのは のときに限る。よって となり、 は 核として実現される。
正規部分群と核は、同じものを別の角度から見た呼び名にすぎない。
「正規部分群」は部分群としての性質、「核」は写像から生まれる対象である。この 2 つが一致するという事実が、群論の見通しを一気によくする。
例:核になれない部分群
は正規ではない。したがって、どんな準同型の核にもなりえない。
実際に共役を計算する。 として を求めると、、、 となる。
つまり で、 の外に飛び出した。 を核にもつ準同型は存在しない。
商群
のとき、剰余類 の全体に演算 を入れると群になる。これが商群 である。
演算が代表元の取り方によらないことは、正規性から従う。、 とすると で、括弧の中は の元だ。
正規でなければこの計算は破綻する。商群が作れる部分群は正規部分群に限る、というわけである。
例: は商群である
は可換なので、部分群 は自動的に正規になる。商群 は剰余類 の全体だ。
という演算は、まさに「 で割った余りで足す」ことである。
日常的に使う時計の計算が、商群の最初の例になっている。 時の次が 時に戻るのは の演算だ。
第一同型定理
準同型 に対し、次が成り立つ。
同型は で与えられる。核でつぶしてから見れば、残るのは像そのものだ、という主張である。
これが同型定理の中心にある。以下の第二・第三同型定理は、いずれもこの定理の適用として導かれる。
第一同型定理の証明
と置き、 で写像を定める。
まず定義が正当であることを見る。 なら なので 、すなわち となる。代表元の取り方によらない。
準同型であることは から従う。
単射性は核を見ればよい。 なら で、 は の単位元だ。像への全射性は定義から明らかである。
図で見る第一同型定理
準同型はつねに「つぶす」「同型で移る」「埋め込む」の 3 段に分解できる。
<div class="cont">
<svg viewBox="0 0 420 210" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="第一同型定理の分解図">
<defs>
<marker id="ar" viewBox="0 0 10 10" refX="9" refY="5" markerWidth="6" markerHeight="6" orient="auto-start-reverse">
<path d="M 0 0 L 10 5 L 0 10 z" fill="#8a8f98"/>
</marker>
</defs>
<rect x="0" y="0" width="420" height="210" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<g stroke="#8a8f98" stroke-width="1.3" marker-end="url(#ar)" fill="none">
<line x1="105" y1="46" x2="325" y2="46"/>
<line x1="80" y1="66" x2="80" y2="140"/>
<line x1="130" y1="160" x2="250" y2="160"/>
<line x1="310" y1="142" x2="345" y2="68"/>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="13" text-anchor="middle" fill="#1b1d22" stroke="#fafbfc" stroke-width="4" paint-order="stroke">
<text x="80" y="50" fill="#3468d6">G</text>
<text x="350" y="50" fill="#3468d6">H</text>
<text x="80" y="164">G / ker φ</text>
<text x="290" y="164">Im φ</text>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11.5" text-anchor="middle" fill="#6b7280" stroke="#fafbfc" stroke-width="3.5" paint-order="stroke">
<text x="215" y="36">φ</text>
<text x="52" y="108">π(つぶす)</text>
<text x="190" y="150" fill="#c93c41">≅</text>
<text x="360" y="112">包含</text>
</g>
</svg>
</div>.cont { margin: 0; text-align: center; }
.cont svg { width: 100%; max-width: 420px; height: auto; }まず標準射影 で核をつぶす。次に が像と同型に移る。最後に像が の部分群として収まる。
どんな準同型も、この 3 段より複雑にはならない。核と像さえ押さえれば、写像の全体像は決まってしまう。
使い方の手順
第一同型定理は、商群を計算するための道具として使う。
から都合のよい準同型 を作る
核と像を計算する
と結論する
商群を剰余類の集合として直接調べる必要はない。うまい準同型を 1 本引くだけで、正体が見抜けるのだ。
以下、この手順を繰り返し使う。
例:
行列式 を使う。核は 、像は 全体だった。
第一同型定理から、ただちに次を得る。
正則行列を「行列式が同じもの」でまとめると、残るのはスカラーの掛け算だけになる、という意味である。
例:
符号写像 を使う。核は 、像は である。
したがって 。置換を偶と奇に分ける、あの 2 分割が商群の正体だ。
系として も出る。指数が 2 なので、剰余類は 2 つしかないからである。
例:
、 とする。 より準同型である。
像は絶対値 の複素数の全体、すなわち単位円 だ。核は を満たす 、つまり整数の全体 である。
直線を整数の幅で巻き取ると円になる。小数部分だけを見る、という操作の言い換えでもある。
例:
今度は絶対値 を使う。核は単位円 、像は正の実数全体 だった。
複素数から偏角の情報を捨てると、絶対値だけが残る。前の例と合わせると、 が「円の方向」と「半径の方向」に分かれる様子が見える。
例:
乗写像 を使う。核は の 乗根の全体 、像は 全体である。
自明でない部分群で割ったのに、もとの群と同型になった。有限群では起こりえない現象だ。位数を比べれば矛盾するからである。
無限群では「割っても小さくならない」ことがある。 と同じ種類の不思議さだ。
例:
、 と定める。 が の倍数なので、この対応は代表元の取り方によらない。
全射である。核は で割り切れる元、すなわち だ。
位数も で合っている。巡回群を部分群で割ると、ふたたび巡回群が出てくる。
例:平面を軸で割る
射影 、 を使う。核は 軸、像は 全体である。
平面を縦線ごとにまとめて 1 点とみなすと、残るのは横方向の直線だけ。商とは、ある方向の情報を捨てる操作なのだと分かる。
第二同型定理
、 とする。このとき は の部分群であり、次が成り立つ。
証明も第一同型定理の適用だ。、 と定める。
これは全射である。 の元は と書けるからだ。核は となる 、すなわち である。
あとは第一同型定理を当てればよい。副産物として も出る。核はつねに正規だからだ。
図で見る第二同型定理
4 つの群を並べると、菱形が現れる。
<div class="cont">
<svg viewBox="0 0 360 230" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="第二同型定理のダイヤモンド図">
<rect x="0" y="0" width="360" height="230" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<g stroke-width="1.4" fill="none">
<line x1="168" y1="46" x2="95" y2="106" stroke="#aab0b8"/>
<line x1="192" y1="46" x2="265" y2="106" stroke="#e0872f"/>
<line x1="95" y1="124" x2="168" y2="184" stroke="#e0872f"/>
<line x1="265" y1="124" x2="192" y2="184" stroke="#aab0b8"/>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="13" text-anchor="middle" fill="#1b1d22" stroke="#fafbfc" stroke-width="4" paint-order="stroke">
<text x="180" y="40" fill="#3468d6">HN</text>
<text x="82" y="119">H</text>
<text x="278" y="119">N</text>
<text x="180" y="192" fill="#8a8f98">H ∩ N</text>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11.5" fill="#b5651d" stroke="#fafbfc" stroke-width="3.5" paint-order="stroke">
<text x="106" y="164">H /(H ∩ N)</text>
<text x="238" y="82">HN / N</text>
</g>
<text x="180" y="118" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="13" text-anchor="middle" fill="#c93c41" stroke="#fafbfc" stroke-width="3.5" paint-order="stroke">≅</text>
</svg>
</div>.cont { margin: 0; text-align: center; }
.cont svg { width: 100%; max-width: 360px; height: auto; }菱形の向かい合う 2 辺が、同じ商群を与える。 から下へ降りる辺と、 から へ降りる辺だ。
平行な辺どうしが対応する、と覚えると忘れない。この定理は平行四辺形定理とも呼ばれる。
例: で第二同型定理を使う
、、 とする。可換群なので は正規だ。
は でも でも割れる整数、つまり 。 は と が生成する部分群で、 より である。
定理は を主張する。左辺の位数は 、右辺は 。どちらも である。
例:最小公倍数と最大公約数の関係
前の計算を一般化しよう。、 とすると、、 である。
位数を比べる。左辺は 、右辺は になる。
第二同型定理により両者は等しい。整理すれば、次の見慣れた等式が落ちてくる。
初等整数論の公式が、群論の定理の系として出てきた。同型定理は抽象的な道具に見えて、こういう具体的な結果を生む。
例: で第二同型定理を使う
(位数 2)、(位数 3、正規)とする。
である。互換は偶置換ではないからだ。 は位数 となり、 全体になる。
定理は を与える。左辺は 、右辺も で、たしかに合っている。
第三同型定理
で、 が の正規部分群でもあるとする。このとき次が成り立つ。
証明はまた第一同型定理だ。、 と定める。 なので、この対応は代表元によらない。
全射は明らかで、核は となる 、すなわち である。
二度に分けて割っても、一度にまとめて割っても同じ。約分のような感覚で使える定理である。
例:
、、 とする。 であり、可換群なのでどちらも正規だ。
であり、 は にほかならない。
第三同型定理から を得る。
位数でも確かめられる。 だ。 で割ってから で割るのと、はじめから で割るのは同じことである。
対応定理
、 を標準射影とする。 を含む の部分群と、 の部分群のあいだに全単射がある。
対応は と で与えられる。包含関係も、指数も、正規性も保たれる。
商群の部分群を調べたければ、もとの群の中で を含む部分群を見ればよい。格子の上半分をそのまま切り出す操作だと思えばよいだろう。
例: の部分群を数え直す
として対応定理を使う。 の部分群は、 を含む の部分群と 1 対 1 に対応する。
の部分群は の形に限られ、 となるのは が を割るときだ。
の 6 通り。 の部分群が 6 個であることが、 側の計算だけで出た。
商群の部分群を、直接数えなくてよい。これが対応定理のありがたみである。
自己同型群
から 自身への同型を自己同型といい、その全体を と書く。写像の合成を演算とすれば群になる。
巡回群の場合はきれいに決まる。 の自己同型は の行き先で決まり、行き先は生成元でなければならない。
位数は である。 なら生成元は と の 2 つだけなので、 と同型になる。
例:
で、位数は である。
中身を見ると面白い。、、 と、単位元以外がすべて位数 2 だ。
したがって はクラインの四元群であり、巡回群ではない。巡回群の自己同型群が巡回群とは限らないのだ。
内部自己同型と中心
に対し、共役写像 は の自己同型である。これを内部自己同型という。
、 は準同型になる。像を と書く。
核は何か。 が恒等写像になるのは、すべての で が成り立つとき、つまり が中心 に属するときだ。
第一同型定理を当てれば、次を得る。
の中心は なので 。可換群なら で、内部自己同型は恒等写像しかない。
理解の確認
から への群準同型はいくつあるか。
- 1 個(自明なものだけ)
- 2 個
- 4 個
準同型は群を照らす光
群そのものを正面から調べるのは難しい。準同型を 1 本引き、核と像に分けて眺めるほうが、はるかに見通しがよい。
第一同型定理は、その分解がつねに可能だと保証する。第二・第三同型定理と対応定理は、分解を組み合わせるための計算規則にほかならない。
核を取れる部分群、すなわち正規部分群が と しかない群を単純群という。これ以上つぶせない群であり、有限単純群の分類は 20 世紀数学の巨大な達成となった。
どんな有限群も、単純群を積み上げて作られる。組成列がそれを述べ、ジョルダン・ヘルダーの定理が積み上げ方の一意性を保証する。準同型から始まった話は、群の構造そのものの記述へとつながっていく。










準同型は φ(1ˉ)=aˉ の行き先だけで決まり、条件は 4a≡0(mod6) である。これは a≡0(mod3) と同値なので、aˉ は 0ˉ か 3ˉ の 2 通り。一般に Z/mZ から Z/nZ への準同型は gcd(m,n) 個あり、ここでは gcd(4,6)=2 に一致する。