Burnside の補題と巡回指数:ネックレスと立方体の塗り分けを数える
個のビーズを 色で塗り、回して重なるものを同じとみなします。塗り方は 通り、回転は 通り。 を で割ると割り切れない。
回転で自分自身に戻る塗り方があるためです。その分を勘定に入れる式が、Burnside の補題と呼ばれるものです[3]。
単純に割れない理由
赤白を交互に並べた ビーズは、 個ぶん回すと自分に戻る。この塗り方の軌道は 個ではなく 個。
すべて赤なら軌道は 個です。軌道の大きさがそろわないため、全体を群の位数で割る計算が合いません。
軌道の大きさは、その塗り方を固定する元の個数だけ小さくなる。だから固定するほうを数えれば勘定が合う、という発想になります。
軌道と安定化群
補題の証明で使う関係を先に示しておく。有限群 が集合 に作用し、 をとります。
を安定化群、 を軌道といいます[1]。
写像 、 を見ましょう。全射であることは軌道の定義そのもの。
は と同値になる。だから同じ点へ送られる の全体は、左剰余類 そのものです。
剰余類はどれも 個の元を持ち、たがいに交わりません。軌道の点 つに剰余類が つ対応するため、次が成り立つ[1][4]。
軌道が大きいほど安定化群は小さい。積が で一定なので、片方を数えればもう片方が決まります。
補題
有限群 が有限集合 に作用し、軌道が 個あるとします。 と置くと[1]
が成り立ちます[3]。軌道の個数は、各元が止める点の個数の平均です。
証明は を 2 通りに数えることでできる[1]。
から先に数えると 、 から先に数えると になる。ここで前の節の等式を使います。
両辺を で割ると、右辺は になる。長さ の軌道の中の点は、それぞれ ずつ寄与します。 個あるので合わせて になり、軌道ごとに が立つ。合計は軌道の個数です[1]。

名前について
この式は Burnside のものではありません[3]。
Cauchy が 1845 年に知っていて、Frobenius が 1887 年に定理の形で発表しました[3]。Burnside は 1897 年の教科書に、Frobenius への言及つきで載せています[1]。
ところが 1911 年の第 2 版でその言及が落ちました[3]。1960 年ごろから「Burnside の補題」という呼び名が定着し、いまに至ります。
Cauchy-Frobenius の定理、あるいは冗談まじりに「Burnside のものでない補題」とも呼ばれる[3]。Conrad も、Burnside は自著で Frobenius に帰していると注意しています[1]。
ネックレスを数える
個のビーズを 色で塗り、回転で同一視する。 個ぶん回す置換を と書きます。
ビーズの位置を と見ると、 が生成する巡回群は で、その位数は です。 の巡回は による剰余類にあたるため、個数は次のように決まる。
同じ巡回に入るビーズは、同じ色でなければ固定されない。よって固定される塗り方は 通りです。
約数でまとめ直します。 を の約数とし、 となる を数えましょう。
と書くと で、条件は に読み替わる。この の個数がオイラー関数 です。
、 で計算します。、、、。
通りになる。冒頭の が割り切れなかったぶんを、固定される塗り方が埋めました。
裏返しも許すと
ネックレスをひっくり返してよいことにすると、群が二面体群になります。位数は 。
では鏡映が 本あります。向かい合う頂点を通る軸が 本で、 個を固定し残りを 個ずつ組にするため巡回は 個、固定される塗り方は 通り。
辺の中点を通る軸が 本あり、 組の入れ替えになって 通りです。
回転だけなら 、裏返しも許すと になる。差の は、鏡映で初めて重なる 2 つが 1 つにまとまったぶんです。
立方体の頂点と辺
同じ補題を立方体で使います。まず回転群の位数を、軌道と安定化群の関係から出しましょう。
面を 1 枚とると、その面をそれ自身へ送る回転は、面に垂直な軸まわりの 通りです。面の軌道は 枚の面全体なため、位数は になる[2]。
内訳は 5 種類です[2]。
頂点 8 個を 2 色で塗る場合を数えます。恒等変換は 。面まわりの 90 度は頂点を 4 個ずつ 2 組の巡回にするので 。面まわりの 180 度は 2 個ずつ 4 組で 。
対角線まわりは 2 個を固定して 3 個ずつ 2 組なので 。辺まわりは 2 個ずつ 4 組で です。
辺 12 本でも同じ手順です。、、、、 と並び、合計は 。 で割って 通りになる。

巡回指数
数え上げの型を式にまとめます[2]。置換 が長さ の巡回を 個、長さ を 個、と持つとき、 に を対応させる。
立方体の面への作用では、5 種類がそれぞれ 、、、、 に対応します[2]。
すべての変数に色の数 を入れると、補題の式に戻る。 なら次のようになる。
Pólya の定理
代入する相手を数から多項式に替えると、内訳まで数えられます。定理の形に書きましょう[4][5]。
を塗る場所の集合、 を色の集合とします。色 に重み を与え、塗り方 の重みを積で定めます。
同じ軌道に入る 2 つの塗り方は、同じ重みを持つ。 なら、積の順が変わるだけだからです[4]。よって軌道にも重みが定まる。
主張は、軌道の重みの総和が巡回指数への代入で書けることです[4][5]。
証明は補題の重み付き版です。重みは軌道の上で一定だから、重み を持つ軌道だけを集めた集合に補題を当てられます[4]。
両辺に をかけ、 について足し合わせます。左辺は軌道の重みの総和になり、右辺は です。
内側の和を計算しましょう。 が固定する塗り方は、各巡回の上で色が一定のものに限られます。
長さ の巡回を色 で塗ると、その巡回は場所を 個持つので重みに を出す。巡回ごとの色の選び方は独立で、和が積に分かれます[5]。
右辺は、 に を入れた単項式そのものです。 について平均をとると巡回指数への代入になり、主張が示せました。
をすべて にすると重みが全部 になり、軌道の個数を数える式に戻ります。補題は、この定理で重みを落とした場合にあたる。
色ごとに数える
立方体の面で定理を使います。黒に 、白に を重みとして割り当てると、 に入るのは です。
できあがる多項式の の係数が、黒を 枚使う塗り分けの個数になる。
黒 枚のところを計算しましょう。 からは の の係数で 。 からは になり、 倍して 。 からは の中央の項で 、 倍して 。
と からは が現れません。指数の偶奇が合わないためです。
黒 枚の塗り分けは 通り。1 つの頂点に集まる 3 枚を黒くする形と、帯のように 3 枚を並べる形です。
軌道の個数がひとつの数として求まる
色の使い方ごとの内訳が、多項式の係数として並ぶ
合同式が副産物になる
補題からは整数の合同式も手に入ります[1]。
ネックレスの個数は整数だから、 も整数になる。分母を払うと次の形になる。
これが任意の整数 と正整数 で成り立ちます[1]。
が素数 のときを見ましょう。 は でだけ 、ほかは です。
は で割り切れるため 。Fermat の小定理でした[1]。
ビーズの並べ方を数えただけで、数論の定理まで届きます。軌道の個数が整数だという当たり前の事実が効いている。
個のビーズを 色で塗り、回転で同一視すると何通りありますか。
- で割り切れないので数えられない
- 通り
- 通り
巡回指数 に を代入すると、 の係数は何を数えていますか。
- 黒 3 枚の塗り方の総数
- 黒 3 枚の塗り分けを、回転で同一視して数えた個数
- 黒 3 枚と白 3 枚の塗り分けの個数の和
Pólya の定理は軌道の重みの総和を与えます。重みを と でとると、重み の軌道の個数がその係数です。回転で移り合う塗り方は 1 つに数えられています。
軌道の個数そのものを数えるかわりに、各元が止める点を数える。補題はその 2 つを等式で結んでいます。
巡回指数まで進めると、変数を残したまま同じ計算が通ります。数のかわりに多項式を代入するだけで、内訳が係数として並ぶ。











k 個ぶん回す置換の巡回の個数は gcd(k,4) です。k=1,2,3,4 でそれぞれ 1,2,1,4 なので、固定される塗り方は 3,9,3,81 通り。合計 96 を 4 で割って 24 通りになります。単純に 81 を 4 で割らないのは、回転で自分に戻る塗り方があるためです。