z=x+yi の絶対値は r=x2+y2 で一発で決まります[1]。
偏角のほうは tanθ=xy から候補が 2 つ出ます。tan の周期が 180∘ なので、逆にたどると 180∘ 違う 2 つが残る[1]。
どちらを選ぶかは、点がどの象限にあるかで決めます[3]。
絶対値は迷わない
r は原点からの距離なので、正の数がただ 1 つ決まります。
r=∣z∣=x2+y2
z=2−2i なら 4+4=22。符号を気にする場面がありません。
偏角は 2 つの候補から選ぶ
tanθ=xy を解くと、180∘ 離れた 2 つの角が出ます。
xy は x と y の符号を両方とも反転させても変わりません。原点をはさんで反対側の点が、同じ比を与えるためです。
比だけでは足りない。x と y それぞれの符号を見て、点がどの象限にいるかを確かめます[3]。
例:2−2i
r=4+4=22 です。tanθ=2−2=−1。
候補は 135∘ と 315∘ になります。実部が正、虚部が負なので第 4 象限です[1]。
2−2i=22(cos315∘+isin315∘)
135∘ を選ぶと −2+2i になってしまう。値が原点対称の位置へ飛びます。
例:−1+i
r=1+1=2、tanθ=−11=−1 です。候補はさきほどと同じ 2 つ。
実部が負、虚部が正なので第 2 象限。135∘ を選びます[1]。
−1+i=2(cos135∘+isin135∘)
tan の値が同じでも、答えが違う。比だけを見て決められない理由がここにあります。
例:実部が 0 のとき
z=−23i では tanθ が計算できません。分母が 0 になります。
r=23 で、点は虚軸の負の側にあります。偏角は 270∘ です[3]。
軸の上に乗る点は、象限で決めるのではなく直接読みます。x 軸の正なら 0∘、負なら 180∘。y 軸の正なら 90∘、負なら 270∘ になる。
| 第 1 象限 | x>0、y>0。0∘ から 90∘ |
| 第 2 象限 | x<0、y>0。90∘ から 180∘ |
| 第 3 象限 | x<0、y<0。180∘ から 270∘ |
| 第 4 象限 | x>0、y<0。270∘ から 360∘ |
範囲を先に決めておく
偏角に 360∘ の整数倍を足しても同じ点を指します[2]。書き方が何通りもある。
そこで範囲を 1 つ決めて使います。0∘ 以上 360∘ 未満か、−180∘ より大きく 180∘ 以下か。後者は主値と呼ばれます[3]。
どちらでも同じ点を表しますが、途中の計算で答え合わせをするときに食い違います。問題ごとに 1 つ選び、最後までそろえます。
例:極形式から直交形式へ戻す
r=2、θ=120∘ の点を x+yi に直します。こちらは迷いません。
x=2cos120∘=−1、y=2sin120∘=3 です[1]。
z=−1+3i
戻すときは代入するだけ。行きだけが象限の判断を必要とします。
例:極形式が効く場面
(−1+i)8 を出します。極形式は 2(cos135∘+isin135∘) でした。
絶対値は (2)8=16、偏角は 135∘×8=1080∘。360∘ で 3 周ぶん引いて 0∘ です。
(−1+i)8=16(cos0∘+isin0∘)=16
偏角をまちがえていたら、ここで符号が反転します。最初の象限の判断が最後まで効いてくる。
z=−3−33i の偏角はどれですか。ただし 0∘ 以上 360∘ 未満とします。
__RESULT__
tanθ=−3−33=3 なので候補は 60∘ と 240∘ です。実部も虚部も負なので第 3 象限、よって 240∘。60∘ は符号を見なかった値、300∘ は第 4 象限と読みちがえた値になります。
まちがえやすい点
tan の値だけで偏角を決める。180∘ 違う候補が残ります。
xy の符号だけを見る。x と y それぞれの符号が要ります。
実部が 0 のときに tan を使おうとする。軸の上なので直接読みます。
偏角の範囲を決めずに進める。同じ点が違う値で書けて、答え合わせが合わなくなります。
arctan の値をそのまま答えにする。返る角は −90∘ から 90∘ の範囲に限られます。
絶対値は計算、偏角は判断。この 2 つを分けておけば、極形式に直すところでつまずかなくなります。
参考
Marc Deisenroth. *Complex Numbers*. Revision Notes, Imperial College London, Department of Computing, 2017. Jörn Dunkel, Jeremy Orloff. *18.04 Complex Analysis with Applications*. MIT, Spring 2019. Complex Argument. Wolfram MathWorld.
絶対値 $\sqrt{x^2+y^2}$ は正の数がただ 1 つ決まりますが、偏角は $\tan\theta = \frac{y}{x}$ から $180^\circ$ 離れた候補が 2 つ出ます。$\frac{y}{x}$ は $x$ と $y$ を同時に反転させても変わらないため。比だけでは足りず、それぞれの符号で象限を決めます。$2-2i$ と $-1+i$ は $\tan$ が同じ $-1$ でも $315^\circ$ と $135^\circ$ に分かれる。実部が $0$ の点は軸の上なので直接読み、偏角の範囲は $0^\circ$ 以上 $360^\circ$ 未満か主値かを先に決めておきます。
tanθ=−3−33=3 なので候補は 60∘ と 240∘ です。実部も虚部も負なので第 3 象限、よって 240∘。60∘ は符号を見なかった値、300∘ は第 4 象限と読みちがえた値になります。