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ド・モアブルの定理を帰納法で証明し、負の指数まで伸ばす

ド・モアブルの定理は、累乗が偏角を 倍にすると述べている[2]。

が自然数のときは、掛け算の規則をくり返すだけで出る[1]。掛けるたびに偏角が 増えるので、 回で になる。

負の整数まで伸ばせる。ただし分数の指数では、等式の意味が変わる[1]。

積の規則をくり返す

絶対値 の複素数どうしを掛けると、偏角が足される。長さは のまま動かない。

右辺を展開すると、実部が 、虚部が になる。三角関数の加法定理そのものである[3]。

同じ数を 回掛ければ、偏角は を 回足した値になる。これが定理の中身である。

帰納法で示す

では両辺が で、そのまま成り立つ[1]。

で成り立つと仮定する。 乗を 乗と 1 個の積に分ける。

最後の行で積の規則を 1 回使った。 で成り立てば でも成り立つので、すべての自然数で成り立つ[1]。

例:2 乗から加法定理が出る

を入れる。左辺を素直に展開すると次のようになる。

右辺は である。実部どうし、虚部どうしを見比べる。

と が同時に出た。2 倍角の公式が 1 行の計算から落ちてくる。

負の指数へ伸ばす

が負のときは と置く。 は正の整数である。

分母の共役を掛けると、分母が になる[1]。

が偶関数、 が奇関数なので符号がそろう。 は両辺が で、これも成り立つ。整数全体へ広がった[2]。

例:

絶対値は 、偏角は である。 乗すると絶対値は 。

偏角は で、 を引いて になる。

二項定理で展開すると 13 項になる。極形式なら 2 行で済む。

例:

絶対値は 、偏角は である。

に を足して 。

の逆数をとっても同じ値になる。負の指数でも手順は変わらない。

例:何乗すると に戻るか

が になる最小の自然数 を探す。

定理から偏角は 度である。 の偏角は なので、 が の倍数になればよい。

から である。最小は 。

絶対値が の数だけがこの形で戻る。絶対値が でなければ、何乗しても長さが に戻らない。

有理数の指数では言い方が変わる

が分数のとき、左辺は 1 つの値に決まらない。 なら平方根が 2 つあるためである。

このとき定理は「 は左辺の値の 1 つである」という形になる[1]。すべてを尽くしてはいない。

、 で試す。右辺は だが、左辺の には も含まれる。

等号を「等しい」と読むか「候補の 1 つ」と読むか。整数と分数のあいだにこの段差がある。

が自然数等式として成り立つ
両辺が
が負の整数等式として成り立つ
が分数右辺は左辺の値の 1 つ

例:分数の指数で数える

、 とする。右辺は である。

左辺の は の 3 乗根なので 3 つある。 のほかに つの虚数が入る。

右辺が拾えるのはそのうち 1 つだけ。残りを出すには偏角へ の整数倍を足し直す必要がある。

の値はどれか。

__RESULT__

偏角は である。絶対値は のままなので になる。 は偏角を と見た値、 は符号を落として とした値。

偏角を 倍し、絶対値を 乗する。整数の範囲ではこの 2 行で閉じており、分数へ踏み出したところで値が枝分かれする。

参考文献

Marc Deisenroth. *Complex Numbers*. Revision Notes, Imperial College London, Department of Computing, 2017.
de Moivre's Identity. Wolfram MathWorld.
Jörn Dunkel, Jeremy Orloff. *18.04 Complex Analysis with Applications*. MIT, Spring 2019.
$(\cos\theta+i\sin\theta)^n = \cos n\theta + i\sin n\theta$ は、掛けるたびに偏角が $\theta$ 増えることのくり返しです。$n=1$ から始めて $k+1$ 乗を $k$ 乗と 1 個の積に分ければ、帰納の一段が積の規則 1 回で片づきます。負の指数は $n=-m$ と置いて逆数をとり、分母が $\cos^2+\sin^2=1$ になることから同じ形へ戻る。$(1+i)^{12}$ が $-64$、$(1+i)^{-6}$ が $\frac{i}{8}$ と 2 行で出ます。分数の指数では左辺が枝分かれし、等式が「値の 1 つ」という言い方に変わります。