球を縮めた平均がほとんどの点で関数の値に戻るルベーグの微分定理
局所可積分な関数を、点 のまわりの球で平均します。半径を に縮めると、ほとんどすべての点で そのものに戻ります[1]。
微分と積分が逆の操作であることの、測度論での言い方です。1 次元でルベーグが 1904 年に、一般次元では 1910 年に示しました。
連続なら当たり前に見えますが、 には連続性を仮定していません。値をどこでいくら変えても零集合の上なら結論が変わらない、という強さがあります。
絶対値を入れた強い形
実際に示すのは、次のもっと強い主張です[3]。
絶対値を外した形は、この式から三角不等式ですぐ出ます。逆は言えません。打ち消し合いで平均だけが揃う場合があるためです。
証明の対象になるのは次の量。これが概収束の意味で になることを示します。
差がどこまで小さくなるかを見ると、主張の中身がそのまま目に入ります。ギザギザが残っていても、縮めれば追いつく。
連続関数なら易しい
が連続でコンパクト台を持つとします。 に対して をとり、 なら となるようにします。
の球では被積分関数がすべて 未満なので、平均も を超えません。よって が各点で成り立ちます。
一様連続性だけで済んでしまう。難しさは、連続でない関数へこの結論を運ぶところにあります。
差をとると は変わらない
三角不等式と の劣加法性から、次が出ます。
を連続関数とすると なので、 と が両方成り立ちます。つまり 。
連続関数を引いても が動かない。この不変性が、近似で議論を運ぶための足場になります。
極大関数で を押さえる
の定義で を に緩め、三角不等式で分けます。
したがって は と の合併に含まれます。前者はハーディ・リトルウッドの不等式、後者はチェビシェフの不等式で押さえられる。
極大関数が微分の議論に効くのは、まさにこの一手のためです[5]。上限をとって大きくしておいてから、その大きい量のほうを評価する。遠回りに見えて、平均の細かい揺れを追わずに済みます。
弱 型の評価が にも立ちました[4]。極大関数を経由したことで、定数が次元だけで決まる形に落ちています。
証明を閉じる
は で稠密なので、任意の に対し となる連続関数 がとれます。
前の 2 節を合わせると、次の評価が出ます。
は任意なので左辺は です。 は の可算合併なので、これも測度 。
局所可積分な場合は に当てて合併をとれば済みます。零集合の可算合併はやはり零集合だから。
連続関数で確かめる
連続関数を引いても変わらないことを示す
極大関数で弱い評価を作る
稠密性で一般の関数へ運ぶ
ルベーグ点
定数 が存在して次を満たすとき、 は のルベーグ点であるといいます[3]。
そのような は一つしかありません。しかも値は の概収束の意味での同値類だけで決まります。
定理は「ほとんどすべての点がルベーグ点である」と言い直せます。ルベーグ点の上で と定めれば、同値類の代表を各点で選び直せる。
例:階段関数のルベーグ点
()、()とします。 以外の点は、その近くで が定数なのでルベーグ点です。
原点はどうか。 を何に選んでも、次の極限は になりません。
右辺は で最小値 をとります。原点はルベーグ点ではありません。
極限が存在してもルベーグ点とは限らない
同じ階段関数で、絶対値を外した平均を見ます。
半径によらず なので、極限は存在します。それでも原点はルベーグ点でない。
平均が収束することと、ばらつきが消えることは別。強い形をわざわざ示す理由がここにあります[4]。
原点では平均が に収束しますが、ばらつきは消えません。左右で と に分かれたまま、平均だけが真ん中に落ち着いています。
絶対値を入れた形が になって初めてルベーグ点。値の一致より強い条件になっている。
ルベーグの密度定理
を可測集合 の指示関数にすると、定理は集合の話に変わります[2]。
のほとんどすべての点で密度が 、補集合のほとんどすべての点で密度が になります。中間の値をとる点は零集合しかない。
境界は測度の目から見れば消えている、という主張です。図形の縁が全体の量に効かない理由もここにあります。

角では 、辺では になります。それでも境界の点をすべて集めた集合は、面積 にとどまる。
密度定理は、可測集合がどれも「ほとんど区間の合併のように見える」ことを言っています。細かく散らばった集合でも、ほとんどの点では自分の内側にいる。
ヴィタリ集合のような病的な集合が可測でないのは、この性質と折り合わないためだと読むこともできます。密度が定まらない点が多すぎる、という言い方。
縮め方に条件が要る
球を使う代わりに、 を含む集合を縮めていく形にも一般化できます。ただし縦横比を抑える条件が付きます[1]。
長方形をどんどん細長くしながら面積を に縮めると、平均が値に戻りません。連続関数であってもそうなります。
立方体や、縦横比に上限のある長方形なら成り立ちます。有界離心率と呼ばれる条件です。
「小さくなる」だけでは足りず、「どの向きにも縮む」ことが要る。極大関数の定義で細長い長方形を除いたのと同じ理由です。
1 次元での顔
の不定積分を と置きます。
定理から、ほとんどすべての で が成り立ちます。リーマン積分では の連続点でしか言えなかったところ。
が連続な点でだけ が言える。不連続点では保証がない
が局所可積分でありさえすれば、ほとんどすべての点で
quiz で確かめる
()、()とします。原点について正しいものはどれですか。
- 平均の極限が存在しないので、ルベーグ点ではない
- 平均の極限は で存在するが、ルベーグ点ではない
- 平均の極限が なので、値を と定めればルベーグ点になる
- が可測なので、すべての点がルベーグ点になる










対称区間での平均は半径によらず 21 です。ところが絶対値を入れると (∣c∣+∣1−c∣)/2 が残り、どの c でも 0 になりません。ばらつきが消えていないためです。