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3 倍角の公式をド・モアブルの定理から作る

倍角の公式を覚えていなくても、その場で作れます。使うのはド・モアブルの定理ひとつ。

左辺を二項定理で展開してから、実部どうし・虚部どうしを見比べる。加法定理を 回重ねる手間が要りません。

が 周するあいだに は 周します。偏角が 倍の速さで進む、という一点だけが定理の中身。角度が 倍になれば、 と の中身も 倍になります。

2 乗で流れをつかむ

まず で手つきを確かめます。左辺を展開すると

右辺は 。実部と虚部をそれぞれ見比べれば、 倍角の公式が 本同時に出ます。

本まとめて出てくるのが、この方法の得なところ。加法定理から作ると 本ずつになります。

3 乗して 3 倍角へ

同じことを 乗でやります。, と略すと展開は 項。

, を使うだけです。実部は 、虚部は になります。

つの項は横・縦・横・縦と交互に伸びます。実数の項は実軸方向、 の付いた項は虚軸方向へ進むため。継いだ先が必ず単位円の上に乗るところが、この定理の言っていることです。

実部と虚部を突き合わせる

展開の結果を と比べます。 を入れて だけにすると

のほうを入れれば、虚部から の式が出ます。

符号の並びまで含めて、覚えるより作るほうが速い。

5 倍角も同じ手つき

でも変わりません。二項係数 を並べ、 の累乗を掛けて実部だけ拾います。

虚部からは が出る。係数が とそろうのは偶然ではありません。

cos nθ は cosθ の多項式になる

を展開すると、 は必ず偶数乗でしか現れません。 で消えるので、残るのは の 次式だけ。

チェビシェフ多項式と呼ばれる列がこれで、, , と続きます。

薄い波が 、濃い波が です。同じ区間で 倍の回数だけ振れる。回転の速さが 倍という最初の図と、同じことを別の見え方で描いています。

tan にも降りられる

と の式が出れば、割り算で の倍角も作れます。 として分子分母を で割ると

が出ます。 の公式だけを別に覚える必要はない。

3 次方程式が三角比で解ける

倍角の公式は、方程式を解く道具としても働きます。

左辺の形は そのもの。そこで とおくと、方程式は に変わります。

が 度、 度、 度のとき条件を満たすので、 は 度、 度、 度。解は , , の つになります。

因数分解では歯が立たない 次方程式が、置きかえ一つで角度の問題に化ける。 の範囲に解が つそろう形なら、この道を疑ってみる価値があります。

定理の出どころ

この関係を最初に扱ったのはアブラーム・ド・モアブルです。よく知られた形が現れるのは 1722 年の論文で、近い形の式はすでに 1707 年の論文に出ていました(MacTutor History of Mathematics Archive)。

複素数を平面上の点として描く見方が広まるのは、それよりあとの話。式が先にあり、図はあとから付いてきました。

(cosθ + i sinθ) の n 乗を二項定理で展開し、実部と虚部を見比べる。それだけで n 倍角の公式が 2 本同時に出ます。3 倍角も 5 倍角も手つきは同じで、覚えるより速い。cos nθ が cosθ の n 次式になる理由、tan の倍角へ降りる割り算、4x³ - 3x = 1/2 のような 3 次方程式が角度の問題に化ける場面まで扱いました。