無限回起きるかどうかを級数だけで決める|ボレル・カンテリの補題
事象の列 について、「無限回起きる」という事象を集合で書けます。
どの番号から見ても先にまだ が現れる点の全体です。 加法族が可算合併と可算交叉で閉じているので、この集合も可測になります。
ボレル・カンテリの補題は、この集合の測度を級数だけで判定します[1]。エミール・ボレルとフランチェスコ・パオロ・カンテリによるものです。
limsup と liminf
対になる集合も同じ形で書けます。
こちらは「ある番号から先はずっと起きる」という事象です。包含 が成り立ちます。
数列の上極限・下極限とちょうど同じ構造。指示関数で書くと となり、対応がはっきりします。

第 1 補題
測度の総和が有限なら、無限回起きる集合は零集合になります[1]。
独立性は仮定しません。任意の測度空間で成り立つので、確率でなくても使えます。
証明は劣加法性 1 回で済みます。 なので、次が言える。
右辺は収束級数の裾なので、 で に落ちます。左辺は によらないので です。
例:測度収束から概収束する部分列
が に測度収束するとします。番号を選んで、次を満たすようにできます。
右辺の総和は で有限。第 1 補題から、これらの集合に無限回入る点は零集合しかありません。
外の点では、ある から先ずっと が成り立ちます。つまり部分列が概収束する。
測度論の中でボレル・カンテリがいちばんよく働く場面です。
第 2 補題
級数が発散する場合は、独立性を足せば逆向きの結論が出ます[2]。
確率空間で が独立、かつ なら、。無限回起きることが確実になります。
証明は補集合を評価します。 を使うと、有限個の積が次のように押さえられる。
指数の中が へ発散するので、右辺は 。したがって がすべての で成り立ち、共通部分も確率 です。
2 つを合わせると、独立な事象については確率が か しかありません。0-1 法則の一種です[3]。
なら無限回は起きない。独立性は要らない
と独立性から、無限回が確率 で起きる
上の帯は途中から一度も色が付きません。下の帯は間隔を空けながら、いつまでも色が付き続けます。
独立性を外すと第 2 補題が崩れる
を満たす事象 をとり、 とすべての で置きます。
ですが、 なので確率は です。 ではありません。
もっと極端な例もあります。 で とすると、測度の和は調和級数で発散します。
測度は です。独立でない列では、級数が発散しても結論が出ません[3]。
第 1 補題に独立性が要らないのは、劣加法性だけで済むから。第 2 補題は積に分解する必要があり、そこで独立性を使います。
測度空間としての確率空間
確率空間とは、全測度が の測度空間 のことです。呼び名が変わるだけで、中身は測度論そのもの。
| 測度空間 | 確率空間 |
| 可測集合 | 事象 |
| 可測関数 | 確率変数 |
| 積分 | 期待値 |
| 概収束 | 概収束(ほとんど確実に) |
| 測度収束 | 確率収束 |
言葉が 2 系統あるのは歴史的な事情です。測度論で証明した定理は、そのまま確率論の定理になります。
例:コイン投げで表が無限回出る
公正なコインを独立に投げ続けます。 を「 回目が表」とすると で、和は発散。
独立なので第 2 補題が使えて、表が無限回出る確率は です。当たり前に見える主張に、きちんと根拠が付きます。
「10 回連続で表」という事象でも同じ。 回目から 10 回を見る事象は独立でないので、 回ごとに区切って独立な部分列を作ります。
区切った列では で和が発散するため、10 連続の表も無限回起きる。文章がいつか打ち出されるという主張も、同じ形で示せます[1]。
例:ほとんどすべての実数は正規数
ボレルは、 のほとんどすべての数が正規数であることを示しました[1]。どの桁の並びも、あるべき頻度でちょうど現れる数のこと。
証明の骨格に第 1 補題が使われます。頻度が偏る事象の確率が十分速く減ることを示し、無限回起きないと結論する。
具体的な数を 1 つ挙げるのは難しい。それでも「ほとんどすべて」は言えるという、測度論らしい形の主張です。
上のルベーグ測度で とします。正しいものはどれですか。
- が発散するので
- は発散するが は空集合
- が収束するので
- になる











和は調和級数なので発散します。それでも An は減少列なので、共通部分は空。第 2 補題には独立性が要り、この列は独立ではありません。