複素数の積は回転、実部はベクトルの内積
平面上の 点を書き表す道具が つあります。成分を並べたベクトル と、複素数 。
足し算も実数倍も、この つはまったく同じに動きます。 と を比べれば、書き方が違うだけ。
分かれるのはその先です。複素数には掛け算があり、ベクトルには内積がある。どちらを使うかは、問題がどちらの演算を要求しているかで決まります。
掛け算があるのが複素数
複素数どうしの積は、絶対値を掛けて偏角を足す操作でした。つまり回転と拡大が積 つで書けます。
同じことをベクトルでやるには回転行列が要ります。
動きは左右でぴったり重なります。書く量が違うだけ。回転が何度も重なる問題では、複素数のほうは指数の足し算に落ちるので差が広がります。
内積は実部に隠れている
では複素数に内積はないのか。あります。, として を展開してみる。
実部がベクトルの内積そのもの。虚部は つのベクトルが張る平行四辺形の符号付き面積です。
太い横棒が を の向きへ落とした影で、その長さが にあたります。 本が直角になった瞬間に影が消え、下のバーも を通る。
平行と垂直を 1 つの式で
内積と面積が実部と虚部に入っているので、条件も 本の式で書けます。
| が実数 | と は平行 |
| が純虚数 | と は垂直 |
点 , , が一直線に並ぶ条件が が実数、直角になる条件がそれが純虚数、と書けるのも同じ理由です。割り算は の形と絶対値の 乗だけ違う。
正三角形の頂点は複素数が速い
頂点 , が決まっているとき、正三角形の第 頂点は 度の回転で出ます。
を原点へ移し、回して、戻す。それだけです。
回す向きは 通りあるので、第 頂点も上下に つずつ。同じことをベクトルでやると、成分をおいて長さと角度の条件を連立することになり、手数が増えます。
同じ問題を 2 通りで解く
と を 頂点とする正三角形の、残りの頂点を求めます。
複素数なら , とおくだけ。 を 度回して に戻します。
展開して整理すると 、つまり座標で です。
ベクトルで解くなら、 とおいて と の 式を立てます。どちらも 乗の形になるので、引き算で直線を作り、代入して 次方程式を解く流れ。
答えは同じですが、通る道の長さが違います。回転という操作が式に直接書ける複素数のほうが、この問題では短い。
ベクトルが強い場面
とはいえ複素数がいつも有利なわけではありません。空間の問題には複素数が使えない。 次元の点は の形に収まらないので、そこはベクトルの領分です。
内積そのものを主役にする問題も、ベクトルのほうが素直に書けます。 と書けば済むものを、わざわざ と書き直す理由はありません。
成分計算が多い問題も同じ。連立方程式に持ち込むなら、最初から成分で持っておくほうが速い。
選び方はひとつの問いで決まる
回転が出てくるか。この一点で決めて、だいたい当たります。
平面で回転が絡み、しかも角度が 度や 度のようにきれいなら、複素数へ移すと式が短くなる。逆に回転が出てこないなら、複素数に置きかえる利点はほとんどありません。
同じ図形を両方で解いてみると、どちらの道具がどこで効くかが体で分かります。手が余っているときに試す価値のある練習です。








