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虚数解は 1 つだけでは現れない - 実数係数がつくる対

係数がすべて実数の方程式では、 が解なら も解になる[1]。

虚数解は 1 つだけでは現れない。かならず共役の相手を連れてくる。

共役をとっても式が壊れない

とし、係数はすべて実数とする。 をみたす をとる。

両辺の共役をとる。共役は和と積を素通りするので、各項へばらばらに入っていく[2]。

ここで係数が実数なので に戻る。右辺は そのものになる。

も解である。使ったのは「係数が実数」の一点だけ[1]。

証明が短く済むのは、共役が和と積を素通りするからである。

と 。この 2 本で多項式の中を通り抜ける。

解は実軸に関して対称に並ぶ

共役をとる操作は、実軸で折り返す操作だった。解の集合が折り返しで自分に戻る、という形になる。

実軸の上に乗った解は動かない。実数解だけが、相手なしで単独に存在できる。

例:

解の公式に入れると、根号の中が になる。

と 。実部が同じで虚部の符号だけが違い、共役の対になっている。

例:3 次方程式で残りを出す

が を解にもつとする。係数はすべて実数である。

共役の も解になる。この 2 つを掛け合わせると、実数係数の 2 次式が出てくる。

もとの 3 次式をこれで割ると が残る。3 つ目の解は である。

代入すると 。虚数解が 1 つ与えられただけで、残りが全部決まった。

奇数次には実数解がある

次方程式の解は重複を数えて 個ある。虚数解は 2 個ずつの組になるので、その総数はかならず偶数になる。

が奇数なら、偶数を引いた残りは奇数。 にはならないので、実数解が少なくとも 1 つ残る[3]。

3 次方程式が実数解を必ずもつのは、この理由による。グラフが必ず 軸を横切ることとも一致する。

虚数解は 2 個ずつの組になる

組の総数はかならず偶数

奇数次なら実数解が 1 つ以上残る

例:4 次方程式

偶数次では実数解が 1 つもない場合がありうる。 がその例である。

解は絶対値 、偏角 、、、 の 4 つ。どれも実軸から外れている。

上半分の 2 つと下半分の 2 つが、実軸をはさんで対になっている。組が 2 つで、余りは出ない。

実数の範囲で分解できる

共役の対 と を掛けると、次の式になる。

は実部の 2 倍、 は絶対値の 2 乗。どちらも実数である。

だから実数係数の多項式は、実数係数の 1 次式と 2 次式だけの積に分解できる[3]。3 次以上の実数係数の既約な因数は存在しない[4]。

例: を分解する

上の 4 解を、上下の対でまとめる。 と の組、 と の組である。

展開すると となり、確かに に戻る。

1 次式では書けないのに、2 次式なら実数係数で書ける。虚数解が対になっている効果が、そのまま形に出ている。

例:重複度もそろう

が 重解なら、 も 重解になる[4]。

では、 と がどちらも 2 重解である。片方だけ重なることはない。

分解した形が なので、両方に同じ指数が付く。

例:係数が複素数だと崩れる

を解く。因数分解すると である。

解は と 。 の共役 を代入すると となり、 にならない。

係数に が混じった時点で、共役をとる操作が式を保たなくなる。定理が実数係数を要求する理由がここにある。

実数係数

なので、共役をとっても同じ方程式に戻る

複素数係数

係数まで共役になり、別の方程式へ移る。解の対称性は消える

例:解と係数の関係で確かめる

と を解にもつ 2 次方程式をつくる。和は 、積は である。

どちらも実数になり、実数係数の方程式が組み上がった。虚部が打ち消し合うため、対にすると係数がかならず実数へ落ちる。

実数係数の 4 次方程式が と を解にもつとき、残る解はどれか。

  • と、実数がもう 1 つ
  • と
  • と
__RESULT__

が解なら も解になる。ここまでで 3 つ決まり、残る 1 つは共役の相手を持たないので実数である。 に決まる理由はどこにもなく、 は共役ではなく符号を全部変えた数になる。

まちがえやすい点

実部の符号まで変える。共役は虚部だけを反転させる。
係数が複素数の方程式にも当てはめる。実数係数のときだけ成り立つ。
実数解にも共役の相手が要ると考える。実数は自分自身が共役である。

共役が和と積を素通りする。その一点だけで、解の並びに実軸対称という強い制限がかかる。

参考

Complex conjugate root theorem - Wikipedia
Complex conjugate - Wikipedia
Fundamentalsatz der Algebra - Wikipedia
Théorème de d'Alembert-Gauss - Wikipédia
係数がすべて実数なら、$1+2i$ が解のとき $1-2i$ も解になります。証明で使うのは共役が和と積を素通りすることだけ。$\overline{P(\zeta)} = P(\overline{\zeta})$ が成り立ち、$0$ の共役は $0$ のままです。虚数解が 2 個ずつの組になるので総数は偶数、奇数次の方程式には実数解が必ず 1 つ以上残ります。$z^3-5z^2+17z-13=0$ では $2+3i$ が 1 つ分かるだけで残り 2 つが決まり、$z^4+1$ は実数係数の 2 次式 2 つに割れる。係数に $i$ が混じると、この対称性がその場で消えます。