z2z1 の絶対値は ∣z2∣∣z1∣、偏角は argz1−argz2 です。
掛け算で足された偏角が、割り算では引かれます[1]。長さのほうも掛け算から割り算へ変わるだけ。
r2(cosθ2+isinθ2)r1(cosθ1+isinθ1)=r2r1(cos(θ1−θ2)+isin(θ1−θ2))
分母を実数にしてから割る
a+bi の形で答えが要るときは、分母の共役を分子と分母に掛けます。
z2z1=z2z2ˉz1z2ˉ=∣z2∣2z1z2ˉ
分母が ∣z2∣2 という実数になり、あとは実数で割るだけになります[1]。
割り算が定義できるのは z2=0 のときだけ。∣z2∣2=0 になると分母が消えます。
例:7−3i3+2i
分母の共役は 7+3i です。分子と分母の両方に掛けます。
(7−3i)(7+3i)(3+2i)(7+3i)=49+921+9i+14i+6i2=5815+23i
5815+5823i になります。分母の 58 は ∣7−3i∣2=49+9 そのもの。
極形式なら引き算で済む
共役を掛ける手は、実部と虚部が要るときの手です。角度が知りたいだけなら極形式のほうが速い。
z21 を掛けると、z1 を −θ2 だけ回して r21 倍することになります[1]。掛け算のちょうど逆の動きです。
z2 を掛けてから z2 で割ると元へ戻る。回して伸ばしたものを、戻して縮めているだけの話になります。
例:極形式のまま割る
z1=2(cos120∘+isin120∘)、z2=2(cos45∘+isin45∘) とします。
絶対値は 22=2、偏角は 120∘−45∘=75∘ です。
z2z1=2(cos75∘+isin75∘)
75∘ の値を覚えていなくても、この形のまま答えにできます。実部と虚部へ落とすと cos75∘ の計算が要るので、かえって遠回りになる。
例:z1 が表す動き
z1=1 とした場合です。絶対値は ∣z∣1、偏角は −argz になります。
長さが逆数になり、実軸で折り返される。単位円に関する反転と、実軸の折り返しを続けた動きにあたります。
z1=∣z∣2zˉ
∣z∣=1 なら z1=zˉ です。単位円の上では、逆数と共役が同じ点になります[3]。
canvas: 式は呼び出しにそのまま書いてください。この引数は焼けません -> drawMath(… invMark[index][2] …)
例:i で割る
i1=−i です。i の偏角が 90∘ なので、割ると −90∘ 回ります。
iz は −i を掛けたものと同じで、時計回りに 90∘ 回した点になります。
z=2+3i なら i2+3i=(2+3i)(−i)=−2i+3=3−2i。実部と虚部が入れかわって符号が付く形です。
例:2 点のなす角を出す
β−αγ−α の偏角は、α から β へ向かう矢印と、α から γ へ向かう矢印のなす角です[3]。
割り算が偏角の差になるので、2 本の矢印の角度差がそのまま出てきます。
α=0、β=2、γ=1+3i なら 21+3i で、偏角は 60∘。角 βαγ が 60∘ だと分かります。
| z2z1 | ∣z2∣∣z1∣ |
| argz2z1 | argz1−argz2 |
| z1 | ∣z∣2zˉ |
| ∣z∣=1 のとき z1 | zˉ |
| (z2z1) | z2ˉz1ˉ |
例:割り算と累乗を混ぜる
(1−i)4(1+i)6 を出します。1+i の絶対値は 2、偏角は 45∘。1−i は絶対値 2、偏角 −45∘ です。
分子は絶対値 (2)6=8、偏角 270∘。分母は絶対値 (2)4=4、偏角 −180∘ になります。
割ると絶対値 48=2、偏角 270∘−(−180∘)=450∘。360∘ を引いて 90∘ です。
(1−i)4(1+i)6=2(cos90∘+isin90∘)=2i
展開せずに済みました。累乗と割り算が混ざるほど、極形式が効きます[2]。
例:偏角の差が 360∘ をまたぐ
argz1=30∘、argz2=300∘ なら、差は −270∘ です。
0∘ 以上 360∘ 未満でそろえるなら 360∘ を足して 90∘。同じ点を指しますが、書き方が変わります。
偏角は 360∘ ずらしても同じ点なので、答えの範囲を先に決めておくと迷いません[2]。
2(cos50∘+isin50∘)4(cos200∘+isin200∘) を極形式で表すとどれですか。
- 2(cos150∘+isin150∘)
- 2(cos250∘+isin250∘)
- 8(cos150∘+isin150∘)
__RESULT__
絶対値は 24=2、偏角は 200∘−50∘=150∘ です。250∘ は偏角を足してしまった値、8 は絶対値を掛けてしまった値になります。
補足
z2z1 が実数になるのは、z1 と z2 の偏角が等しいか 180∘ 違うときです。原点と 2 点が一直線に並ぶ形。
純虚数になるのは偏角の差が ±90∘ のときで、こちらは 2 本の矢印が直角に交わる形になります。
商の偏角を見るだけで、平行と垂直が判定できる。図形の問題で割り算が出てくるのは、この読み替えが効くためです。
割り算は偏角の引き算。この一行を先に置いておくと、極形式の計算はほとんど暗算で進みます。
参考
Marc Deisenroth. *Complex Numbers*. Revision Notes, Imperial College London, Department of Computing, 2017. Jörn Dunkel, Jeremy Orloff. *18.04 Complex Analysis with Applications*. MIT, Spring 2019.
$\dfrac{z_1}{z_2}$ の絶対値は $\dfrac{|z_1|}{|z_2|}$、偏角は $\arg z_1 - \arg z_2$。掛け算で足された偏角が、割り算では引かれます。$a+bi$ の形が要るときは分母の共役を掛けて $|z_2|^2$ という実数に変え、角度だけが要るときは極形式のまま引く。$\dfrac{1}{z}$ は長さが逆数になって実軸で折り返る動きで、単位円の上では共役と一致します。$\dfrac{(1+i)^6}{(1-i)^4}$ を展開せずに $2i$ と出す手順、$\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$ の偏角が 2 本の矢印のなす角になる読み方まで扱いました。
絶対値は 24=2、偏角は 200∘−50∘=150∘ です。250∘ は偏角を足してしまった値、8 は絶対値を掛けてしまった値になります。