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優収束定理の「蓋」は要らなかった……一様可積分性とヴィタリの収束定理

優収束定理は、可積分な蓋 を 1 枚見つけることを要求します。蓋がなくても 収束する列はいくらでもあるので、この条件は必要より強い。

必要十分まで下ろした条件が一様可積分性です[1]。裾のほうへ追いやった質量が、族全体で一斉に消えることをいいます。

これと測度収束を合わせると、 収束と同値になります。ヴィタリの収束定理と呼ばれる形です[2]

定義の 2 つの顔

上の形は裾で切った書き方です。同じ条件は、集合の側から書くこともできます[3]

任意の に対して がとれて、 ならすべての となる。

積分の絶対連続性を、族全体で一斉に成り立たせた条件です。 によらない点が要。

有限な測度空間では、 有界性と合わせて 2 つの言い方が一致します。1 つの関数の可積分性ではなく、族の性質であるところが違い[3]

例:可積分な蓋があれば一様可積分

がすべての で成り立ち、 が可積分だとします。裾の積分は蓋の裾で押さえられる。

右辺は に依存せず、 に落ちます。優収束定理の仮定は、一様可積分性を含んでいます。

つまり優収束定理はヴィタリの定理の特別な場合。蓋という強い形で条件を課していたことになります。

例:蓋がないのに一様可積分な列

の上で、重みを付けたタイプライター列を作ります。)と書き、次のように定めます。

積分は に落ちます。裾で切っても、残るのは同じ なので一様可積分です。

ところが はどの点でも になります。各 でちょうど 1 本ずつ、高さ の山が を通るため。

可積分な蓋は存在しません。優収束定理は使えず、ヴィタリの定理だけが 収束を出します。

例:一様可積分でない列

とします。各点で に収束し、測度収束もします。

裾を で切ると、 の項では山が丸ごと残ります。

上限は をどれだけ上げても のまま。一様可積分ではありません。

実際 なので 収束もしません。定理が正しく失敗しています。

赤い線が下がらないことが、一様可積分でないことの意味です。 をどこまで上げても、族のどこかに切り残しがある。

ヴィタリの収束定理

とします。可測関数列 について、次の 2 つが同値です[2]

で収束する。
に測度収束し、 が一様可積分である。

で読めば、 収束は「測度収束かつ一様可積分」と言い切れます。同値なので、片方から片方が必ず出る。

ジュゼッペ・ヴィタリの名前が付いています。優収束定理を、蓋の存在から一様可積分性へ緩めた形です[2]

優収束定理

可積分な蓋 を 1 枚見つける。十分条件で、逆は成り立たない

ヴィタリの収束定理

測度収束と一様可積分性。必要十分条件で、蓋の要らない列も拾える

無限測度では締まりが要る

のときは、条件がもう 1 つ増えます。任意の に対して有限測度の集合 がとれて、その外での積分が一斉に 未満になること[2]

一様緊密性と呼びます。質量が無限の彼方へ逃げるのを止める条件です。

の上で を見ます。高さが に落ちるので測度収束し、裾で切っても なら何も残らないので一様可積分。

それでも積分は のままです。台が右へ伸びていき、どの有限区間の外にも質量が残る。緊密でないためです。

ド・ラ・ヴァレ・プーサンの判定条件

一様可積分性を確かめる道具があります。 となる増加凸関数 が存在して、次を満たせばよい[1]

逆も成り立つので、これは同値な言い換えです。 を 1 つ見つけるだけで判定が済みます。

)を選ぶと、有限測度の上では 有界な族が一様可積分だと分かります。 もよく使われる選び方。

裾で切った定義と違い、上限を 1 回計算すれば終わります。実際の判定はこちらのほうが楽。

例: 有界な族

の上で とします。 を当てれば判定条件を満たすので、一様可積分です。

裾の側から直接示すこともできます。コーシー・シュワルツの不等式から次が出る。

最後はチェビシェフの不等式です。 に落ちるので、たしかに一様可積分。

では成り立ちません。 有界なだけの族は、背の高くなる山のように裾へ質量を逃がせます。

確率論での顔

確率変数の族 が一様可積分であることは、 が一斉に小さくなること[1]

マルチンゲールの収束定理で中心的な役割を果たします[4]。一様可積分なマルチンゲールは、概収束と 収束の両方をします。

条件付き期待値の族 は、 が可積分なら の選び方によらず一様可積分。この事実がよく使われます。

quiz で確かめる

上で が測度収束の意味で成り立つとき、 収束を保証するのはどれですか。

  • であること
  • が一様可積分であること
  • がすべて連続であること
  • が各点で単調に減ること
__RESULT__

有界なだけでは足りず、 が反例になります。一様可積分性を足すとヴィタリの定理が使え、必要十分な条件になります。

よくある誤り

一様可積分性が 1 つの関数の性質だと思う。族についての性質です
可積分な蓋がないと 収束しないと思う。重み付きタイプライター列が反例です
有界なら一様可積分だと思う。背の高くなる山が反例です
有界なら一様可積分だと思う。 と有限測度が要ります
無限測度でも条件が 2 つで済むと思う。一様緊密性がもう 1 つ要ります
優収束定理が必要十分だと思う。必要十分なのはヴィタリの定理のほうです
ド・ラ・ヴァレ・プーサンの に凸性が要らないと思う。増加凸で が条件です
一様可積分なら概収束すると思う。収束の種類は別に仮定が要ります

参考文献

Uniform integrability. Wikipedia(英語).
Vitali convergence theorem. Wikipedia(英語).
Gleichgradige Integrierbarkeit. Wikipedia(ドイツ語).
Intégrabilité uniforme. Wikipédia(フランス語).
可積分な蓋を 1 枚見つける条件は、$L^1$ 収束には強すぎます。裾へ追いやった質量が族全体で一斉に消える、それが一様可積分性。測度収束と合わせると $L^1$ 収束と同値になり、これがヴィタリの収束定理です。重みを付けたタイプライター列は、どの点でも上限が発散するので蓋を持ちません。それでも一様可積分なので $L^1$ 収束する。$G(t)/t \to \infty$ となる凸関数を 1 つ探すだけで判定が済む方法も扱います。