Burnsideの補題 - 群作用による数え上げ

が集合 に作用しているとき、軌道の数を求める問題は組合せ論で頻繁に現れます。素朴に数えようとすると「回転して同じになるものを何度も数えてしまう」という困難にぶつかりますが、Burnside の補題はこの問題をきれいに解決します。

不動点と軌道

が有限集合 に作用しているとします。各群元 に対して、 で動かない元の集合を

と書き、これを の不動点集合と呼びます。一方、 の軌道とは

のことで、群作用によって から到達できる元全体の集合です。軌道は の分割を与えるので、軌道の個数 は「本質的に異なる元が何種類あるか」を意味しています。

Burnside の補題の主張

Burnside の補題(Cauchy-Frobenius の補題とも呼ばれる)は次のように述べられます。

つまり、軌道の数は「各群元の不動点の数の平均」に等しいという主張です。右辺はすべての群元について不動点を数えて合計し、群の位数で割るだけなので、計算が非常にしやすい形になっています。

証明

次の集合のペアを二通りに数えます。

を固定して を動かすと、条件を満たす の個数は です。したがって

となります。逆に を固定して を動かすと、条件を満たす の集合は の安定化群 にほかなりません。したがって

とも書けます。軌道・安定化群定理 を使うと なので

が得られます。ここで、同じ軌道 に属する元はすべて を満たすため、軌道 に属する元の寄与を合計すると

です。軌道の個数を と書けば

となり、2 つの表示を等しいとおくと

が得られます。両辺を で割れば Burnside の補題が証明されます。

例 1:正方形の頂点の塗り分け

正方形の 4 つの頂点を白と黒の 2 色で塗る場合を考えます。回転で同じになるものは区別しないとすると、本質的に何通りの塗り方があるかを Burnside の補題で求めます。

正方形の回転群は で、 回転です。集合 は「4 頂点を 2 色で塗る方法全体」なので です。

群元操作不動点数
何もしない16
90° 回転2
180° 回転4
270° 回転2

各群元の不動点数を確認します。恒等変換 はすべての塗り方を固定するので です。 回転 で不変な塗り方は、4 頂点がすべて同じ色でなければならないので (全部白か全部黒)です。 回転 は対角の頂点を入れ替えるので、対角同士が同じ色であればよく です。 回転 回転の逆なので です。

Burnside の補題を適用すると

となり、回転で同一視したとき 6 通りの塗り方が存在することがわかります。

例 2:裏返しも許す場合

正方形は回転だけでなく裏返し(反転)もできます。裏返しも含めた対称群は位数 8 の二面体群 です。 は 4 つの回転と 4 つの反転からなります。

群元操作不動点数
恒等変換16
90° 回転2
180° 回転4
270° 回転2
縦軸反転8
横軸反転8
対角線反転4
対角線反転4

反転の不動点数について補足します。縦軸で裏返す は左右の頂点を入れ替えるので、左右で同じ色であればよく ではなく、正確には上の頂点・下の頂点がそれぞれ自由で、左右のペアが 2 組あるので ——いえ、もう少し丁寧に見ます。縦軸反転は頂点 1, 3 を固定し頂点 2, 4 を入れ替えるので、頂点 1 は自由(2 通り)、頂点 3 は自由(2 通り)、頂点 2 と 4 は同色(2 通り)で です。横軸反転も同様に です。対角線反転はそれぞれ 2 頂点を固定して残り 2 頂点を入れ替えるので ——ここは頂点の番号付けによりますが、対角線反転では 1 頂点のみが固定され残り 3 頂点が 2 つの軌道に分かれるので です。

Burnside の補題を適用すると

となります。この場合は回転のみの場合と同じ 6 通りになりますが、これは 2 色という選択肢が少ないためです。色数が増えると、回転のみの場合と裏返しも許す場合で結果が変わってきます。

例 3:3 色で正三角形を塗る

正三角形の 3 頂点を赤・青・緑の 3 色で塗る場合を考えます。回転群は 回転)で です。

恒等変換 はすべてを固定するので です。 回転 で不変になるには 3 頂点が同色でなければならず です。 回転 も同様に です。

正方形の 4 頂点を赤・青・緑の 3 色で塗り、回転で同一視するとき、塗り方は何通りですか?

  • 18 通り
  • 24 通り
  • 21 通り
  • 27 通り
__RESULT__

で、不動点数は : 81、: 3、: 9、: 3 です。 通りとなります。

名称について

この補題は Burnside の名前で広く知られていますが、実際にはそれ以前に Cauchy や Frobenius が同じ結果を証明しています。Burnside 自身もこの結果が自分のオリジナルだとは主張しておらず、彼の教科書で紹介したことで広まったという経緯があります。数学ではこうした「名前の帰属が実際の発見者とずれる」現象がしばしば見られ、Stigler の法則(「科学的発見にはその発見者の名前がつかない」という経験則)の典型例とされています。

Burnside の補題は、群作用の理論の中でも特に応用範囲が広い結果です。次の記事で扱う Pólya の数え上げ定理は、Burnside の補題をさらに精密化したもので、「各色を何個使ったか」という情報まで追跡できるようになります。