cosθ+cos2θ+⋯+cosnθ を直接足す手はありません。cos どうしに足し算の公式がないためです。
sin の和を虚部として抱き合わせると、等比数列に化けます[1]。
C+iS=k=0∑n(coskθ+isinkθ)=k=0∑nzk
z=cosθ+isinθ とおいた形です。右辺は公比 z の等比数列の和になります。
抱き合わせると足せる
coskθ と sinkθ は、別々に見ると規則のない数の列です。
組にして coskθ+isinkθ にすると、ド・モアブルの定理から zk と書けます。k が増えるたびに z が 1 つ掛かる。
等比数列なので和の公式が使えます[2]。z=1 のとき、次の形です。
k=0∑nzk=1−z1−zn+1
あとは実部と虚部に分ければ、C と S が同時に出ます。1 回の計算で 2 つの和が片づく。
例:θ の倍数だけを足す
z=cosθ+isinθ で和の公式を当てます。分子と分母を整理すると、きれいな形になります。
1−zm=−zm/2(zm/2−z−m/2) と書け、括弧の中は 2isin2mθ です。
分子と分母で同じ変形をすると、2i が約分されます。
C+iS=sin2θsin2(n+1)θ(cos2nθ+isin2nθ)
実部と虚部を読みます。
C=sin2θsin2(n+1)θcos2nθ,S=sin2θsin2(n+1)θsin2nθ
θ が 360∘ の整数倍だと分母が 0 になります。そのときは全部の項が 1 なので、C=n+1、S=0 です。
例:数値で確かめる
n=2、θ=60∘ とします。直接足すと cos0∘+cos60∘+cos120∘=1+21−21=1。
公式に入れます。2(n+1)θ=90∘、2nθ=60∘、2θ=30∘ です。
C=sin30∘sin90∘cos60∘=211×21=1
合いました。S のほうは 211×23=3 で、0+23+23 と一致します。
公比が付いても同じ手が効く
∑akcoskθ のように係数が等比で減る場合も、抱き合わせれば片づきます[1]。
C+iS=k=0∑n(az)k
公比が az に変わるだけ。∣az∣=∣a∣ なので、∣a∣<1 なら n を無限に飛ばせます[3]。
例:無限に足す
∣a∣<1 とします。n→∞ で (az)n+1→0 なので、和は 1−az1 に落ちます[2]。
分母の共役を掛けて実部と虚部に分けます。∣1−az∣2=1−2acosθ+a2 です。
C=1−2acosθ+a21−acosθ,S=1−2acosθ+a2asinθ
cos の無限和と sin の無限和が、1 つの分数から同時に出ました。
例:a=21、θ=60∘
分母を計算します。1−2×21×21+41=43 です。
分子は 1−21×21=43。
C=3/43/4=1
cos の側は 1 になりました。sin の側は 4321×23=33 です。
項を書き出すと 1+0.25−0.125−0.125−0.03125+… と続き、1 に寄っていきます。
例:θ が特別な値のとき
θ=180∘ なら z=−1 です。coskθ は 1、−1 が交互に並びます。
C+iS=∑(−1)k で、n が偶数なら 1、奇数なら 0 になります。公式の分母 sin90∘=1 で計算しても同じ値が出る。
θ=0∘ だけが分母を 0 にする例外です。この場合は場合分けして扱います。
| 組にする | C+iS=∑zk |
| 公比 | z=cosθ+isinθ |
| 有限和 | 1−z1−zn+1 |
| 無限和 | 1−az1、∣a∣<1 |
| 例外 | θ が 360∘ の整数倍 |
k=0∑∞(31)kcoskθ で θ=90∘ のときの値はどれですか。
__RESULT__
cos90∘=0 なので分子は 1、分母は 1−0+91=910 です。よって 109 になります。項を並べると 1+0−91+0+811+… で、確かに 1 より少し小さい値に寄ります。
つまずきやすいところ
cos だけを足そうとする。sin を虚部として抱き合わせます。
公比を θ そのものにする。公比は cosθ+isinθ です。
θ が 360∘ の整数倍の場合を忘れる。分母が 0 になるので別扱いにします。
実部と虚部に分ける前に答えを書く。C は実部だけです。
無限和で ∣a∣<1 を確かめない。1 以上なら収束しません。
項数を n とする。k=0 から始めると項数は n+1 です。
cos の和は sin の和と組にすると等比数列になる。単独では手が出ない和が、抱き合わせた瞬間に公式の届く形へ変わります。
出典
Marc Deisenroth. *Complex Numbers*. Revision Notes, Imperial College London, Department of Computing, 2017. Geometric Series. Wolfram MathWorld. Jörn Dunkel, Jeremy Orloff. *18.04 Complex Analysis with Applications*. MIT, Spring 2019.
$\cos$ どうしに足し算の公式はありませんが、$\sin$ の和を虚部として抱き合わせると $C+iS = \sum z^k$ という等比数列に化けます。$z = \cos\theta+i\sin\theta$ が公比で、和の公式を当てて実部と虚部に分ければ 2 つの和が同時に出る。有限和は $\frac{\sin\frac{(n+1)\theta}{2}\cos\frac{n\theta}{2}}{\sin\frac{\theta}{2}}$、係数が等比で減る無限和は $\frac{1-a\cos\theta}{1-2a\cos\theta+a^2}$ になります。$\theta$ が $360^\circ$ の整数倍のときだけ分母が $0$ になり、別扱いが要ります。
cos90∘=0 なので分子は 1、分母は 1−0+91=910 です。よって 109 になります。項を並べると 1+0−91+0+811+… で、確かに 1 より少し小さい値に寄ります。