h→0limhf(a+2h)−f(a−3h) の値は 5f′(a) です。
分子に f(a) がないので、そのままでは定義の形になりません。足して引くことで形をそろえます[1]。
2 と 3 を足した 5 が前に出る。この理由が分かれば、どんな組み合わせでも処理できます。
f(a) をはさむ
分子に −f(a)+f(a) を入れます。値は変わりません。
f(a+2h)−f(a)+f(a)−f(a−3h)
前半と後半に分けて、それぞれ h で割ります。
hf(a+2h)−f(a)hf(a)−f(a−3h)=2⋅2hf(a+2h)−f(a)=3⋅−3hf(a−3h)−f(a)
どちらも分母と分子の増分がそろい、定義の形になりました。
h→0 のとき 2h→0、−3h→0 なので、両方とも f′(a) に近づきます。
2f′(a)+3f′(a)=5f′(a)
なぜ足し算になるのか
a から右へ 2h、左へ 3h 離れた 2 点の高さの差を見ています。
a を境に、右側の変化と左側の変化を合わせているので、幅の合計は 5h。だから 5 倍になります。
引き算の形なのに足されるのは、−3h の向きが逆だからです。
例:いくつかの型
h→0limhf(a+2h)−f(a) は、2 を掛けて割る形にすれば 2f′(a) です。
h→0limhf(a+3h)−f(a+h) では、f(a) をはさむと 3f′(a)−f′(a)=2f′(a) になります。
同じ側の 2 点なので引き算になりました。幅の差が 2h だからです。
| 極限の形 | 答え | | hf(a+2h)−f(a) | 2f′(a) |
| hf(a+2h)−f(a−3h) | 5f′(a) |
| hf(a+3h)−f(a+h) | 2f′(a) |
| 2hf(a+h)−f(a−h) | f′(a) |
4 つめは左右対称の形です。21(f′(a)+f′(a))=f′(a) で、ちょうど f′(a) になります。
数値で確かめる
f(x)=x2、a=1 で試します。f′(1)=2 です。
hf(1+2h)−f(1−3h)=h(1+4h+4h2)−(1−6h+9h2)=h10h−5h2=10−5h
h→0 で 10。5f′(1)=5×2=10 で合っています。
左の点が速く、右の点がゆっくり寄ります。それでも割った値は 1 つの数に落ち着きます。
分母が x−a でない形
x→1limx2−1f(x)−f(1) を考えます。分母が 2 次です。
x2−1=(x−1)(x+1) と因数分解して、x−1 の部分だけを定義の形に使います。
x−1f(x)−f(1)⋅x+11
x→1 で前半が f′(1)、後半が 21。答えは 2f′(1) です。
分母の余分な因数は、極限に入れる前に分けておきます。
分母を x−a の形に切り出せれば、残りはふつうに代入してよい。
残った部分は x→a で困らない。0 にならない因数だから、そのまま値を入れられる。
分子に x が混じる形
x→alimx−ax2f(a)−a2f(x) を求めます。分子に x と f(x) の両方が入っています。
分子に −a2f(a)+a2f(a) をはさみます。
x2f(a)−a2f(a)+a2f(a)−a2f(x)=f(a)(x2−a2)−a2{f(x)−f(a)}
x−a で割って極限をとります。
f(a)⋅2a−a2f′(a)
答えは 2af(a)−a2f′(a)。f に関する部分と、x2 に関する部分を分けたのがこつです。
分子を 2 つの差に分ける
f の差と、係数の差に分ける。x と f(x) が混ざる式で使う
置きかえてよい場合
h→0limh2f(a+h2)−f(a) を見ます。増分が h2 です。
k=h2 とおくと、h→0 のとき k→0。式は kf(a+k)−f(a) になります。
答えは f′(a) です。増分と分母が同じ形なら、中身が h でも h2 でも変わりません。
ただし h2 は正の側からしか 0 に近づきません。両側の値が一致する関数でだけ、この置きかえが通ります。
h→0limhf(a+4h)−f(a−h) の値はどれですか。
__RESULT__
f(a) をはさんで分けると 4f′(a)+f′(a) になります。右へ 4h、左へ h なので、合わせた幅が 5h です。3f′(a) は 4−1 と引き算した値にあたります。
同じ側にある場合も確かめます。
h→0limhf(a+5h)−f(a+2h) の値はどれですか。
__RESULT__
どちらも a より右にあるので、f(a) をはさむと 5f′(a)−2f′(a)=3f′(a) になります。同じ側なら引き算、反対側なら足し算です。
f(a) を足して引き、増分と分母をそろえる。この 2 手で、どんな係数が付いていても定義の形へ戻せます。
参考
Paul Dawkins. *The Definition of the Derivative*. Paul's Online Notes, Lamar University. 3.1 Defining the Derivative. Calculus Volume 1, OpenStax. Differentialquotient. Serlo, Lernplattform für Mathematik.
$\displaystyle\lim_{h \to 0} \frac{f(a+2h) - f(a-3h)}{h}$ は $5f'(a)$ です。分子に $f(a)$ を足して引き、2 つに分けてから増分と分母をそろえます。$a$ をはさんだ両側の変化を足しているので、幅の合計 $5h$ がそのまま係数になる。同じ側の 2 点なら引き算です。分母が $x^2 - 1$ のように余分な因数をもつ形、分子に $x^2f(a) - a^2f(x)$ と 2 種類が混ざる形、増分が $h^2$ になる置きかえまで並べました。
f(a) をはさんで分けると 4f′(a)+f′(a) になります。右へ 4h、左へ h なので、合わせた幅が 5h です。3f′(a) は 4−1 と引き算した値にあたります。