Tychonoffの定理

Tychonoffの定理はコンパクト空間の任意個の直積がコンパクトであることを主張します。選択公理と同値であり、位相空間論の最も重要な定理の一つです。

定理の主張

コンパクト空間の族 に対して、積空間 (積位相)はコンパクトである。

有限個の直積については選択公理なしで証明できますが、無限個の場合は選択公理(またはその同値な形)が本質的に必要です。

有限直積の場合

2つのコンパクト空間 の直積 がコンパクトであることは、次のように示せます。

の開被覆 を取ります。各 に対して、 はコンパクトなので の有限部分被覆を持ちます。この有限部分被覆の和集合は の形の開集合を含み( の開近傍)、 の開被覆となります。 のコンパクト性から有限部分被覆が取れ、全体の有限部分被覆が構成できます。

一般の場合の証明

無限直積の場合、Alexanderの補基底定理を用います。

準基底による開被覆が有限部分被覆を持てば、空間はコンパクトです。積位相の準基底は の開集合)の形なので、この形の集合からなる被覆に有限部分被覆があることを示します。

ここで選択公理(Zornの補題の形)を用いて、有限部分被覆を持たない極大な被覆を考え、矛盾を導きます。

Tychonoffの定理と選択公理

Tychonoffの定理は選択公理と同値です。

選択公理から Tychonoffの定理が従うことは上述の通りです。逆に、Tychonoffの定理から選択公理を導くこともできます。2点離散空間の無限直積を用いて証明します。

Tychonoffの定理の応用

Tychonoffの定理は多くの場面で応用されます。

Banach-Alaogluの定理:双対空間の単位球の弱*コンパクト性
Stone-Čechコンパクト化の存在証明
確率論におけるKolmogorovの拡張定理

コンパクト性を用いる議論の多くで、背後にTychonoffの定理が働いています。