近づき方が 4 通りあってどれも別物(概収束・測度収束・概一様収束・Lp 収束)
関数の列が近づくといっても、近づき方は 1 つではありません。測度論では 4 つを使い分けます。
どれも「近づく」ですが、含意の向きはばらばらです。どこで矢印が立ち、どこで立たないかを、以下では反例つきで押さえます。
分かれ目になるのは 2 つ。全体の測度が有限かどうかと、質量が逃げないかどうかです。
強さの順に一列に並ぶわけではありません。 収束と概収束はどちらも相手を含まない。この 2 つが交わる場所に測度収束が座っている、という配置になります[4]。
定義を並べる
上の可測関数列 と について、順に書きます[1]。
概収束は 。測度収束は次の形です。
概一様収束は、任意の に対し となる がとれて、 の上で一様収束すること。
収束は です。 の値ごとに別の収束になります。
4 つのうち、概収束だけが各点の話をしています。残りは集合の測度や積分という、まとめて測った量の話。この違いが含意の向きを決めます。
各点の情報は、測度で測るとつぶれてしまう。逆に、まとめて小さいことから各点の振る舞いをとり出すのも難しい。矢印が片側にしか立たない理由はここにあります。
以下では、含意が立つ場合には証明を、立たない場合には反例を並べます。反例のほうが記憶に残るはずです。
収束は測度収束を含む
チェビシェフの不等式を に当てます。
右辺は仮定から に落ちます。どの でも成り立つ、いちばん素直な含意です[3]。
逆は成り立ちません。測度が小さくても、そこでの値が大きければ積分は落ちないから。
例:背の高くなる山
で とします。台の長さは なので測度収束します。
各点でも に収束するので概収束もします。ところが積分は変わりません。
収束はしません。質量が縮む台の上に閉じこめられて、外へ逃げていく形です。
でも となり、事情はもっと悪くなります。
例:タイプライター列
()と書き、 を区間 の指示関数とします。
台の長さは なので測度収束します。 でも なので収束する。
ところがどの点 でも、 は と を無限回行き来します。各点収束する点が 1 つもありません[1]。
赤くなる瞬間が何度でも訪れます。振動が止まらないので、各点収束は望めません。
リースの定理:部分列なら概収束する
測度収束から各点収束は出ませんが、部分列を抜き出せば出ます[1]。 が 有限なら成り立ちます。
証明は素朴で、 となる番号を順にとります。
右辺の総和が有限なので、ボレル・カンテリの補題から、その事象が無限回起きる点の集合は零集合です。
外では が最後まで続くので、概収束します。タイプライター列でも、 ごとに 1 本ずつ拾えば に各点収束する部分列がとれます。
エゴロフの定理
有限測度の空間では、概収束から概一様収束が出ます[2]。カルロ・セヴェリーニが 1910 年、ドミトリ・エゴロフが 1911 年に独立して示しました。
任意の に対して となる可測集合 がとれて、 の上では一様収束する。
証明は上からの連続性を使います。 と置くと、 について減少して零集合に落ちる。
上からの連続性が使えるのは、測度が有限だからです。ここが仮定の効きどころ。
例:無限測度ではエゴロフが崩れる
の上で とします。どの点でも十分大きい から先は なので、各点収束します。
ところが有限測度の集合をどう除いても、残った側に山が乗る番号が必ずあります。一様収束にはなりません[2]。
同じ例は、概収束から測度収束が出ないことも示します。
によらず のままです。山が遠くへ歩いていくだけで、痩せてはいない。
有限測度なら概収束から測度収束が出る
なら、逆向きの矢印が立ちます。エゴロフから概一様収束が出て、そこから測度収束が従う。
直接示すこともできます。 は減少列で、共通部分は零集合です。
上からの連続性より で、 から結論が出ます。
概収束・測度収束・概一様収束が、ほぼひとまとまりに動く。分かれるのは だけ
概収束から測度収束が出ない。山が痩せずに遠くへ歩ける
局所測度収束
無限測度の空間では、測度収束を有限測度の部分集合ごとに要求する形も使われます。局所測度収束といいます[1]。
有限測度なら 2 つは同じもの。無限測度では、大域的なほうが真に強い条件になります。
さきほどの は、局所測度収束はします。どの有限測度の集合からも、いずれ山が出ていくため。
大域と局所の差が出るのは、無限の広さを使って質量を逃がせるからです。有限の空間には逃げ場がありません。
確率論でこの区別を気にせずに済むのは、確率空間の全測度が だから。測度論の側で反例が並ぶのは、無限測度を許しているためです。
関係を表にする
| 含意 | 条件 | 反例 |
|---|---|---|
| 測度 | なし | なし |
| 測度 | 成り立たない | 背の高くなる山 |
| 測度 概収束 | 部分列なら成立 | タイプライター列 |
| 概収束 測度 | 有限測度が要る | 歩いていく山 |
| 概収束 概一様 | 有限測度が要る | 歩いていく山 |
quiz で確かめる
上のタイプライター列について、正しいものはどれですか。
- 各点収束するので概収束もする
- 測度収束と 収束はするが、収束する点が 1 つもない
- 収束しないが各点収束する
- 有限測度なのでエゴロフから一様収束が出る











台の長さが 0 に落ちるので測度でも L1 でも 0 に収束します。ところがどの点にも山が無限回戻るので、各点では振動したまま。エゴロフは概収束を仮定するので、ここでは使えません。