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長さと面積の間にある目盛り(ハウスドルフ測度と非整数の次元)

長さ、面積、体積は次元ごとに別々の量でした。同じ定義式の を動かすだけで、これらをまとめて作れます[1]。

直径が 以下の集合で を覆い、直径の 乗を足した値の下限をとります。 を縮めると覆い方が減るので、値は増える一方。

これが 次元ハウスドルフ測度です。フェリックス・ハウスドルフが 1918 年に導入しました[2]。 は整数でなくてかまいません。

なぜ を縮めるのか

を固定したままでは、粗い覆いで値をごまかせます。円周を 1 個の大きい円板で覆えば、直径 1 個分の値しか出ません。

細かく覆うことを強いると、集合の形が値に反映されます。極限をとる操作は、その強制です。

について単調なので、極限は上限として存在します。値が になることも許します。

外測度からカラテオドリで測度へ

は外測度で、しかもボレル正則です[1]。距離的外測度でもあるので、ボレル集合はすべてカラテオドリの意味で可測になります。

したがって をボレル集合族に制限すれば測度が得られます。構成の型は、ルベーグ測度を外測度から作ったときとまったく同じ。

違うのは、覆いに使う集合を区間ではなく直径だけで指定している点です。距離さえあれば定義できるので、 の外でも使えます[3]。

ルベーグ測度との関係

とすると、 でルベーグ測度の定数倍になります。

は単位球の体積から決まる正規化の定数です。直径で測るか半径で測るかの差を吸収します[1]。

正規化を定義に組み込む流儀もあり、その場合は になります。以下では正規化しない形で書きます。

を動かすと 1 点で急に落ちる

同じ集合 について を動かすと、値の振る舞いが極端です。 なら で になります。

覆いの直径が 以下なので、。右辺の和は 倍に縮み、 で消えます。

対偶をとれば、 のとき で 。つまり と の間に、中間の値をとる はたかだか 1 つしかありません。

ハウスドルフ次元

落ちる場所を次元と呼びます[2]。

2 つの定義が一致するのは、前の節の急落があるためです。整数とはかぎらない値が出ます。

次元そのものでの値は決まりません。 が になることも になることも、有限の正の値になることもあります。

例:可算集合の次元は 0

1 点の直径は なので、 なら です。

可算集合は 1 点の可算合併なので、可算加法性から 。したがって次元は になります。

有理数全体も次元 です。稠密であることと次元は無関係。

例:カントール集合

第 段のカントール集合は、長さ の区間 個です。これを覆いに使うと次の値が出ます。

、つまり のとき、この値は によらず です。

がこれより小さければ発散し、大きければ に落ちます。上からの評価はこれで済み、下からの評価も別に付くので、次元はちょうどこの値。

長さは で、点の個数としては非可算。その中間にある量を、この という数が表しています。

自己相似集合の次元

縮小比 の相似写像 個で自分自身を覆う集合では、次元が方程式で決まります[2]。

モランの方程式と呼ばれます。すべての比が同じ なら、 から 。

カントール集合は 、 なので 。さきほどの計算と合います。

例:ガスケットとコッホ曲線

図形コピーの数縮小比次元
カントール集合2
コッホ曲線4
シェルピンスキーのガスケット3

コッホ曲線は 次元より大きく、 次元より小さい。曲線でありながら長さが無限で、面積は です[2]。

ガスケットは で、面積 の図形。次元が「どれだけ空間を埋めているか」を測る量だと分かります。

開集合条件

モランの方程式が使えるのは、コピーどうしの重なりが小さいときだけです。開集合条件と呼ばれる仮定を置きます[2]。

空でない有界開集合 があって、各写像の像が に入り、しかも互いに交わらないこと。

条件を外すと、重なった部分を二重に数えて次元が過大に出ます。上の 3 例はどれも条件を満たします。

例:滑らかな多様体

の中の 級な 次元部分多様体は、ハウスドルフ次元が になります。

局所的に の開集合と微分同相で、リプシッツ写像が次元を増やさないため。ふつうの次元と食い違いません。

整数次元の場合に既存の量と一致し、そのうえで非整数まで伸びている。よい一般化の形です。

ボックス次元との違い

覆いに使う集合の大きさをそろえた版がボックス次元です。格子の目盛りを にして、交わる箱の個数 から定めます。

いつでも です。等号は自己相似集合では成り立ちますが、一般には成り立ちません。

の有理数全体が分かりやすい例。ハウスドルフ次元は ですが、ボックス次元は になります。可算加法性を持たないぶん、ボックス次元は粗い量です。

カントール集合 について、正しい記述はどれですか。

  • 可算集合なのでハウスドルフ次元は
  • 次元は で、その次元での測度は正の有限値
  • 長さが なのですべての で
  • 次元は必ず整数になるので か
__RESULT__

は非可算で長さ です。 のところで測度が になり、それより小さい では発散、大きい では消滅します。

よくある誤り

次元が整数だと思う。非整数の値まで届くところに要点があります
を固定したままでよいと思う。粗い覆いで値をごまかせるので極限が要ります
次元での測度がいつも正の有限値だと思う。 にも にもなりえます
可算集合の次元が正になりうると思う。1 点の可算合併なので です
稠密なら次元が大きいと思う。有理数全体の次元は です
モランの方程式がいつでも使えると思う。開集合条件が要ります
ボックス次元と同じものだと思う。 で、一般には等号が立ちません
ユークリッド空間でしか定義できないと思う。距離があればどこでも定義できます

参考文献

Hausdorff measure. Wikipedia(英語).
Hausdorff dimension. Wikipedia(英語).
Hausdorff-Maß. Wikipedia(ドイツ語).
覆いに使う集合の直径を $s$ 乗して足し、直径の上限を $0$ へ縮めた極限がハウスドルフ測度です。$s$ を動かすと、ある値を境に $\infty$ から $0$ へ一気に落ちる。その境目がハウスドルフ次元で、整数とはかぎりません。カントール集合は $\log 2 / \log 3 \approx 0.63$、コッホ曲線は $1.26$、シェルピンスキーのガスケットは $1.58$。自己相似なら開集合条件のもとでモランの方程式から求まります。