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ジューコフスキー変換〜円が翼の形に化ける仕組み

ジューコフスキー変換は、 とその逆数を足すだけの対応である[1]。

これで円を写すと、線分になったり楕円になったり、飛行機の翼の断面になったりする。

単位円は線分につぶれる

を入れる。 なので、虚部が打ち消し合う。

像は実軸の から までの線分である[1]。円がぺしゃんこにつぶれた。

が から まで回るあいだに、点は線分の上を往復する。上半分と下半分が同じ場所へ重なる。

半径を変えると楕円になる

とする。 なら虚部が残る。

横の半径が 、縦の半径が の楕円である。

なら と 。 を に近づけると縦がつぶれ、線分に戻っていく。

半径 1 の円は線分になる

半径を変えると楕円になる

中心をずらすと翼の形になる

角が保たれない点がある

を微分する。

これが になるのは と のときである。ほかの点では にならない。

微分が でない点では角が保たれる[3]。 だけが例外で、そこでは角が 倍に開く。

の像は 、 の像は である。線分の両端がちょうどこの 2 点になっていた。

尖りが生まれる仕組み

円が を通ると、像の のところに尖りができる[1]。

角が 倍になる点なので、円のなめらかな曲がりが引き伸ばされる。もとの円で に開いていた向きが、像では に開く。

これが翼の後ろ端の鋭い形になる。前の端は を通らないので、丸いまま残る[2]。

尖った後端と丸い前端。この組み合わせが翼らしい断面をつくっている。

例:中心をずらした円

中心を 、半径を にとる。 なので、円はちょうど を通る。

との距離は で半径より小さい。 は円の内側に入り、通らない。

像は後端が尖り、前端が丸い形になる。上下は対称で、そりのない翼にあたる[2]。

半径を大きくすると厚みが増す。中心をどれだけ左へ寄せるかが、厚みを決めている[2]。

例:そりを付ける

中心を に動かす。半径は を通るように とする。

上下の対称が崩れ、像が反り返る。虚部をどれだけ持ち上げるかが、そりの量になる[2]。

厚みとそりを 2 つの数で調整できる。円という単純な形から、翼という複雑な形が出てくる仕組みである。

例:円の外側がどこへ行くか

の範囲だけを写すと、像は線分の外側全体を 1 対 1 で覆う。

と を入れかえても は同じ値になる。だから円の内側と外側が同じ像へ重なる。

外側だけに限れば重なりが消える。空気の流れを扱うときに外側だけを使うのは、この理由による。

式
単位円線分 から
半径 の円横 、縦 の楕円
角が崩れる点 と
を通る円後端が尖る
中心の実部厚みを決める
中心の虚部そりを決める

半径 の円は でどんな形に写るか。

  • 横 、縦 の楕円
  • 半径 の円
  • 線分
__RESULT__

なら横が 、縦が である。円のままにならないのは、 の項が偏角の符号を反転させて虚部を打ち消す向きに働くため。線分になるのは のときだけ。

円に逆数を足す。それだけの式が、 で角を 倍にひろげ、なめらかな曲線に尖りを生む。

参考

The Joukowsky Airfoil. Complex Analysis.
John D. Cook. *Airfoils*. 2023.
Conformal Mapping. Wolfram MathWorld.
$w = z+\frac{1}{z}$ に単位円を入れると虚部が打ち消し合い、像は実軸の $-2$ から $2$ までの線分につぶれます。半径を $r$ にすると横 $r+\frac{1}{r}$、縦 $r-\frac{1}{r}$ の楕円。微分 $1-\frac{1}{z^2}$ が $0$ になるのは $z=\pm 1$ だけで、そこでは角が 2 倍に開きます。円が $z=1$ を通るようにとると像の $w=2$ に尖りが生まれ、$z=-1$ は内側に入るので前端は丸いまま。中心の実部が厚み、虚部がそりを決め、円という単純な形から翼の断面が出てきます。